Friday, 30 April 2021

寄付型クラウドファンディングと、ソーシャルメディア活用に関するレビュー論文のご紹介

今年のGWは出かけることもできず退屈しているファンドレイザーの方も多いと思うので、できるだけ1日1本、寄付に関する論文をTwitterアカウント@fwatanabeでツイートしていこうと思います。

さまざまな研究がまとめられたレビュー論文を中心としてご紹介します。

そして、紹介したもの、これから紹介するものは、こちらのブログ記事にまとめていこうと思います。

寄付型クラウドファンディングに関するレビュー論文

昨日投稿した1本目はこちら。純粋な寄付型クラウドファンディングの研究92件のシステマティックレビューです。こんなに研究が出てるんですね。

クラウドファンディングの成功に貢献する要因がすごくたくさん説明されています。

Salido-Andres, N., Rey-Garcia, M., Alvarez-Gonzalez, L.I. et al. Mapping the Field of Donation-Based Crowdfunding for Charitable Causes: Systematic Review and Conceptual Framework. Voluntas 32, 288–302 (2021). https://doi.org/10.1007/s11266-020-00213-w

たとえば、

-技術的な能力やリテラシー

-アクションをしてもらうためのウェブ最適化の能力

-過去のクラウドファンディング経験

-寄付依頼活動へや社会課題を効果的にフレーミングするといった活動への投資

-コミュニティをつくり、寄付者をエンパワーすること

-寄付の使い道の透明性を確保し、誠実に行動すること

-画像を用いて社会課題を説明し、共感を生み出すこと

-計画したことをタイミングを守って実施する能力

-他の人からの寄付の表示、著名人の推薦を入れること

-ウェブ上の雰囲気に注意を払うこと

などなど。


NPOのファンドレイジングへのソーシャルメディア活用

本日投稿したのはこちら。ソーシャルメディア活用に関するレビューです。

Di Lauro, S., Tursunbayeva, A., & Antonelli, G. (2019). How nonprofit organizations use social media for fundraising: A systematic literature review. International Journal of Business and Management, 14(1), 7–11.


NPOがソーシャルメディアをどうファンドレイジングに使っているか、という問いに基づく論文なのですが、UK Fundraising(2016)によるとオンライン寄付の前に57%の寄付者が動画を見ているとか、グローバルNGOの92%がfacebookページを持っているとか、あるツイートが中国赤十字の寄付を86.6%減らしたとか・・・原著にあたってもおもしろそうな情報が多数含まれていました。

ソーシャルメディアを活用することの中心的なメリットの1つに「透明性と説明責任」が挙げられており、これは本質的な指摘だと思っています。


ソーシャルメディアと非営利組織はまだまだこれから

私がソーシャルメディアと非営利組織というテーマがおもしろい!と思ったのは、市川裕康さんに、下記の書籍について教えてもらったときだったと思います。(市川さん、当時は本当にありがとうございました)


Kanter, B., Fine, A., & Zuckerberg, R. (2010). The Networked Nonprofit: Connecting with Social Media to Drive Change. Wiley. https://books.google.co.jp/books?id=YFhF1LZ9VbwC


なんと11年前、まだ20代の頃の自分が作成した、当時の勉強会資料がまだslideshareに残っていました!

本の内容が、おおかたご理解いただけると思います。

かなり時代の先端を行っていた本だったと実感します。

https://www.slideshare.net/watanabefumitaka/the-networked-nonprofitbook-club-event-in-tokyo#

(自分はこのころ、デジタルハリウッド大学大学院の修士課程に在籍させてもらっていまして、ソーシャルメディアの活用をNPOで実践するためのプロボノ活動などもしていました。その参与観察が修士論文の一部になったのでした)


それからもう11年が経っていますが、上記のレビュー論文を読んで、まだまだこの分野には理論的な研究の余地がたくさんあると実感しました。


じゃあどんな理論からの研究の余地があるのか?ということについては、もう少し自分の頭が整理されてから書いていきたいと思います。

こういう時、「研究っておもしろいな・・・」と思います。


いつもブログ記事が文字ばかりになるので、関係なくても写真を1枚載せております。
今回は以前撮った、平安神宮の鳥居です。

また気軽に出かけられる時期が1日も早く訪れることを祈りつつ。


Wednesday, 21 April 2021

日本NPO学会で、ファンドレイジングに関する発表の機会をいただけることになりました

2021年6月19日、20日に開催される日本NPO学会第23回研究大会で、博士後期課程での寄付・ファンドレイジング研究について発表をさせていただけることになりました。

