寄付と税制について専門的に勉強したい方へに最高に参考になるこちらの最新の洋書、Kindle版がなぜかいま(2022年4月5日現在)0円です。
キャンペーンなのでしょうか・・?
ともあれ、寄付・非営利組織・税制といったテーマに関心のある方には本当におすすめなのでブログでも掲載しました。
The Routledge Handbook of Taxation and Philanthropy
3月は実務も研究も大変忙しく、ブログを更新する時間が取れませんでしたので、4月でなんとか2本アップして、月に1本ペースを取り返したいところです。
ウクライナ関連のニュースがここ1か月くらいメディアを席巻しており、驚きと悲しみを抱きながら日々を送っている方も多いと思います。
私も現地の様子を注視しつつ、しかし自分の仕事をコツコツすることを目指そうと思っています。
非営利組織の方々はウクライナに関して緊急的な寄付募集キャンペーンを開始していたりして、本当に頭が下がります。
一方で、こんなつぶやきもTwitter上で見かけたりしました。
非営利組織が寄付をめぐって繰り広げる競争は、とてもおもしろいテーマだと思っていまして、上記の書籍のChapter18がそのテーマを扱っています。
例えば、
必ずしもパフォーマンスの高い寄付先団体に寄付が流れていくとは限らない
とか、
民間企業の市場と違って価格競争が起きない
とか、
税制による後押しによってより効率的な選択を促せるのかどうか
といった、非常に重要な議論が展開されています。
寄付募集をめぐる「競争」を考える
競争戦略で有名なポーター先生は、最近の書籍で、フィランソロピーと競争について取り上げています。
寄付募集に携わっている友人知人を思い浮かべると、あまり競争を好まない人が多いのかも・・・と思ったりするのですが、この本の中では競争というものは非常にポジティブにとらえられており、競争があることで質の良い活動が世の中に提供されていく、ということが指摘されています。
(個人的にも、小さい頃から自分は「競争」と呼ばれるものであまり勝った記憶がなく、競争と言えば負けるもの、できれば避けたいもの、というイメージがあります…)
逆に言うと、寄付をめぐっての健全な競争が起きる環境をどうつくるか、が重要ということになるわけですが、これが非常に難しく、またホットなテーマだと思います。
「ウクライナへの寄付との競争が生まれることによって、他団体への寄付は減るのでしょうか?」
という点が気になるわけですが、先行研究では矛盾した結果が報告されており、実はこれはまだ答えがよくわかっていない問いのようです。
このテーマは、「Altruism Budget(利他的予算)は固定的なのか、可変的なのか?」という問いとして議論されています。
[1] L. K. Gee and J. Meer, “The Altruism Budget: Measuring and Encouraging Charitable Giving,” Natl. Bur. Econ. Res. Work. Pap. Ser., vol. No. 25938, 2019, doi: 10.3386/w25938. https://www.nber.org/papers/w25938
私はどちらかというとマーケティング・経営学の研究に携わっている上に、上記のとおり競争をうまく避けることの方に(性格的に)関心があるので、競争が質の向上を生み出すということを意識しつつではあるものの、
「緊急的な寄付と、長期的な寄付の両方に対して人々が関心を持ってくれるようにするにはどうしたらいいのだろうか」
「ある団体の寄付募集が、他の団体と競合する度合いを下げるためには、どうすればよいのか」
ということを、この機会に考えています。
いつもと同じように、仕事や研究ができることのありがたみを感じるこのごろです。
そして、戦争を防ぐための平時からの努力として、人文科学や教育がいかに大切かを痛感しています。
それぞれの場所で、コツコツがんばりましょう。