2023年4月2日日曜日

研究開発エコシステムにおける「寄付募集の科学」の役割

academist Prizeでの発信をスタートしてからはブログ更新をacademistの方に移行していましたが、今回は重要な資料が発行されたので、研究ブログの方でアップします。

『拡張する研究開発エコシステム 研究資金・人材・インフラ・情報循環の変革に乗り出すアントレプレナーたち』

https://www.jst.go.jp/crds/pdf/2022/RR/CRDS-FY2022-RR-03.pdf

これは、国立研究開発法人科学技術振興機構 研究開発戦略センターによる約60ページにわたるレポートで、日本の研究開発の未来にとって重要な示唆を与えてくれるものだと考えます。

本レポートに対しては、自分も寄付募集の研究者としてヒアリング協力をさせていただいたという経緯もあり、ご紹介したいと思いました。

「フィランソロピーは、その科学への投資額を増やしているだけでなく、研究開発エコシステムの拡張・変革の先導役も果たしてきた」(p43)

という表現のとおり、寄付が研究開発において果たす役割は大きいものです。


一方で、こうした寄付は、必ずしも優れた研究開発を行っている機関や研究者に対して自然と寄せられる、というわけではありません。

寄付は、情報発信や寄付の依頼によって生じる面も強く、私が追求したいと考えている寄付募集の科学(Science of Fundraising)はその面で研究開発エコシステムの発展に貢献できると考えています。

寄付は言うまでもなく、寄付をする側が大きなパワーを持っている社会的な営為であると考えられます。

一方で、小さな額の寄付であっても、それが集まることで大きな力になる、ということもあります。ごく少数の個別具体的なmajor giftを予測することは難しくとも、そうでない、一般の方々から寄せられるご寄付については、その金額や件数の確率論的な予測も可能になるでしょう。

ある活動から得られる成果の予測可能性が高まることは、その活動に対する先行投資を容易にします。

研究開発エコシステムを発展させるための先行投資をしやすくする、というのが、「寄付募集の科学」が果たすことのできる役割のひとつであると考えます。


上記のレポートでは、様々なプレイヤーが研究開発エコシステムの中で果たしている、果たそうとしている役割について豊富な情報が掲載されています。

そして、その中での「寄付募集の科学」の役割も見て取れるかと思います。

ぜひ、ご覧いただければ幸いです。





2022年12月10日土曜日

シンポジウム「立ち止まって、考える」での発表「大学の貢献と、寄付が生み出す暖かな光」引用文献

2022年12月10日の京都大学人と社会の未来研究院シンポジウム「立ち止まって、考える」に登壇させていただきます。

どなたでも、下記YouTubeからご視聴いただけます。

12時半開始で、私はおそらく15時頃登壇するかと思います。

https://www.youtube.com/watch?v=MRfmps3QTHk

当日のスライドにて引用している文献は下記のとおりです。

内容としては、

・寄付って何なのか

・人はなぜ大学に寄付をするのだろうか(どんなモデルで説明できるのか)

というようなことをお話しする予定です。


(引用文献の下にもちょっと本文が続きます)


<引用文献>

Andreoni, J. (1989). Giving with Impure Altruism: Applications to Charity and Ricardian Equivalence. Journal of Political Economy, 97(6), 1447–1458. http://www.jstor.org/stable/1833247

Andreoni, J. (1990). Impure Altruism and Donations to Public Goods: A Theory of Warm-Glow Giving. The Economic Journal, 100(401), 464–477. https://doi.org/10.2307/2234133

Andreoni, J. (1995). Warm-Glow Versus Cold-Prickle: The Effects of Positive and Negative Framing on Cooperation in Experiments. The Quarterly Journal of Economics, 110(1), 1–21. https://doi.org/10.2307/2118508

Andreoni, J. (1998). Toward a Theory of Charitable Fund Raising. Journal of Political Economy, 106(6), 1186–1213. https://doi.org/10.1086/250044

Becker, G. S. (1974). A Theory of Social Interactions. Journal of Political Economy, 82(6), 1063–1093.