オンライン開催なので、全国どこからでも参加できます。


参加費も手ごろなので、NPO関係の方のみならず、大学や病院などでファンドレイジングを担当されている方も、よければご参加を検討くださるとありがたいです。

https://janpora23.peatix.com/

私は20日の13:30から、ファンドレイジングについてのセッションでお話をします。

https://janpora.org/meeting/pdf/prg23.pdf

演題は、

「CharityとPhilanthropyのそれぞれに特異的なファンドレイジング手法のアンブレラ・レビュー」

です。CharityとPhilanthropyにはどのような違いがあり、その違いを考慮したときに、どのようなファンドレイジング手法が妥当と考えられるのか、主に海外の寄付研究のアンブレラ・レビュー(レビュー論文のレビュー)を通じて検討した結果を説明します。

たとえば、災害時に募集される寄付は基本的にCharitable givingに分類できるものであり、緊急性の高い、困窮した人を助けるための寄付と言えます。

逆に、大学での研究のために募集される寄付は基本的にPhilanthropic givingに分類できるものであり、長期的な、より良い社会を目指すための寄付だと言えます。

この2つはいろいろな面で対照的でして、それぞれに適したファンドレイジング手法があるのではないか?ということをお話しする予定です。


アンブレラ・レビューとは

私は寄付・ファンドレイジングの研究をスタートする時に、とてもおもしろいレビュー論文を夢中になって読んだのですが、レビュー論文をまとめてくれるのがアンブレラ・レビューです。

アンブレラ・レビューの手法については、下記が詳しいです。医学分野で発達した手法ですが、膨大なシステマティック・レビューが発表されている近年、他の分野でも利用されるようになってきました。

https://journals.lww.com/ijebh/Fulltext/2015/09000/Summarizing_systematic_reviews__methodological.4.aspx

アンブレラ・レビューは、あるトピックについて、広い視点から概観することができるため、実務者にとっても有益であることが多いと考えます。

例えば下記では、レビュー論文のレビューを通じて、行動変容を目的としたソーシャル・マーケティングにおいて「セグメンテーション」があまり使われていない(さらなる活用の余地がある)、ということを指摘しています。

https://link.springer.com/chapter/10.1007/978-981-10-1835-0_2



実務者にも学会は役立つ

イベントのオンライン開催が普通になったことで、学会という場が一気に実務者にとっても身近な場になったと思います。

自分の仕事について深く考えるために、関連する学会に参加するというのは素晴らしい選択肢だと思います。

実務者から社会人大学院生を目指す人が「自分にとってどの分野がおもしろいか」を考える上でも、学会参加はオススメです。



<おしらせ>

このブログでは下記のとおり、Facebookページ・Twitterで更新情報を発信しています。

ブログはがんばっても月に1回くらいの発信ですが、Twitterはもう少し寄付研究などについてつぶやいているので、よろしければぜひ何かの方法でつながってください。

本ブログの読者の方々と一緒に学んでいけることを楽しみにしております・・・!

https://twitter.com/fwatanabe

https://www.facebook.com/givingscience/


ファンドレイザーの方のためのおすすめ書籍です

https://watanabefumitaka.blogspot.com/p/blog-page_16.html?m=1


寄付を科学的に考えるための書籍リストです

https://watanabefumitaka.blogspot.com/p/blog-page_12.html?m=1


社会人で博士を目指す方へのおすすめ書籍です

https://watanabefumitaka.blogspot.com/p/blog-page_18.html?m=1


関係ないですが、近所の公園の桜です。あっという間に春が過ぎていきますね。

『日本の寄付を科学する 利他のアカデミア入門』の執筆に参加しました

坂本治也先生編著『日本の寄付を科学する 利他のアカデミア入門』のうち、2つの章を執筆しました。 2023年12月8日が出版予定日です。11月27日現在、下記のとおりAmazonから現在予約できる状態になっています。 私は、 第10章 分野によって寄付行動に違いがあるのはなぜか? ...