Sunday, 28 February 2021

勉強会の内容と、寄付市場の効率性について

来週の日曜に開催する、個人的なオンライン勉強会の準備をしています。

(本日まで申し込みを受け付けております。ご希望の方は下記からご覧ください)

「寄付の『そもそも』勉強会ーチャリティって何?フィランソロピーって何?」

https://watanabefumitaka.blogspot.com/2021/01/blog-post.html


驚いたことに、このようなテーマに、30人以上の方が申し込んでくださいました。ありがとうございます。

さて、どんな方が参加されるかというと、複数選択OKでご自身の立場を選んでいただいた結果、下記のような感じでした。(クリックで拡大します)


やはり寄付を募る側の方が多いという状況ではありますが、寄付をしたことのある人も18人、政策を考える立場の人が3人、寄付を研究する立場の人も6人と、ありがたい限りです。

当日、予想より多くの方が集まるので、19:45にはzoomをスタートして、ネットワーキングを求める方は自己紹介などをできるようにしたいと思います。

当日の内容ですが、下記を考えています。

1)今日の勉強会の目的
2)疑問
3)この1年で、どうやってその答えに近づいたのか
4)2つの概念の境界線を探ってみた結果
5)みなさんの組織、みなさんの寄付先は、どっち?
6)2つの概念を分けたときに起こることー「そもそも」研究のおもしろさ
7)まとめ

上記の5)や6)では、議論に参加したい人と議論しながら進めたいと思います。
(子育て中のため耳だけ参加、といった形も歓迎です)


このブログの読者の方のごく一部ではあるかと思いますが、皆様にオンラインでお目にかかれるのを、楽しみにしています!


<最近おもしろかった記事>


最後に、これはおもしろいなと思った最近の記事を紹介します。
Stanford Social Innovation Reviewのもの。

「寄付市場は、効率的なのか?」という問いに、ちょっと意外な回答を試みているものです。

効果的な利他主義を掲げる方々からすると、寄付市場は欠陥だらけに見えるのかもしれないのですが、この著者の方は、寄付者が寄付市場において、自分が求めるものを得ているのだ、と主張します。

そのうえで、より大きなチャレンジについて論じています。


「寄付市場において、みんなが求めるものを得られるようにする」ということは、上記の勉強会のテーマである、チャリティとは?フィランソロピーとは?という問いが関わってくる話なのですが、それはまた勉強会の当日に。




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Friday, 5 February 2021

ファンドレイザーは「収益の最大化」を目指さない

 いま読んでいる論文の中に印象的な一節があったので、ブログで共有したいと思います。


「ファンドレイザーは純収益(利益)の最大化を目指していない、ということを考える強い理由がある」


これは、下記の論文の中で見つけた文章でした。

Andreoni, J., & Payne, A. A. (2011). Is crowding out due entirely to fundraising? Evidence from a panel of charities. Journal of Public Economics, 95(5–6), 334–343. https://doi.org/10.1016/j.jpubeco.2010.11.011


企業のマーケティングは、限られたリソースの中で、売上、利益、顧客獲得の効率などの「最大化」を目指します。

それに対して、非営利組織のファンドレイジング(寄付募集)はそうではないというのです。


いったいどういうことなのでしょうか。


この論文は「クラウディング・アウト」に関するもの


そもそもこの論文は、「政府からの助成金が非営利組織に与えられたとき、その団体への寄付金が減る」という現象(これは「クラウディング・アウト」と呼ばれます)についてのものです。


古典的には、クラウディング・アウトは、寄付者がたとえば「あの組織には政府から十分なお金が入ったから、自分がこれまでと同じような額を寄付する必要はないな」と思ってしまうことに起因すると考えられてきています。この論文は8000以上もの団体のパネルデータを用いて分析しており、たしかに、その面もあると記しています。また、逆に助成金を得ることによって寄付金が増える(クラウディング・インが起きる)ケースもあるとのことです。


しかし、この論文の主なメッセージは、上記に加えて、「政府からの助成金をもらった後に、非営利組織が寄付募集活動を減らしてしまう」という要因が、クラウディングアウト現象に対してより強く影響している、ということです。


非営利組織は、「お金が集まれば集まるだけ良い」というわけではなく、実施すべきと考えている事業のために必要な資金を確保することを目指しているわけなので、助成金を得た後に寄付募集の努力を減らしてしまうという行動は合理的です。


助成金が「穴埋め」になってしまう?