Brest, P., & Wolfson, M. (2020). How to Think about Risk in Philanthropy. Stanford Social Innovation Review, 18(1), 57–58. https://search.proquest.com/magazines/how-think-about-risk-philanthropy/docview/2316724948/se-2?accountid=11929

Brown, P. H., & Minty, J. H. (2008). Media Coverage and Charitable Giving after the 2004 Tsunami. Southern Economic Journal, 75(1), 9–25. https://search.proquest.com/docview/212146275?accountid=11929

Chuan, A., Kessler, J. B., & Milkman, K. L. (2018). Field Study of Charitable Giving Reveals that Reciprocity Decays over Time. Proceedings of the National Academy of Sciences, 115(8), 1766 LP – 1771. https://doi.org/10.1073/pnas.1708293115

De Wit, A., Bekkers, R., & Van Groenou, M. B. (2017). Heterogeneity in Crowding-out: When are Charitable Donations Responsive to Government Support? European Sociological Review, 33(1), 59–71. https://doi.org/10.1093/esr/jcw048

Dees, J. G. (2012). A Tale of Two Cultures: Charity, Problem Solving, and the Future of Social Entrepreneurship. Journal of Business Ethics, 111(3), 321–334. https://doi.org/10.1007/s10551-012-1412-5

Duncan, B. (2004). A Theory of Impact Philanthropy. Journal of Public Economics, 88(9), 2159–2180. https://doi.org/https://doi.org/10.1016/S0047-2727(03)00037-9

Frumkin, P. (2008). Strategic Giving: The Art and Science of Philanthropy. University of Chicago Press. https://books.google.co.jp/books?id=Gv9ejrvJf7AC

Ma, J., Ebeid, I. A., de Wit, A., Xu, M., Yang, Y., Bekkers, R., & Wiepking, P. (2021). Computational Social Science for Nonprofit Studies: Developing a Toolbox and Knowledge Base for the Field. VOLUNTAS: International Journal of Voluntary and Nonprofit Organizations. https://doi.org/10.1007/s11266-021-00414-x

Ostrower, F. (1995). Why the Wealthy Give: The Culture of Elite Philanthropy. Princeton University Press.

Park, E.-S. (2000). Warm-glow versus Cold-prickle: a Further Experimental Study of Framing Effects on Free-riding. Journal of Economic Behavior & Organization, 43(4), 405–421. https://doi.org/https://doi.org/10.1016/S0167-2681(00)00128-1

Watanabe, F. (2022). The Benefits of Separating Charitable and Philanthropic Giving in Nonprofit Marketing: Concept Analyses and Proposal of Operational Definitions (No. 2022-001-J; Japan NPO Research Association Discussion Papers). https://janpora.org/dparchive/pdf/20220624J.pdf

Wright, K. (2001). Generosity vs. Altruism: Philanthropy and Charity in the United States and United Kingdom. Voluntas, 12(4), 399–416. https://doi.org/10.1023/A:1013974700175

水越康介, & 藤田健編. (2013). 新しい公共・非営利のマーケティング. 碩学舎.

渡邉文隆. (2022). 寄付市場の成長ドライバー・断片化・公正性. ノンプロフィット・レビュー, advpub. https://doi.org/10.11433/janpora.NPR-D-22-00004



先日入ったカフェで、本棚に国際協力NGOの代表の方の書籍や、寄付を募るチラシなどが置いてありました。

音楽が流れて、あったかいヒーターがあって、本当に素敵な一角だったので店の人にお願いして写真を撮らせてもらいました。

寄付は人の心を暖かくする、というのは直観的に感じるところですが、今日はその話を他の先生方や一般の方々と一緒にできるのを楽しみにしています。



寄付や寄付募集の研究にちょっと関心あるかも、と思った方、ぜひ下記ページもご覧ください。academistというサイトで、月額支援型のクラウドファンディングに挑戦中です。

https://academist-cf.com/fanclubs/274?lang=ja

2022年10月1日土曜日

日本NPO学会セミナー「寄付・ファンドレイジング研究の最前線 -Emerging Scholarsの研究に学ぶ」で仙台にお伺いします

大変ありがたい機会をいただきまして,11月6日(日)の午後,日本NPO学会のセミナーに登壇させていただくことになりました.

https://janpora.org/news/pdf/20220930.pdf

対面65名の席と,簡易オンライン配信があるとのことです.

