2021年1月31日日曜日

「寄付の『そもそも』勉強会ーチャリティって何?フィランソロピーって何?」を開催します

この1年半くらい、寄付に関する論文をいろいろ読んできました。

そのなかで学んだ「そもそも論」を寄付者の方やファンドレイジング担当の方にご紹介するために、下記の勉強会を開催したいと思います。

(自分は寄付月間アンバサダーというお役目を仰せつかっておりまして、イベントを開催することが推奨されているのですが、12月が忙しくて到底開催できず、ぎりぎり3月に開催するということになったものです・・・)


*******************

「寄付の『そもそも』勉強会ーチャリティって何?フィランソロピーって何?」


寄付をしたり、寄付を募る活動をするにあたって、知っておくとちょっとすっきりするような、寄付の「そもそも論」をこれまでのさまざまな先行研究に基づいて考えるオンラインセミナーです。

京都大学経営管理大学院の博士後期課程で寄付について研究をしている渡邉文隆が、「チャリティ」と「フィランソロピー」とは何か、この2つは何が違うのか、どんな風に世の中の役に立つのか、寄付者はどういうプロセスで意思決定しているのか、といった話題を説明し、皆さんと意見交換したいと思います。


日時  2021年3月7日(日)20:00-21:30

開催方法 zoomを予定しています。

参加費 無料

発表者 渡邉文隆(京都大学経営管理大学院)

    自己紹介や、私と寄付の関わりはこのnote記事をご覧ください。

お申込み このGoogle formからお願いします。2月末で締め切りとさせていただきます。

皆様のご参加をお待ちしております!


<おしらせ>
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2021年1月23日土曜日

Research Fund 3.0での発表内容と、科学を豊かさにつなげる鍵

2020年12月26日に、「ResearchFund3.0 - 研究費のイマを言語化し、ミライを予想する」というイベントに登壇させていただきました。

私からは、

・ここ数年の自分の仕事と、いまの職場である新しい財団がなぜ必要だったか

・大学や研究機関の寄付募集の最近の変化

・「研究のための寄付」がこれからどうなるだろう、という予測

をお話ししました。

企画くださった@T5uku5hiさん、今回もお世話になりました@hiro1987jpnさん、@RShibatoさん、ありがとうございました!

当日の講演がYoutubeで公開されているので、下記に貼り付けておきます。



パネルディスカッションの様子は下記のnoteにまとめられています。


このイベントは、自分がぼんやりと抱いていた問題意識を明確にしていただいたものでした。

その問題意識とは、「どうやったら、学術研究は『みんなの豊かさ』につながっていくのだろう?」というものでした。

学術研究を豊かさにつなげるには?


そのひとつの答えは、

・学術研究の結果を、みんなが使いやすい形にしていく

ということで、それは私の専攻であるマネジメントサイエンスが志向するもの(経済学や心理学の研究結果を経営や実践の現場で活かすということ)でもあると思います。

マネジメントサイエンスを社会が活用するために必要なコストは、主に時間的リソース(学習コスト)や政治的リソース(組織内の意思決定・コミュニケーションのコスト)で、知見そのものは書籍などの形で市場に流通しており、比較的低コストで手に入ります。

しかし、医学研究の成果などは、制度的な問題、法的な問題、倫理的な問題なども関わるため、もっと大がかりな仕組みを社会の中に整備しなければ、多くの人が使えるようにはならないように思われます。

そんなことを考えていたときに、下記の書籍に行き当たりました。



独立行政法人経済産業研究所(RIETI)所長の矢野誠先生の指摘が非常におもしろく、科学技術を豊かさにつなげるためには、質の高い市場が必要だ、との主張を展開しています。

産業革命など、科学技術が急激に進歩すると市場にゆがみが生じて大恐慌などの危機的な状態が生じる場合が多く、それが新たな法律、精度、倫理、監修、文化などで修正されることで、市場がその質を回復する、とのこと。

私の立場から考えると、これは
「質の高い寄付市場とはどんなものか」
「質の高い再生医療市場とはどんなものか」
という問いにつながる話です。

再生医療市場についてはまだここで書けるようなことはないのですが(私などの話よりもAMEDがアーサー・D・リトル・ジャパンに委託して行ったこの調査はすごいのでぜひご覧いただきたい)、下記では、寄付市場について少しだけ触れたいと思います。