しかし、助成金を出す側としては悩ましい問題に直面します。

政府が助成金を出すと、その分非営利組織が資金調達の努力を弱めてしまうので、結果的に、寄付の減少を助成金が穴埋めしているような状況になってしまうわけです。

この論文では、助成金を受け取る非営利組織に対して、その助成金の(全額とは言わないが)ある程度の割合と同額の寄付を募るように義務づける、等の打ち手を推奨しています。

この記事では、この打ち手が良いとか悪いとか、といった議論には踏み込みません。

ただ、少なくとも、クラウディング・アウトという現象が広く観測されるということは、政策立案者や非営利組織のファンドレイザーやリーダーは、把握しておくべきだと考えます。


マーケティングとファンドレイジングの違いのひとつ

これまでの文献で、マーケティングはしばしば社会的な問題を引き起こしてきたということ、非営利組織の担い手がマーケティングに対して嫌悪感を抱いているということもあることが下記の論文でも指摘されています。

若林靖永(1999)「非営利・協同組織のマーケティング―ステイクホルダー・顧客対応・社会変革―」角瀬保雄・川口清史編『非営利・協同組織の経営』p152-153、ミネルヴァ書房

感情的な面でも、非営利組織にマーケティングの考え方を導入するのは難しい。上記の論文は1999年に書かれたとは思えないほど、2021年現在でも当てはまる様々なハードルとその対処法が描かれています。

企業と非営利組織のマーケティングは様々な点が異なるわけですが、「ファンドレイザーは収益の最大化を目指さない」という前提を見落としていると、民間企業のマーケティングを非営利組織のファンドレイジングにそのまま導入しようとしてもうまくいかない、ということになってしまうことが予想されます。


勉強会を開催します


というわけで、今日はそもそもファンドレイザーは収益の最大化を目指していないぞ、という話を書いてみました。

大学院に入って、「そもそも」を考えるのがとてもおもしろいため、個人的に下記のオンライン勉強会を企画しています。

すでに予想をはるかに超えた人数が参加希望をくださっていてうれしい限りなのですが、この記事を最後まで読んでしまったような方にはマッチすると思うので再掲いたします。

「寄付の『そもそも』勉強会ーチャリティって何?フィランソロピーって何?」


研究ではずっと英文を読んで英文を書いてという生活なので、ブログを書くのは良い息抜きです。
それでは、研究に戻ろうと思います!みなさまも良い週末を。



Sunday, 31 January 2021

「寄付の『そもそも』勉強会ーチャリティって何?フィランソロピーって何?」を開催します

この1年半くらい、寄付に関する論文をいろいろ読んできました。

そのなかで学んだ「そもそも論」を寄付者の方やファンドレイジング担当の方にご紹介するために、下記の勉強会を開催したいと思います。

(自分は寄付月間アンバサダーというお役目を仰せつかっておりまして、イベントを開催することが推奨されているのですが、12月が忙しくて到底開催できず、ぎりぎり3月に開催するということになったものです・・・)


*******************

「寄付の『そもそも』勉強会ーチャリティって何?フィランソロピーって何?」


寄付をしたり、寄付を募る活動をするにあたって、知っておくとちょっとすっきりするような、寄付の「そもそも論」をこれまでのさまざまな先行研究に基づいて考えるオンラインセミナーです。

京都大学経営管理大学院の博士後期課程で寄付について研究をしている渡邉文隆が、「チャリティ」と「フィランソロピー」とは何か、この2つは何が違うのか、どんな風に世の中の役に立つのか、寄付者はどういうプロセスで意思決定しているのか、といった話題を説明し、皆さんと意見交換したいと思います。


日時  2021年3月7日(日)20:00-21:30

開催方法 zoomを予定しています。

参加費 無料

発表者 渡邉文隆(京都大学経営管理大学院)

    自己紹介や、私と寄付の関わりはこのnote記事をご覧ください。

お申込み このGoogle formからお願いします。2月末で締め切りとさせていただきます。

皆様のご参加をお待ちしております!