鎌倉女子大学 学術研究所 准教授 福井 文威先生のご発表もあります.

福井先生は,『米国高等教育の拡大する個人寄付』を執筆された方です.


福井先生の研究は,実際に日本の大学への評価性資産の寄付に関する制度設計にも影響を与えた,非常に重要なものです.

実務者として仰ぎ見ていた先生と実際にお目にかかれるということで,大変光栄に感じております.

討論者をしてくださる関西大学の坂本治也先生と,モデレーターをしてくださる東北大学の岡田彩先生は,私も執筆に加わらせていただいている,日本寄付研究センターの運営委員をされている方です.
(新しい記事がアップされていますので,ぜひご覧ください)

私の発表は,京大経営管理大学院で若林靖永教授・Spring H. Han先生のもとで進めてきた博士課程の研究を基にしたものです.坂本先生と岡田先生にフィードバックをいただけること,大変ありがたく思っています.

私は青森県の出身ですが,宮城県仙台市は,東日本大震災以降のNPOセクターの発展にとって非常に重要な役割を果たしてきた,研究者と実務者の集う土地だと認識しています.

会場の方々と交流する時間もあるとのことで,これも楽しみです.

会場で,またはオンラインで,ぜひご参加いただければ幸いです!



2022年9月11日日曜日

「社会的共通資本と未来」寄附研究部門創設記念シンポジウムのアーカイブ動画が公開されました

2022年7月23日に、京都大学の人と社会の未来研究院に設置された「社会的共通資本と未来」寄附研究部門の創設記念シンポジウムが開かれました。

「Beyond Capitalism~拡張する社会的共通資本~」

というお題だったのですが、私が主に社会の基盤的な役割を果たす組織(大学や図書館などの非営利組織)の寄付募集に関心を持っているということもあり、寄付に関する講演をさせていただいたものでした。

演者の先生方については、下記記事をご覧ください。

https://watanabefumitaka.blogspot.com/2022/07/blog-post.html

自分にとっては、これまでの人生で参加した全てのシンポジウムの中で最もおもしろかったものでした。

オンラインと会場で合わせて数百人の人に見ていただいたのですが、なんと!それに加えて、アーカイブ動画が公開されています。


「人間が自然と調和して生きていくことはできるのだろうか・・・」

「資本主義社会の次のフェーズって、どんな社会になるんだろう?」

「社会のインフラに対する寄付ってどうなんだろう」


といった疑問を持つ人にとっては、絶対におもしろいと思いますので、ぜひご覧ください。


その1: https://www.youtube.com/watch?v=B8XZyM1ASgA

・オープニングトーク 

 京都大学理事 久能祐子先生

 宇沢国際学館 代表取締役 占部まり先生

・基調講演

 「協生農法と拡張生態系 〜自然-社会共通資本のビジョンと本研究部門の方法序説」

  京都大学人と社会の未来研究院特定教授(社会的共通資本と未来寄附研究部門)

  舩橋真俊先生 



その2: https://www.youtube.com/watch?v=86tJeOaLvmg

・講演

 「ポスト資本主義のビジョン」

 京都大学人と社会の未来研究院 教授 広井良典先生  

・講演

 「寄附と利他行動の未来」

 信州大学社会基盤研究所 特任講師/京都大学経営管理大学院博士後期課程 渡邉文隆  


その3:https://www.youtube.com/watch?v=eIwuuIzZJPI

・講師によるパネルディスカッション

・ラップアップ

 京都大学経営管理大学院 グローバル社会起業寄附講座 客員准教授 村井暁子先生

 京都大学副学長/人と社会の未来研究院長/文学研究科教授 宇佐美文理先生


私の発表の引用文献は以下のとおりです。

https://watanabefumitaka.blogspot.com/2022/07/2022723.html


私は、人が幸せに暮らしていく上では、社会的共通資本に対して十分なリソースが集まることが重要だと考えています。

そのための補助的な財源として、寄付は重要なものであると考えます。

緊急的な危機ではなく、ゆっくりと進行する危機に対しては人々の共感は集まりにくいのかもしれませんが、そのハードルを越えていくにはどうするのかをこれからも考えて実践していきたいと思います。