寄付市場における科学技術の急激な進歩


寄付市場でいえば、ビットコインという技術が、急激な進歩を生んでいます。匿名性の高い形で、国境を越えて、安価に、小口の寄付を、透明性高くトランザクションできるようになった、ということが言えると思います。

「良い市場とは何か」を考えたとき、「多くの人が参加できる」という特性や「トランザクションコストが低い」ということは見逃せないものであり、そのためにインターネットやブロックチェーン技術がどんな役割を果たせるのか、には私も大変関心があります。

一方で、技術の進歩に任せていても、市場が健全な形で発展するとは限らない、ということは先の書籍でも指摘されていたことです。

例えば、こうした技術的進歩は、過激派団体に対する寄付を促進してしまうリスクもあります。


寄付においては、誰が市場の番人を務めれば良いのでしょうか。

クラウドファンディングで多くの人や組織が寄付を募集できるようになったとき、「キュレーター」という職種が各クラウドファンディングプラットフォーム企業内にあらわれて、ページや寄付募集の趣旨の質を担保してきている(および反社会的勢力の排除などのリスク対策の役割を果たしている)と思います。

個人的には、「学術研究やその実用化への寄付」という市場が健全な形で拡大することは、非常に大切だと思います。

なぜなら、その市場に投じられたお金は、「学術研究やその実用化によって生まれる別の市場」を育てる力になるからです。

寄付市場とはどんな特性や役割を持つ市場なのか、という話もしていきたいのですが、長くなったので今回はこれくらいにしたいと思います。


※なお、市場を整えていくというのは長期的な取り組みであり、現在のCOVID-19のような緊急的な状況では、科学が社会に貢献できるかどうかを左右する鍵は「メディア」だと感じています。
メディアの方々は、どうか、その社会的責任を自覚いただき、メディアが不安を喚起して差別や分断をあおってきた歴史的な経緯への反省もふまえていただき、科学的に妥当な内容を報道いただきたいと思います。非営利メディアの可能性と課題も、いつか取り組みたいテーマです。

いつも「更新を楽しみにしています」とおっしゃってくださる皆様、はじめてこのブログにたどりついて最後まで見てくださった皆様、ありがとうございます。

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2020年12月30日水曜日

マーケティング・ファンドレイジングにかかわる人に贈るすごい本1:『エフェクチュエーション 市場創造の実効理論』

マーケティングを専門として仕事をしていくうえで必要な「何か」を独学でを身につけようと数年間もがいていた自分にとって、今年の大学院進学は革命的な出来事でした。

これまで全く知らなかった、かつ自分の仕事や関心に直結する概念・書籍・資料に出会う密度が全く違うのです。

そのようなものとの出会いは、簡単に判断できます。

出会ったとたんに、一気に興奮するのです。

今年、マーケティング・ファンドレイジング(非営利組織の寄付募集)の観点から興奮したいくつかの書籍を紹介します。

本日は一冊目。

『エフェクチュエーション 市場創造の実効理論』です。




エフェクチュエーションとは?


エフェクチュエーションは、熟達した起業家の意思決定の特徴から見出された論理です。
多くの熟達した起業家は市場調査から事業をスタートするのではなく、いま選択できる手段を定義すること(自分は誰で、何を知っているか、誰を知っているか)からスタートし、偶発的に起きる事象を活用して、事業をつむいでいける行動を選択します。継続的に新しい機会をつくりだし、それを有利に活用しようとします。

私が2006年から2013年まで働いていたアミタという会社では「ブリコラージュ」という(文化人類学者のクロード・レヴィ=ストロースの)言葉で同様の概念が説明されていたのを思い出して驚いているところです。

この見方は、ビジネスにおける「意思決定理論」の有効性について疑問を呈するものです。

私は、完全競争市場を前提とした理論から導出されている経済学的な意思決定を、人間の限定合理性によって修正するという行動経済学的なアプローチに大変魅力を感じてきました。