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Saturday, 23 January 2021

Research Fund 3.0での発表内容と、科学を豊かさにつなげる鍵

2020年12月26日に、「ResearchFund3.0 - 研究費のイマを言語化し、ミライを予想する」というイベントに登壇させていただきました。

私からは、

・ここ数年の自分の仕事と、いまの職場である新しい財団がなぜ必要だったか

・大学や研究機関の寄付募集の最近の変化

・「研究のための寄付」がこれからどうなるだろう、という予測

をお話ししました。

企画くださった@T5uku5hiさん、今回もお世話になりました@hiro1987jpnさん、@RShibatoさん、ありがとうございました!

当日の講演がYoutubeで公開されているので、下記に貼り付けておきます。



パネルディスカッションの様子は下記のnoteにまとめられています。


このイベントは、自分がぼんやりと抱いていた問題意識を明確にしていただいたものでした。

その問題意識とは、「どうやったら、学術研究は『みんなの豊かさ』につながっていくのだろう?」というものでした。

学術研究を豊かさにつなげるには?


そのひとつの答えは、

・学術研究の結果を、みんなが使いやすい形にしていく

ということで、それは私の専攻であるマネジメントサイエンスが志向するもの(経済学や心理学の研究結果を経営や実践の現場で活かすということ)でもあると思います。

マネジメントサイエンスを社会が活用するために必要なコストは、主に時間的リソース(学習コスト)や政治的リソース(組織内の意思決定・コミュニケーションのコスト)で、知見そのものは書籍などの形で市場に流通しており、比較的低コストで手に入ります。

しかし、医学研究の成果などは、制度的な問題、法的な問題、倫理的な問題なども関わるため、もっと大がかりな仕組みを社会の中に整備しなければ、多くの人が使えるようにはならないように思われます。

そんなことを考えていたときに、下記の書籍に行き当たりました。



独立行政法人経済産業研究所(RIETI)所長の矢野誠先生の指摘が非常におもしろく、科学技術を豊かさにつなげるためには、質の高い市場が必要だ、との主張を展開しています。

産業革命など、科学技術が急激に進歩すると市場にゆがみが生じて大恐慌などの危機的な状態が生じる場合が多く、それが新たな法律、精度、倫理、監修、文化などで修正されることで、市場がその質を回復する、とのこと。

私の立場から考えると、これは
「質の高い寄付市場とはどんなものか」
「質の高い再生医療市場とはどんなものか」
という問いにつながる話です。

再生医療市場についてはまだここで書けるようなことはないのですが(私などの話よりもAMEDがアーサー・D・リトル・ジャパンに委託して行ったこの調査はすごいのでぜひご覧いただきたい)、下記では、寄付市場について少しだけ触れたいと思います。

寄付市場における科学技術の急激な進歩


寄付市場でいえば、ビットコインという技術が、急激な進歩を生んでいます。匿名性の高い形で、国境を越えて、安価に、小口の寄付を、透明性高くトランザクションできるようになった、ということが言えると思います。

「良い市場とは何か」を考えたとき、「多くの人が参加できる」という特性や「トランザクションコストが低い」ということは見逃せないものであり、そのためにインターネットやブロックチェーン技術がどんな役割を果たせるのか、には私も大変関心があります。

一方で、技術の進歩に任せていても、市場が健全な形で発展するとは限らない、ということは先の書籍でも指摘されていたことです。

例えば、こうした技術的進歩は、過激派団体に対する寄付を促進してしまうリスクもあります。


寄付においては、誰が市場の番人を務めれば良いのでしょうか。

クラウドファンディングで多くの人や組織が寄付を募集できるようになったとき、「キュレーター」という職種が各クラウドファンディングプラットフォーム企業内にあらわれて、ページや寄付募集の趣旨の質を担保してきている(および反社会的勢力の排除などのリスク対策の役割を果たしている)と思います。

個人的には、「学術研究やその実用化への寄付」という市場が健全な形で拡大することは、非常に大切だと思います。

なぜなら、その市場に投じられたお金は、「学術研究やその実用化によって生まれる別の市場」を育てる力になるからです。

寄付市場とはどんな特性や役割を持つ市場なのか、という話もしていきたいのですが、長くなったので今回はこれくらいにしたいと思います。


※なお、市場を整えていくというのは長期的な取り組みであり、現在のCOVID-19のような緊急的な状況では、科学が社会に貢献できるかどうかを左右する鍵は「メディア」だと感じています。
メディアの方々は、どうか、その社会的責任を自覚いただき、メディアが不安を喚起して差別や分断をあおってきた歴史的な経緯への反省もふまえていただき、科学的に妥当な内容を報道いただきたいと思います。非営利メディアの可能性と課題も、いつか取り組みたいテーマです。