2022年9月10日土曜日

寄付者満足に関する論考がAdcademic Research on Donationsに掲載されています

日本寄付財団のAdcademic Research on Donationsというウェブサイトには、日本の様々な寄付に関する論考が集まっているサイトです。

ありがたいことに、そのサイトに投稿させていただく機会を得まして、下記の論考を投稿させていただきました。


「寄付によって生まれる恩恵と寄付者満足度について考える」

https://nippon-donation.org/papers/586/


博士論文でバタバタしていて時間が経ってしまったのですが、ファンドレイジングに携わる方のみならず、寄付に関心を持つ一般の方々にもお読みいただければ幸いです。

Adcademic Research on Donationsには、他にも著名な先生方の記事が掲載されています。自分も大変勉強になりましたので、リンクを掲載します。

https://nippon-donation.org/academic-research-on-donations/page/2/


2022年7月18日月曜日

2022年7月23日「寄付と利他行動の未来」参考文献リスト

いつも、学会発表などの際にはスライドで引用した文献についてブログにアップするようにしています。

7月23日に開催予定の、

京都大学人と社会の未来研究院 社会的共通資本と未来寄附研究部門創設記念シンポジウム「Beyond Capitalism ~拡張する社会的共通資本~」

では、「寄附と利他行動の未来」と題してお話をさせていただく予定でして、そのスライドが完成したので、参考文献をアップします。

当日のオンライン視聴は無料で、7月20日(水)17時まで受け付けているようですので、よければぜひお申込みください。

https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/event/2022-07-01-0

今回の私からの発表のキーワードとなるのは、

・寄付文化と寄付市場

・科学的なファンドレイジング

・Philanthropy

・条件つき協力(Conditional cooperation)

・マーケティングと選好の内生性

などなどです。

当日の議論がたいへん楽しみです。


<参考文献>

Brest, P., & Wolfson, M. (2020). How to Think about Risk in Philanthropy. Stanford Social Innovation Review, 18(1), 57–58. https://search.proquest.com/magazines/how-think-about-risk-philanthropy/docview/2316724948/se-2?accountid=11929

Brown, P. H., & Minty, J. H. (2008). Media Coverage and Charitable Giving after the 2004 Tsunami. Southern Economic Journal, 75(1), 9–25. https://search.proquest.com/docview/212146275?accountid=11929

Chen, Q., Wang, C., & Wang, Y. (2009). Deformed Zipf’s law in personal donation. EPL (Europhysics Letters), 88(3), 38001. https://doi.org/10.1209/0295-5075/88/38001

Fischbacher, U., Gächter, S., & Fehr, E. (2001). Are people conditionally cooperative? Evidence from a public goods experiment. Economics Letters, 71(3), 397–404.

Frumkin, P. (2008). Strategic Giving: The Art and Science of Philanthropy. University of Chicago Press. https://books.google.co.jp/books?id=Gv9ejrvJf7AC

Ma, J., Ebeid, I. A., de Wit, A., Xu, M., Yang, Y., Bekkers, R., & Wiepking, P. (2021). Computational Social Science for Nonprofit Studies: Developing a Toolbox and Knowledge Base for the Field. VOLUNTAS: International Journal of Voluntary and Nonprofit Organizations. https://doi.org/10.1007/s11266-021-00414-x

Ostrom, E. (2000). Collective action and the evolution of social norms. Journal of Economic Perspectives, 14(3), 137–158.

Ostrower, F. (1995). Why the wealthy give: The culture of elite philanthropy. Princeton University Press.