しかし、エフェクチュエーションは、現実世界の意思決定から帰納的に構築された理論であり、より実用主義的であると感じます。

エフェクチュエーションの5つの原則


エフェクチュエーションによる戦略は、未来が予測不能で、目的が不明瞭で、環境が人間の行為によって変化する場合に有効である、といいます。
熟達した起業家の行動パターンから抽出されたエフェクチュエーションは、以下のような原則で表現されることが多いようです。

「手中の鳥」の原則

  自分たちがいま何を持っているのか、誰を知っているのか、からスタートする。

「許容可能な損失」の原則

  小さな、許容可能な損失で済むような失敗を繰り返して学習し、やがて飛躍する。

「クレイジーキルト」の原則

  コミットする意思を持つ関与者と交渉し、パートナーシップを作り上げていく。

「レモネード」の原則

  予定になかったこと、想定していたかった事象を活用し、チャンスに変えていく。

「飛行機の中のパイロット」の原則

  コントロールできる範囲においては、予測が立たなくても進んでいける。

優れたファンドレイザーの行動を説明できる?

エフェクチュエーションの論理は、これまで、ファンドレイジング(および優れたファンドレイザーの行動パターン)と、教科書的なマーケティング論の間に横たわる溝として感じてきたものに、非常に大きなヒントをくれました。

グロースハックという概念とも似ていると思うのですが、優れたファンドレイザーはマーケティングの教科書に示されているような思考とはずいぶん違った形で寄付を募っていくように思われます。

自分や組織の思いを人との対話の中で確立していき、人間関係を「わらしべ長者」のようにたどりながら、いつの間にか大きなチャンスを手にしている。そんなあり方をうまく説明できるように思われます。

また、日本ファンドレイジング協会のテキストと、マーケティングの教科書が本質的に違う方法論を示しているように思われることについても、説明がつくのではないか・・という直感を抱きました。これは、詳細にみていきたいテーマです。

「市場」の新しい見方を提供する


この書籍は、「一人ひとりがより良く生きるための道具としての市場」という見方を呈示するものであり、この考え方に(研究者や実践者というよりも人間として)賛同するところです。

著者は、あらゆる市場を「究極的には人々の希望の中に存在する市場」であるとし、また「製品やサービスを営利セクターと非営利・ソーシャルセクターに分けるような考え方は、不必要であり意味がない」という主張をしています。

アメリカの経済学者であるマンサー・オルソンの説を引きながら、「市場は、政府によってつむぎ出された人工物である」という考え方を示し、その市場を拡張していくような政府の重要性と、そのような政府の中で働く人々の起業家的な価値を指摘し、その人々にとってエフェクチュエーションが有益であるということを説いています。

この部分は、寄付市場をどう健全に育てていけば良いのか、という自分自身の問題意識や、どうすれば再生医療市場を「患者さんに最も早く、かつ広く新しい治療を届けるものにできるのか」というiPS財団で抱いている問いにとって、大きなヒントになります。


自分がいま執筆している論文にとって直接に関連する書籍ではないのですが、大変なインパクトを与えてくれる本であるのは間違いないと思いました。


ところで、大学院で受ける恩恵は誰のもの?


大学院生はブログなどを書くよりも論文を書くべきで、このような形で学んだことを共有することは、すぐれた研究者のすることではない、という見方もあるかもしれません。

しかし、4月からの9か月間、大学院生として学んできて、自分が受けるこうした恩恵を自分のためだけに保持するのは罪かもしれない・・・と思うようになりました。

大学が税金をはじめとする公的な資源によって運営されている以上、そこで得られた恩恵は社会全体のもの、と言えるように思います。

まして、自分は大学への支援を呼びかけることを職業とする者です。

少しでも、自分が大学という場から得たものを発信していかなければと思う次第です。

2020年11月1日日曜日

研究・イノベーション学会での発表の内容と参考資料

11月1日の夜に行った研究・イノベーション学会での「大学ファンドレイジングを考える」というセッションで講演をさせていただきましたので、スライド資料をアップします。企画くださった原田隆先生、本当にありがとうございました。

(11月30日追記)原田先生の発表資料が公開されていますので、下記URLをご紹介しておきます。産学連携コーディネーター、URA、大学ファンドレイザーなどの研究支援専門職員の連携を考える上で貴重な資料だと思います。

https://app.box.com/s/xajgujndkzfxlk0lfgjpu72avgon6b82



私の資料は下記のとおりです。

今回は、「教育・研究への寄付募集」についてだったのですが、

・小さなチームでファンドレイジングをするには?