いつも「更新を楽しみにしています」とおっしゃってくださる皆様、はじめてこのブログにたどりついて最後まで見てくださった皆様、ありがとうございます。

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Wednesday, 30 December 2020

マーケティング・ファンドレイジングにかかわる人に贈るすごい本1:『エフェクチュエーション 市場創造の実効理論』

マーケティングを専門として仕事をしていくうえで必要な「何か」を独学でを身につけようと数年間もがいていた自分にとって、今年の大学院進学は革命的な出来事でした。

これまで全く知らなかった、かつ自分の仕事や関心に直結する概念・書籍・資料に出会う密度が全く違うのです。

そのようなものとの出会いは、簡単に判断できます。

出会ったとたんに、一気に興奮するのです。

今年、マーケティング・ファンドレイジング(非営利組織の寄付募集)の観点から興奮したいくつかの書籍を紹介します。

本日は一冊目。

『エフェクチュエーション 市場創造の実効理論』です。




エフェクチュエーションとは?


エフェクチュエーションは、熟達した起業家の意思決定の特徴から見出された論理です。
多くの熟達した起業家は市場調査から事業をスタートするのではなく、いま選択できる手段を定義すること(自分は誰で、何を知っているか、誰を知っているか)からスタートし、偶発的に起きる事象を活用して、事業をつむいでいける行動を選択します。継続的に新しい機会をつくりだし、それを有利に活用しようとします。

私が2006年から2013年まで働いていたアミタという会社では「ブリコラージュ」という(文化人類学者のクロード・レヴィ=ストロースの)言葉で同様の概念が説明されていたのを思い出して驚いているところです。

この見方は、ビジネスにおける「意思決定理論」の有効性について疑問を呈するものです。

私は、完全競争市場を前提とした理論から導出されている経済学的な意思決定を、人間の限定合理性によって修正するという行動経済学的なアプローチに大変魅力を感じてきました。

しかし、エフェクチュエーションは、現実世界の意思決定から帰納的に構築された理論であり、より実用主義的であると感じます。

エフェクチュエーションの5つの原則


エフェクチュエーションによる戦略は、未来が予測不能で、目的が不明瞭で、環境が人間の行為によって変化する場合に有効である、といいます。
熟達した起業家の行動パターンから抽出されたエフェクチュエーションは、以下のような原則で表現されることが多いようです。

「手中の鳥」の原則

  自分たちがいま何を持っているのか、誰を知っているのか、からスタートする。

「許容可能な損失」の原則

  小さな、許容可能な損失で済むような失敗を繰り返して学習し、やがて飛躍する。

「クレイジーキルト」の原則

  コミットする意思を持つ関与者と交渉し、パートナーシップを作り上げていく。

「レモネード」の原則

  予定になかったこと、想定していたかった事象を活用し、チャンスに変えていく。

「飛行機の中のパイロット」の原則

  コントロールできる範囲においては、予測が立たなくても進んでいける。

優れたファンドレイザーの行動を説明できる?

エフェクチュエーションの論理は、これまで、ファンドレイジング(および優れたファンドレイザーの行動パターン)と、教科書的なマーケティング論の間に横たわる溝として感じてきたものに、非常に大きなヒントをくれました。

グロースハックという概念とも似ていると思うのですが、優れたファンドレイザーはマーケティングの教科書に示されているような思考とはずいぶん違った形で寄付を募っていくように思われます。

自分や組織の思いを人との対話の中で確立していき、人間関係を「わらしべ長者」のようにたどりながら、いつの間にか大きなチャンスを手にしている。そんなあり方をうまく説明できるように思われます。

また、日本ファンドレイジング協会のテキストと、マーケティングの教科書が本質的に違う方法論を示しているように思われることについても、説明がつくのではないか・・という直感を抱きました。これは、詳細にみていきたいテーマです。

「市場」の新しい見方を提供する


この書籍は、「一人ひとりがより良く生きるための道具としての市場」という見方を呈示するものであり、この考え方に(研究者や実践者というよりも人間として)賛同するところです。

著者は、あらゆる市場を「究極的には人々の希望の中に存在する市場」であるとし、また「製品やサービスを営利セクターと非営利・ソーシャルセクターに分けるような考え方は、不必要であり意味がない」という主張をしています。