Watanabe, F. (2022). The Benefits of Separating Charitable and Philanthropic Giving in Nonprofit Marketing: Concept Analyses and Proposal of Operational Definitions. https://janpora.org/dparchive/pdf/20220624J.pdf

Weisbrod, B. A. (1975). Toward a Theory of the Voluntary Nonprofit Sector in a Three-sector Economy. In E. S. Phelps (Ed.), Altruism, Morality, and Economic Theory. Russell Sage Foundation.

Wright, K. (2001). Generosity vs. altruism: Philanthropy and charity in the United States and United Kingdom. Voluntas, 12(4), 399–416. https://doi.org/10.1023/A:1013974700175

Yano, M. (2009). The Foundation of Market Quality Economics. The Japanese Economic Review, 60(1), 1–32. https://doi.org/10.1111/j.1468-5876.2008.00471.x

宇沢弘文. (2015). 宇沢弘文の経済学. 日本経済新聞出版社.

寄付白書発行研究会. (2021). 寄付白書2021 (日本ファンドレイジング協会 (ed.)). 日本ファンドレイジング協会.

小島寛之. (2018). 宇沢弘文の数学. 青土社. https://books.google.co.jp/books?id=rKkXvAEACAAJ

小野善康. (1996). 不況定常状態とインフレー供給曲線. 経済研究, 47(1). http://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/hermes/ir/re/19877/keizaikenkyu04701016.pdf

広井良典, & 福田幸二. (2021). AIを活用した政策提言と分散型社会の構想. 農林業問題研究, 57(1), 8–14. https://doi.org/10.7310/arfe.57.8

 

関係ないのですが、京都は夏だな、という感じの日々です。

 

2022年7月17日日曜日

『13歳からの経営の教科書』を読んで考えた、自学自習できない子ども・若者のこと

 『13歳からの経営の教科書』という本を読みました。

大変久しぶりなのですが、これは多くの人に読んでほしい、と思う本でしたので紹介したいと思います。


本の中身を書いてはいけない気がするので自制しておきますが、このブログを読んでおられるような、非営利組織に関わる方々にとっても、読んで全く損はない内容になっています。

今、本書の一部が試し読みできるので、ぜひご覧いただければと思います。

また、「あとがき」も公開されているので、ご一読ください。
著者のお父様は経営者であられたとのことですが、これ以上の親孝行はないだろう、と思うような名文です。

自分自身も田舎の母子家庭出身なのでまあまあ大変な人生前半を過ごしてきたと思うのですが、私が2000年代に約1年ずつ住んでいたブラジルやウガンダでは、小さい子どもや若者たちが何とか(親の力を借りずに、あるいは時には弟や妹を養いながら)サバイバルしなければならない、という状況をよく目にしました。

日本国内においても、こんな年齢の子どもがこんな苦境に陥るというのはどう考えてもおかしい、というシーンに何度も遭遇しました。主に、あしなが育英会での様々な活動での体験です。

そのような時、こんなテキストがあったならどれだけ良かっただろうか、と思います。

「食べ物にも困るような状況のなかで、経営についての教科書があっても仕方ないだろう」

そんなことを仰る方もいると思います。

たしかに、衣食住にも事欠くような状況にあっては、無償で提供されるランチや医薬品などは、極めて重要です。

学校での授業に加えて様々な労働をしながら、その日その日を何とか暮らしている子どもに「これからは誰もが経営ができるようになる必要があるのだから、経営を勉強しよう!」と言ってもかなり無理があります。

自学自習できない子ども・若者にこそ


ですから、約20年前にブラジルやウガンダにいた頃、こんなテキストがあったとして、それを直接彼ら彼女らに見せてあげたかった、とは思いません。

もしあの頃の自分がこのテキストをしっかり読んでいて、それを実践できていたら、きっと「経営」とはどういうことかを少しでも伝えられたのではないだろうか、と思うのです。