・規則等で「できない手法」があるときにはどうする?

・大学ファンドレイジングに効果的だった取り組みとは

・大学本部と部局が、寄付募集で競合するのはどう考えたらよいか

・「途上国の子どもの命を救う寄付」と大学への寄付はどう違うのか

・大学への支援は「国がすべきこと」なのでは?政府の資金があれば寄付は不要では?という意見にどう対応するか

・大学は、OBOGでない人から寄付を募るにはどうしたら良いのか?

といった話題を取り上げています。

これらに絶対的な回答を出しているというわけでは全くないのですが、下記に挙げたような既存研究を交えて、これまで考えてきたことを共有したセッションでした。

最後には、「大学は、社会からの支援とどう向き合っていけばよいのか」ということを考えました。

これは、これから多くの方々と考えていきたいテーマです。


<英語論文>

Aaker, J. L., & Akutsu, S. (2009). Why do people give? The role of identity in giving. 
        Journal of Consumer Psychology, 19(3), 267–270. 
   https://doi.org/https://doi.org/10.1016/j.jcps.2009.05.010

Andreoni, J. (1989). Giving with Impure Altruism: Applications to Charity and Ricardian Equivalence. Journal of Political Economy, 97(6), 1447–1458. http://www.jstor.org/stable/1833247

Andreoni, J. (1990). Impure Altruism and Donations to Public Goods: A Theory of Warm-Glow Giving. The Economic Journal, 100(401), 464–477. https://doi.org/10.2307/2234133

Anisman-Razin, M., & Levontin, L. (2019). Prosocial Behavior Reframed: How Consumer Mindsets Shape Dependency-Oriented versus Autonomy-Oriented Helping. Journal of the Association for Consumer Research, 5(1), 95–105. https://doi.org/10.1086/706505

Arnett, D. B., German, S. D., & Hunt, S. D. (2003). The Identity Salience Model of Relationship Marketing Success: The Case of Nonprofit Marketing. Journal of Marketing, 67(2), 89–105. http://10.0.5.229/jmkg.67.2.89.18614

Bennett, R. (2003). Factors underlying the inclination to donate to particular types of charity. International Journal of Nonprofit and Voluntary Sector Marketing, 8(1), 12–29. https://doi.org/10.1002/nvsm.198

Chapman, C. M., Masser, B. M., & Louis, W. R. (2020). Identity motives in charitable giving: Explanations for charity preferences from a global donor survey. Psychology & Marketing, 1(15). https://doi.org/10.1002/mar.21362

Ein-Gar, D., & Levontin, L. (2013). Giving from a distance: Putting the charitable organization at the center of the donation appeal. Journal of Consumer Psychology, 23(2), 197–211. https://doi.org/10.1016/j.jcps.2012.09.002

Fiennes, C. (2017). We need a science of philanthropy. Nature, 546(7657), 187.

Hager, M. A., & Hedberg, E. C. (2016). Institutional Trust, Sector Confidence, and Charitable Giving. Journal of Nonprofit & Public Sector Marketing, 28(2), 164–184. https://doi.org/10.1080/10495142.2015.1011508

Khodakarami, F., Petersen, J. A., & Venkatesan, R. (2015). Developing Donor Relationships: The Role of the Breadth of Giving. Journal of Marketing, 79(4), 77–93. https://doi.org/10.1509/jm.14.0351

Michon, R., & Tandon, A. (2012). Emerging philanthropy markets. International Journal of Nonprofit and Voluntary Sector Marketing, 17(September), 352–362. https://doi.org/10.1002/nvsm

Petrova, M., Perez-Truglia, R., Simonov, A., & Yildirim, P. (2020). Are Political and Charitable Giving Substitutes? Evidence from the United States. National Bureau of Economic Research.

