2022年の年始の休みは、論文執筆の合間に、こちらの書籍を読みました。
昨年、この書籍を出版されている碩学舎のケーススタディ教育方法に関する研修も受けさせていただいたのですが、マーケティング教育において、ケーススタディはやはり有効なのだと実感した次第です。
ポストコロナの時代におけるマーケティングはかなりの変化を求められており、それを考える上で非常に貴重な書籍だと思います。
マーケティングを教える立場の人が主な読者かもしれませんが、実務者が読んでもとても面白いのではと思いました。
ファンドレイジング教育を考える
さて、日本のファンドレイジング(寄付募集)においては、多くの団体で担当者の教育・研修に割くような予算・時間的余裕がないという現状があるはずです。
そのような中、中間支援組織が提供するセミナーや研修は非常に大きな役割を果たしていると思います。
他の団体の事例を聞くセミナーも良いのですが、そこから一歩進んで、「あなたがこの立場だったらどうするか?」というケースメソッドの要素を取り入れると、さらに教育効果が上がるのではないかと思ったところでした。
なぜケースメソッド的な教育が有効そうなのか
なぜかというと、ファンドレイジング活動は(マーケティングと同様に)十分な情報がない中で判断を行っていくことの連続だからです。
ファンドレイジングは投資活動という側面があり、希少なリソースである時間やお金、人員を、どの活動に振り向けるのか?という判断を非営利組織のマネージャーは日々していかなければなりません。
その判断力を磨くためには、
「実際に判断してみる」
「その結果を実感する」
「なぜそうなったか、もっと良い方法はなかったか振り返る」
「学びを活かして次の打ち手をどれにするか判断する」
というサイクルが必要なのだと思います。
しかし、これは言うは易しで、そんなサイクルを意識して回す余裕がある団体はほとんどないのでは、というのも、実務者としての偽らざる実感です。
実務から強制的に離れて行う研修やセミナー等によって時間を確保し、インプットをするというのは、非常によい方法だと思います。
日本で代表的な場としてはFRJ(ファンドレイジング・ジャパン)などで、日本のファンドレイジング教育に大きく貢献していると思います。
実務と事例セミナーの良いとこどりを
私は、寄付募集という活動に、
1)ボランティアとして
2)プロボノとして
3)有償のコンサルタント(あるいは兼業者)として
4)有給スタッフ、マネジメント職のスタッフとして
という4つの立場で関わってきたのですが、それぞれで多くの学びがある反面、
1)ではファンドレイジングの方向性の決定に関与するようなチャンスはほぼない
2)や3)では複数の団体を見ることができる一方、実施した結果を実感する機会が少ない
4)では1つの団体の事例にしか習熟できない
などの短所もあります。そして致命的なのは、上記の実務経験は、積んでいくのに大変な時間がかかり、習熟できる事例の数が少ないことです。
加えて、重要な判断の頻度が(その人の職位によりますが)低いということも言えます。
一方、日本のファンドレイジング教育では事例ベースのセミナーが多く行われている印象があり、これは短時間で多くの団体についての情報を収集できるメリットがあります。
事例ベースのセミナーは多くの団体に触れられるという意味で非常に効率的である反面、受講する側からすると
・自分の団体に適用できるのかどうかがよく分からない
・「判断」の練習にはならない
という短所があると考えています。
そこで、事例ベースのセミナーにおいては、受講者にまず背景情報を提供してから、
「これまでの情報を基にすると、X団体のファンドレイジングの強みと弱みはどこだと思いますか?」
「この状況で、あなたはAとBのいずれの打ち手を実施しますか?」
などと問いかけるのが良いのではないかと思うところです。
つまり、
・判断の経験は積めるが習熟できる事例数が少なく判断の頻度が低い「実務」
と
・多数の事例に触れることができるが判断経験にはならない「事例セミナー」
の良いとこどりを、ケースメソッド的な要素を取り入れたセミナーで実現しようというアイデアです。
ここ2年くらい、セミナー等に登壇する際には、「事例だけでなくその背後にある理論を説明する」ということを心掛けてきたのですが、それに加えて、2022年はケースメソッド的な要素も取り入れてみたいと考えています。
このブログの読者の方の中には、ファンドレイジング教育に携わっている方も多いと思うので、既にこのような方法を取り入れている方がおられたら、facebookページやTwitterで教えていただきたいと思います。
また、まだ取り入れていない方は、ぜひ一緒にやってみませんか?と呼び掛けたいところです。
今年も、月に1回は更新していきたいと思いますので、本ブログをどうぞよろしくお願いいたします。