寄付・ファンドレイジングを科学的に考えるための書籍リスト

大学の修士・博士課程で、寄付やファンドレイジングについて研究をスタートしたいという方におすすめの書籍をリストアップしていきます。

たとえば、経営学系の博士課程(私の場合がそうでした)や、非営利組織論・NPO論の修士課程などに進みたい方が、「寄付・ファンドレイジングといっても、どのあたりのテーマに、どんな学問分野から接近したらいいんだろう」と思ったりしたときに役立つのではと思っております。

いずれの書籍も、目次をざっと見て、おもしろそうなchapterを読むことで、主要な先行研究が把握できるというような印象を持っています。

ちなみに、日本語での寄付研究は、下記の2つのサイトにまとめられており、非常に役立つのでご紹介します。

この2つのサイトで関心領域を絞り込んでから、書籍を読むのがいいのではと思っています。

(なお、本ページのリンクはamazonアソシエイトプログラムにて発行されてしているものです。が、今までほぼ本ページで購入が発生したことはないので、こちらで見て図書館で借りておられる方が多いのではと思います)

最終更新:2023/11/27

・Academic Research on Donations

・日本の寄付研究アーカイブ


<日本語書籍リスト>




坂本治也先生の編著による、日本の「寄付研究の扉を開く」書籍。様々な角度から、日本の寄付に迫っています。本ブログの著者である渡邉も2つの章の執筆を担当しています。





日本の寄付研究に欠かせない統計データを発表している日本ファンドレイジング協会の白書。ファンドレイジング担当の方にもお勧めしたい。


<洋書リスト>



NPOセクター全体を概観したいならばこちらの本がおすすめです。2020年に出た第3版です。ファンドレイジング研究ならば23.What Influences Charitable Giving?というチャプターから読むのが良いと思います。上記のKindle版があり、長く楽しめるなと思って購入しました。




寄付・ファンドレイジング研究のうち、国際比較をするテーマであったり、日本が他の国と比べてどうなのだろう、といった問いに関わるものを目指すならばこちらが良いのではと思いました。米国やカナダなどの寄付文化の盛んな国はもちろん、メキシコ、ロシア、スイス、中国、インドネシア、香港、日本、台湾、ベトナムなど驚くほど多くの国について書かれています。そして、それらの国をいくつかのテーマで横串をさすように分析しています。



そもそも寄付研究では、寄付者の行動をモデル化するなどして探求するものは多い一方で、非営利組織側の行動を検討するものは少ない傾向が指摘されています
その面で、この書籍は貴重だと考えています。2020年発行で、第2版です。財源の多様性の話、営利組織と非営利組織が競合する市場の話、非営利組織とマクロ経済要因の話などが掲載されています。ペーパーバックで購入しました。



 The Economics of Philanthropy: Donations and Fundraising

寄付とファンドレイジングを経済学的に分析した書籍。利他的な寄付者のベネフィット、利他性のダークサイドなどが日本の学術書では見当たらなかったため、特に役に立ちました。free ridingにどう対処するか、等の根本的な考察が非常に刺激的です。2018年発行。



Strategic Giving: The Art And Science of Philanthropy

PhilanthropyとCharityの違い、philanthropyの目的、特性、危険性、可能性など、自分の研究にとってのヒント満載だった書籍。寄付文化が成熟していく日本のこれからを考える上でも非常に重要な本だと感じました。また、高額寄付をする人をサポートする仕事の方や、寄付を配分する立場にある方々にとっても、大きなヒントになると思います。2006年発行。




もしもマーケティング論で寄付・ファンドレイジング研究をするならば、この本は本当に役立つと思います。値段の割に薄い本だからamazonで低い評価がついているのかもしれませんが、マーケティング分野の研究者が、最近の寄付・ファンドレイジング研究をざっとレビューしてくれて、どこがリサーチギャップなのかを明確に示してくれている本です。



寄付をマーケティング分野からとらえた研究をし続けている第一人者の方々による、実務者にとっても有益なファンドレイジングに関する書籍。これも、マーケティング論や非営利組織論の角度から研究するなら持っておいて損はないと思う一冊です。私もKindleで購入しており、ことあるごとに参照しています。




The Science of Giving: Experimental Approaches to the Study of Charity
私の博士課程受験を決断させた本のうちのひとつです。判断・意思決定という視点から書かれており、効用関数で寄付について分析した章は目から鱗が落ちました。2011年発行。




Handbook of the Economics of Giving, Altruism and Reciprocity, Volume 1: Foundations
この本の「Philanthropy」の章は、経済学の視点からの寄付研究約25年分をレビューしたたいへんな労作。warm glowについてはもちろん、ボランティアやファンドレイジングも射程に入れています。2006年発表。




Handbook of Public Economics, Vol. 5
 この本の「charitable giving」の章は、50ページにわたってこれまでの寄付研究を包括的にレビューした非常に貴重な文献です。寄付研究をスタートする自分にとって、これまでの学術的な蓄積を大づかみに理解するのに最適でした。2013年発表。





The New Fundraisers: Who organises charitable giving in contemporary society? (kindle版)

ファンドレイザーという職業について深く考えたい方向けです。成果を出しているファンドレイザーとふつうのファンドレイザーを分けて分析しているのが興味深いです。2017年発行。




Giving 2.0: Transform Your Giving and Our World (kindle版)

寄付者の視点から、自分や社会にとってより良い寄付を考える本。日本には寄付者がどう振る舞うべきか、というガイダンスが非常に少ないため、貴重な書籍だと思います。MOOCのコースもあり、無料で受講できます。2011年発行。





Experiments Investigating Fundraising And Charitable Contributors (RESEARCH IN EXPERIMENTAL ECONOMICS)

2006年の段階でここまでの研究の蓄積があったということに驚いてしまう、実験的アプローチによるファンドレイジング・寄付研究の書籍です。

『日本の寄付を科学する 利他のアカデミア入門』の執筆に参加しました

坂本治也先生編著『日本の寄付を科学する 利他のアカデミア入門』のうち、2つの章を執筆しました。 2023年12月8日が出版予定日です。11月27日現在、下記のとおりAmazonから現在予約できる状態になっています。 私は、 第10章 分野によって寄付行動に違いがあるのはなぜか? ...