かつて、私はNPOのコンサルティングに携わっていました。
そのようなとき、
「今の日本の社会情勢だと、この分野の活動には共感を得にくいな・・・」
というような団体に出会ったりして、無力感を抱いていたものでした。
そんな自分にとって、下記の論文は衝撃的なものでした。
「寄付を集めやすい団体、集めにくい団体がある」ということはよく指摘されています。
つい最近、下記のようなツイートも見かけました。
この問題は市民活動研究でも話題になっていて、「子供」や「ペット」などは寄付が集まりやすい分野だが、市民の「共感」を得られず寄付が得られない分野も数多くある。あるいはニーズの深刻さとは関係なく、上手にブランディングされると寄付は集まるが、そうでないと集まらない、とか。
— 考えるイヌ (@sakunary) April 10, 2020
そのような中、上記論文は、
その団体がどんな道徳的価値の実現を目指しているかによって、「寄付を募る際に、どんな感情を引き起こすような訴求を行うべきか」が異なる
ということをフィールド実験と実験室実験の両面から実証したものです。
具体的には、様々な道徳的価値のうち、Care(ケア:弱い立場にある人への支援)を実現しようとする団体にはCompassion(慈善)、Fairness(公平:人々が等しい権利を得られること)を実現しようとする団体にはGratitude(感謝)を引き起こすようなキャンペーンが有効であるということを実証しています。
Abstract(概要)だけでも、多くのファンドレイザーや、ファンドレイジングコンサルタントに読んでいただきたいと思います。
きっと、これまで「寄付が集めにくい」と思われていた分野でも、より多くの人に理解・共感してもらえるメッセージづくりに役立つだろうと想像しています。
ただ、そのうえで、このように
自団体の利益(例えば寄付の増加)になるよう、寄付検討者に、ある感情を抱いてもらうべく作為的にコミュニケーションすること
が、ファンドレイジング活動においてどれくらい正当化されうるのか?
という問題についても考え、議論していきたいと思います。
(極端な例ですが、とにかく悲惨な写真を使うことで「悲しみ」の感情を引き起こし、注目を集めてクリック率を高めるという手法は倫理的に問題があると思います)
この論文が載っている雑誌はJournal of Consumer Researchという雑誌ですが、マーケティング研究者の寄付研究への貢献も近年大きくなってきているので、研究の流れをこれからも追いかけていこうと思います。
すっかり外出自粛生活で、カフェでコーヒーを飲めたころが懐かしいですね・・・。
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