Reyniers, D., & Bhalla, R. (2013). Reluctant altruism and peer pressure in charitable giving. Judgment and Decision Making, 8(1), 7–15.

Taniguchi, H., & Marshall, G. (2014). The Effects of Social Trust and Institutional Trust on Formal Volunteering and Charitable Giving in Japan. Voluntas: International Journal of Voluntary & Nonprofit Organizations, 25(1), 150–175. http://10.0.3.239/s11266-012-9328-3

Yörük, B. K. (2013). The impact of charitable subsidies on religious giving and attendance: Evidence from panel data. Review of Economics and Statistics, 95(5), 1708–1721. https://doi.org/10.1162/REST_a_00341


<日本語論文>

岩田憲治. (2011). 補助金支給は寄付金を増やすか ―NPO のクラウディング・インと国際比較―.
Japan NPO Research Association Discussion Papers.


<日本語書籍>

吉川徹(2018)『日本の分断 切り離される非大卒若者(レッグス)たち』光文社


<インターネット上の資料>

外務省平成27年度NGO研究会(2015) 『「遺贈寄付市場におけるNGOの優位性に関する調査」報告書』https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/files/000169041.pdf 2020年10月31日アクセス

寄付白書発行研究会・日本ファンドレイジング協会(2017)『寄付白書2017インフォグラフィック』
https://jfra.jp/wp/wp-content/uploads/2017/12/2017kifuhakusho-infographic.pdf 
2020年10月31日アクセス

Goldratt Japan & TOC CLUB Japan(2019)『iPS細胞研究所のボトルネックは何か?』https://www.tocclub.net/20190704_ips.html 2020年10月25日アクセス

内閣府(2019)『特定非営利活動法人における世代交代とサービスの継続性への影響に関する調査』
https://www.npo-homepage.go.jp/uploads/2019research-impact-on-generational-change-outline-explanation.pdf 2020年10月31日アクセス

文部科学省(2015)「大学における専門的職員の活用の実態把握に関する調査研究」https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/itaku/1371456.htm 
2020年9月5日アクセス

文部科学省(2020) 「我が国の大学における寄附金獲得に向けた課題に係る調査研究」https://www.mext.go.jp/content/20200721-mxt_gaigakuc3-000008906_1.pdf 
2020年10月25日アクセス



関係ないのですが最近の鴨川です。

2020年10月17日土曜日

研究・イノベーション学会「大学ファンドレイジングを考える」(参加無料・オンライン開催)

研究・イノベーション学会の

企画セッション「大学ファンドレイジングを考える」

に登壇させていただくことになりました。

11月1日(日)18時から、参加無料でオンライン開催です。

学会の会員でない方も参加できるセッションになっています。

お申込みフォームは下記URLです。

https://ws.formzu.net/fgen/S82282970/


セッションのページは「大学を取り巻く環境は厳しい。」という言葉から始まっていますが、私はこの7年くらい、大学(いまは関連法人)で勤務してきて、寄付者の方々に、大いに励まされてきました。

寄付者の方々のご厚意には、どれだけ感謝してもし足りないくらいです。そして、多くの大学・研究機関でも、同じように寄付者の方々と組織をつなぐ役割を果たすファンドレイザーが活躍していくべきだと考えております。


日本の大学や研究機関が、寄付者の方の励ましやご支援をお借りして今の厳しい状況を変えていくには、どんな打ち手が必要なのだろうか?

その先に、大学・研究機関だからこそできる社会への貢献を実現するには、どうしたら良いのか?

支援者と大学の接点という重責をになうファンドレイザーは、何を頼りにして日々の仕事に取り組んでいけばいいのか?

これまでの寄付研究を実務に応用していくうえで、何が重要なポイントなのか?


そんなことを考えつつ、準備を進めております。

よければぜひご参加ください。

これを機に、日本の大学や研究機関におけるファンドレイジングの研究やその社会実装が進展することを祈念しております。

寄付研究に関心をもって下さった方は、ぜひ下記のような書籍も、一緒に読んでいきましょう!