『13歳からの経営の教科書』を読んで、すくすくと経営を自学自習して実践していけるような子ども・若者は、おそらく相当に恵まれた環境の人だと思います。

ほとんどの人はそうではありません。

家庭環境が厳しい子ども・若者ほど、そんなアクロバティックな自学自習はできません。

だからこそ、回りの大人が自分の人生や活動や会社を「経営」し、子ども・若者に見せてあげたり、話してあげる必要があると思います。

私自身が高校を卒業するまで地元で暮らしていたとき、そもそも周りで知り合う大人のうち、「経営」の話をしてくれるような人はほとんどいませんでした。

そもそも、ビジネスをしている人が少なかったのです。

学校の教師か、市役所勤務か、農協勤務か、「子どもには継がせたくない」と言いながら農家をしている、という大人が多かったように記憶しています。

人口は減る一方、新たな雇用も生まれない。そんな閉塞した感覚に耐え切れずに、高校を卒業して都市に出たのでした。


ですから、私はこのテキストを多くの人に読んでほしいと思います。

特に、厳しい環境にいる子どもや若者と接する人々に読んでほしいです。

公立学校の先生。
通信制高校の先生。
児童養護施設の先生。
国際協力NGOの職員。
障がい児の療育施設の先生。
不登校の子供を支援するNPOの職員。
自治体のヤングケアラー担当の職員。

自分も時折、厳しい環境にいる子どもや若者と接しますので、経営を教えるための教科書として、この本を大切に活用させていただこうと思います。

加えて、日本の社長さんのうち女性はわずか14%あまりです。
ですから、

女の子を持つお父さん・お母さん
女子中学校・女子高校などの先生方

にも、読んでいただきたい本です。

非営利組織の「経営」を考える


こうして挙げていくと、「厳しい環境にいる子どもや若者と接する人々」は、だいたい非営利組織に所属していることがわかります。

非営利組織には、「経営」は不要でしょうか?

まさかそんなことはありません。

非営利組織やソーシャルビジネスに携わる人も、この本から学ぶことは多いと思います。

加えて、子どもたちの多くはやがて(非営利組織ではなく)民間企業で働くようになるわけですから、そのような子どもに接する人々が(民間企業を含む)経営について知っておき、それを子どもに伝えられることはとても重要だと思います。

とはいえ、多くの非営利組織の職員の方々、たとえば公立学校の先生にとっては、

「そんな時間がどこにあるのか?」

という話だと思います。

いまの仕事だけで手一杯で、そんな余裕は微塵もないという団体が多いと思います。

そのような組織にこそ、寄付の募集の方法論であるファンドレイジング(特に、経験やカンに依存したものではなく科学的なファンドレイジング)を習得をいただいて、「ゆとり」をつくりだしてほしいと思います。

(現実には、ファンドレイジングに時間や労力を投資しない、という組織も多くあります。

そのような組織は、行動に移すだけの危機感を抱いていないのか、リスクを恐れているか、その両方か、あるいは他の理由があるのか、それは私自身が研究で少しずつ明らかにしていきたいところです)

ファンドレイジングには、非営利組織の「経営」の自由度を大きく高める効果があります。

願わくば、
このブログ記事が1人でも多くの大人に届き、
『13歳からの経営の教科書』が1冊でも多く売れて、
その人が「経営」を実践する姿や話が
厳しい環境にある若者や子どもにチャンスを与える、
という状況が生まれてほしいと、強く思います。


※本ブログでは、Amazonへのリンク経由で購入が発生すると、数円~数十円くらいの少額のポイントがブログ著者のアカウントに入るようになっています。
ブログ読者の方々がどんな書籍に関心を持っているかを把握することで、よりニーズに沿った発信に務めていますので、ご了解ください。

ファンドレイジング・アクションリサーチ研究会のオリエンテーションについて

 非営利組織における、ファンドレイジング(寄付募集)の研究をしております渡邉文隆と申します。 このたび、日本パブリックリレーションズ学会の研究会のひとつとして、ファンドレイジング・アクションリサーチ研究会というものを開催します。 これは、ファンドレイジング活動の改善と、論文執筆に...