Friday, 23 July 2021

最近仕入れた寄付/非営利組織関連の書籍について

実務の世界で忙しくしているうちにあっという間に1か月が経ってしまいまして、「月に1回はブログを書く」という決意が7月は果たせなくなるギリギリの状況になってしまいました。

今月は、最近仕入れた書籍について書いていこうと思います。


まず、たいへん興奮して読んだのがこちら。フィランソロピー、イノベーション、起業家精神についてその関連を論じた2020年の本です。ウォーレン・バフェットさんがフィランソロピーについて「社会にとってのリスクキャピタルだ」と言っていたというのは初めて知りました。


イノベーション研究やアントレプレナーシップ研究の領域の人で、寄付研究にも関心を持っている人というのがどれくらいいるのか分からないのですが、こういう本をきっかけにして交流したいものだなと思いました。「フィランソロピーと科学」や「フィランソロピーと大学」という古くて新しいテーマについても論じられていて、
1) 経済的リターンが無視できるレベルに小さい
2) 長期の視野に立っている
3)リスクに対する寛容性がある
4)製品開発の経験のある科学者によって意思決定がされる
ような資本、つまりPhilanthropic capitalが必要だ!と説いたある寄付者の人の話などは胸が熱くなります(p.47)。


次はこちら。非営利マーケティング研究者や「フィランソロピー心理学者」と呼ばれる著者が実務者も交えて包括的に書いたファンドレイジングのテキストです。いつか買わなければ・・・と思っていたのですが、Kindleで購入。持ち運べるのが便利です。


デジタルファンドレイジングといった最新のテーマまでカバーしていて、豊富な学術研究論文を引用しているのが素晴らしいところ。Major gift fundraisingなど、日本では資料がほとんどない分野についての話は貴重です。


次はこちら。1988年の本なので参考程度に大学図書館で借りたのですが、この頃から「寄付者はファンドレイジングコストを嫌うので・・・」といった議論がされていて、30年以上もこのテーマが続いているのか、と驚いたりしました。



次にご紹介するのは下記の本。2006年の出版で、図書館で見つけたら図鑑くらいあってどう見ても両手でないと持てないのに「ハンドブック」という名前はつけないでほしいぞ…と思いました。「非営利組織と市場」というセクションがマーケティングの人間としては本当におもしろくて、寄付市場を考える上でとても参考になります。いくつかの例外的な場合はあるものの、ファンドレイザーが利益を最大化しない、という話がここでも出てきます。寄付のセクションについては、米国版寄付白書的な内容になっています。


ちなみに上記の本の冒頭には、私がよく非営利組織の重要性について説明するときに話している「人間は病院という非営利組織で生まれて、学校という非営利組織で育って・・・」という話とかなり似た話が出てきて、びっくりしました。やはり、米国でも非営利組織の重要性について説明するときには、いかに非営利組織が人の人生に密接にかかわっているか、を説明しているんだなと納得したところです。


上記の本は米国の話が中心でしたが、各国の話が並列的に語られているのがこちら。1990年の本です。日本のjichikai(自治会)の話が出てきて、今年町内会長を拝命している身としてはびっくりしました。こういう本を読むと、研究が量的に多い米国の論文だけを読んで寄付の世界をわかった気になってはいけないな…と感じます。



最後に紹介するのが下記の本。2005年出版で、UCLAのSchool of Public Affairsの教授の方が執筆したもの。教科書風なのでかなり読みやすい。寄付研究の話が少なかったので参考程度。


というわけで、今日はこんなところにしたいと思います。

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ファンドレイザーの方のためのおすすめ書籍です

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寄付を科学的に考えるための書籍リストです

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社会人で博士を目指す方へのおすすめ書籍です

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『日本の寄付を科学する 利他のアカデミア入門』の執筆に参加しました

坂本治也先生編著『日本の寄付を科学する 利他のアカデミア入門』のうち、2つの章を執筆しました。 2023年12月8日が出版予定日です。11月27日現在、下記のとおりAmazonから現在予約できる状態になっています。 私は、 第10章 分野によって寄付行動に違いがあるのはなぜか? ...