「寄付を科学的に考えるための書籍リスト」

https://watanabefumitaka.blogspot.com/p/blog-page_12.html

最近行った大徳寺です。一滴が大海につながることを表現しているそうです。できることなら、自分も大海につながるような発表をしたいものです。

2020年10月11日日曜日

寄付に関する社会心理学実験の最高におもしろい!論文を、3つご紹介

 Journal of Experimental Social Psychologyにどんな寄付関連の論文が出ているかな・・・と調べていたら、あまりにもおもしろかったので、それぞれの論文の概要から一言だけでもご紹介したいと思います。

どれもこれも、タイトルからしておもしろそうな論文ばかりですよね・・・!


実務者の方や寄付者の方には念のための注意なのですが、こうした研究は決して、普遍的にそれが当てはまるということを示しているわけではなく、「ある条件のもとで実験を設計してみたときに、被験者となった人々がそのような傾向を示した」ということを示しているものです。この記事も、絶対にこうだ、と断言するための記事では全くありません。「こんなおもしろい研究があるよ」という紹介ですので、ご理解ください。



1)

Black, J. F., & Davidai, S. (2020). Do rich people “deserve” to be rich? Charitable giving, internal attributions of wealth, and judgments of economic deservingness. Journal of Experimental Social Psychology, 90, 104011. https://doi.org/https://doi.org/10.1016/j.jesp.2020.104011

「お金のある人が寄付をすればするほど、人々は『あの人はお金を持つに値する人だ』と感じる傾向がある」という研究。

人にどう思われるか、も大切でしょうけれども、資産をもっている人自身が「自分は資産を持つに値する人だ」と感じることができるとしたら、それは心の平安につながりそうな気がしますね。


2)

Greitemeyer, T., & Sagioglou, C. (2018). When positive ends tarnish the means: The morality of nonprofit more than of for-profit organizations is tainted by the use of compliance techniques. Journal of Experimental Social Psychology, 76, 67–75. https://doi.org/https://doi.org/10.1016/j.jesp.2017.12.007


「企業よりも非営利組織の方が、巧みな営業手法を駆使することについて責められがち」という研究です。

実は私も、某国際協力団体のface-to-faceの寄付営業を東京駅の地下でされたときに、そのやり方が巧みかつ圧迫的だったので、一気にその団体を嫌いになった、という経験があります・・・。これが企業からの同様の手法でのアプローチだったなら、そこまで嫌いにならなかったかもしれないなと思います。


3)

Lin, S. C., Schaumberg, R. L., & Reich, T. (2016). Sidestepping the rock and the hard place: The private avoidance of prosocial requests. Journal of Experimental Social Psychology, 64, 35–40. https://doi.org/https://doi.org/10.1016/j.jesp.2016.01.011

「人々は、自分の匿名性が確保されている状態であっても、(寄付依頼等の)向社会的な依頼を受けるのを避ける」という研究です。

ファンドレイジング教育の世界では「寄付を依頼することが大事。社会を変える活動に人々を巻き込んでいこう」というような形で寄付依頼への正当化がなされるケースも見られますが、寄付依頼を受けるというのは(特定の相手へのパーソナルな依頼ではない場合でも)受ける側に心理的な負担をかけることなんだな、と思います。


まだまだたくさんあるのですが、本業の仕事、すすめなければいけない研究の傍らなのでこれくらいで今日は終わりたいと思います。


冒頭で、こうした研究が絶対的にいつでも当てはまるんだ!ということではない旨を記載しました。


むしろ、私のような実務者・研究者を兼務している者の役目としては、「それぞれの研究成果がどんな条件下ならば実務で再現する可能性が高いのか」を考え、発信したり実践したりすることだと理解しています。

そのような役割を果たすまでには全然至っていませんし、世の中は暗い話題も多い中ですが、実務と研究の架け橋になるべく、コツコツがんばろうと思います。



最後に1つ宣伝です。私の勤務先のiPS財団で、寄付募集を担当する職員(正職員)を募集しています。

ご興味を持ってくださった方は、ぜひ下記ページの「社会連携室」の求人をご覧ください!


https://www.cira-foundation.or.jp/j/recruitment-ja/index.html

2020年9月25日金曜日

寄付を深く考えなければならないと思った2本の記事と、ひとつの希望について

ガーディアンに、超富裕層のフィランソロピー活動に対する批判的な書籍の紹介記事があったのでご紹介します。

(本当に長いです)

https://www.theguardian.com/society/2020/sep/08/how-philanthropy-benefits-the-super-rich

私が読んでみて印象に残った点としては、

・Philanthropist(慈善家)が増えている

・こうした人々は、必ずしも困窮している人々のための活動に寄付するわけではない

・超巨額の寄付が、超富裕層の思い描く良い(=必ずしも他の多くの人にとっても同様に良いとは限らない)社会のための活動に流れ込む

・超巨額の寄付による社会への介入は、時として民主主義を脅かす存在になる

・ある種の非営利活動については、寄付控除をなくすとか、富裕層により高い税金を課すなどの対応が必要ではないか

といったものでした。
(短時間でざっと読んだ限りの情報ですので、ざっくりしていることをご容赦ください)


そして、この同じ本をきっかけにして、英国ケント大学のBeth Breeze先生が(非営利セクターを擁護する形で)論じている記事がありましたので、同様に紹介します。

https://www.beaconcollaborative.org.uk/news/talk-differently-about-philanthropy/

私が読んでみて印象に残ったのは、

・困窮している人への支援以外にも、望ましい社会にとって必要な寄付はある(村のホール運営、ボーイ/ガールスカウト、アマチュアスポーツ団体、等)

・寄付者は多様であり、巨額の富を使って自分にとって利益になる社会をつくろうという人々ばかりではない。むしろ、そのような動機は寄付のなかでは主要な動機ではない

・寄付者をバッシングする傾向は、寄付者からの恩恵を受ける人々を間接的に傷つけることになる

といった点でした。


Philanthropyは、「それぞれが望む社会に向けての寄付」だといわれています。

charityは、「困窮している人のための寄付」だいわれています。


日本にいると「ほとんど同じ意味じゃないか」と思えるかもしれませんが、もしも超富裕層のphilanthropistが、自分の望む社会(それは必ずしも多くの人にとって同様に望ましいとは限らないわけですが)に向けて巨額の資金を寄付として使い始めたら、それは民主主義を脅かす存在になる、という議論になっているわけです。


同様に、小口の寄付を莫大に束ねて大きな事業を行う非営利組織は、寄付者が納得しさえしていて法律さえ守っていれば、どんな事業でも行って良いでしょうか?


このような問いも、必然的に生まれてきます。


日本ではまだ、このような問いは切実なものになっていないかもしれませんが、主に日本で活動するファンドレイザーとして、自分は、こういう問いを今から考えておきたいと思います。


人々の善意が、社会の断絶ではなく、社会の能力―様々な状況に置かれた人を取り残さない、包摂する能力―を高めることにつながるように、ファンドレザーとして何ができるのかを考える必要があると感じています。


その意味で、寄付者に対してアドバイスをする組織が立ち上がったというニュースは、とてもうれしいものでした。

https://kifutant.jp/

組織に所属するファンドレザーは、その組織のミッションの下に働く存在であり、寄付者に対して中立的なアドバイスはしにくい構造があるからです。

寄付が社会をゆがめるかもしれない、という懸念が呈されているなかで、ひとつの希望だと思いました。


私は、ファンドレイジングの実務者として、また研究者として、「寄付者にとって何が良いことなのか、幸せなことなのか」を考えているのですが、それはつまるところ、

寄付者が社会に本当に貢献するとはどういうことなのか?

これからの社会は、どうあるべきなのか?

を考えていくということにほかならないのだと思います。


***

いろいろで時間がないのですが、これは書かねば!と思いましてブログ記事にしてみました。

厳密な議論が全然できていない気がするのですが、何かのコミュニケーションのきっかけになれば、と思ってインターネットの海に流そうと思います。


<おしらせ>
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関係ないのですが実家のネコです。

ファンドレイジング・アクションリサーチ研究会のオリエンテーションについて

 非営利組織における、ファンドレイジング(寄付募集)の研究をしております渡邉文隆と申します。 このたび、日本パブリックリレーションズ学会の研究会のひとつとして、ファンドレイジング・アクションリサーチ研究会というものを開催します。 これは、ファンドレイジング活動の改善と、論文執筆に...