アメリカの経済学者であるマンサー・オルソンの説を引きながら、「市場は、政府によってつむぎ出された人工物である」という考え方を示し、その市場を拡張していくような政府の重要性と、そのような政府の中で働く人々の起業家的な価値を指摘し、その人々にとってエフェクチュエーションが有益であるということを説いています。

この部分は、寄付市場をどう健全に育てていけば良いのか、という自分自身の問題意識や、どうすれば再生医療市場を「患者さんに最も早く、かつ広く新しい治療を届けるものにできるのか」というiPS財団で抱いている問いにとって、大きなヒントになります。


自分がいま執筆している論文にとって直接に関連する書籍ではないのですが、大変なインパクトを与えてくれる本であるのは間違いないと思いました。


ところで、大学院で受ける恩恵は誰のもの?


大学院生はブログなどを書くよりも論文を書くべきで、このような形で学んだことを共有することは、すぐれた研究者のすることではない、という見方もあるかもしれません。

しかし、4月からの9か月間、大学院生として学んできて、自分が受けるこうした恩恵を自分のためだけに保持するのは罪かもしれない・・・と思うようになりました。

大学が税金をはじめとする公的な資源によって運営されている以上、そこで得られた恩恵は社会全体のもの、と言えるように思います。

まして、自分は大学への支援を呼びかけることを職業とする者です。

少しでも、自分が大学という場から得たものを発信していかなければと思う次第です。

Sunday, 1 November 2020

研究・イノベーション学会での発表の内容と参考資料

11月1日の夜に行った研究・イノベーション学会での「大学ファンドレイジングを考える」というセッションで講演をさせていただきましたので、スライド資料をアップします。企画くださった原田隆先生、本当にありがとうございました。

(11月30日追記)原田先生の発表資料が公開されていますので、下記URLをご紹介しておきます。産学連携コーディネーター、URA、大学ファンドレイザーなどの研究支援専門職員の連携を考える上で貴重な資料だと思います。

https://app.box.com/s/xajgujndkzfxlk0lfgjpu72avgon6b82



私の資料は下記のとおりです。

今回は、「教育・研究への寄付募集」についてだったのですが、

・小さなチームでファンドレイジングをするには?

・規則等で「できない手法」があるときにはどうする?

・大学ファンドレイジングに効果的だった取り組みとは

・大学本部と部局が、寄付募集で競合するのはどう考えたらよいか

「途上国の子どもの命を救う寄付」と大学への寄付はどう違うのか

・大学への支援は「国がすべきこと」なのでは?政府の資金があれば寄付は不要では?という意見にどう対応するか

・大学は、OBOGでない人から寄付を募るにはどうしたら良いのか?

といった話題を取り上げています。

これらに絶対的な回答を出しているというわけでは全くないのですが、下記に挙げたような既存研究を交えて、これまで考えてきたことを共有したセッションでした。

最後には、「大学は、社会からの支援とどう向き合っていけばよいのか」ということを考えました。

これは、これから多くの方々と考えていきたいテーマです。


<英語論文>

Aaker, J. L., & Akutsu, S. (2009). Why do people give? The role of identity in giving. 
        Journal of Consumer Psychology, 19(3), 267–270. 
   https://doi.org/https://doi.org/10.1016/j.jcps.2009.05.010

Andreoni, J. (1989). Giving with Impure Altruism: Applications to Charity and Ricardian Equivalence. Journal of Political Economy, 97(6), 1447–1458. http://www.jstor.org/stable/1833247

Andreoni, J. (1990). Impure Altruism and Donations to Public Goods: A Theory of Warm-Glow Giving. The Economic Journal, 100(401), 464–477. https://doi.org/10.2307/2234133

Anisman-Razin, M., & Levontin, L. (2019). Prosocial Behavior Reframed: How Consumer Mindsets Shape Dependency-Oriented versus Autonomy-Oriented Helping. Journal of the Association for Consumer Research, 5(1), 95–105. https://doi.org/10.1086/706505

Arnett, D. B., German, S. D., & Hunt, S. D. (2003). The Identity Salience Model of Relationship Marketing Success: The Case of Nonprofit Marketing. Journal of Marketing, 67(2), 89–105. http://10.0.5.229/jmkg.67.2.89.18614

Bennett, R. (2003). Factors underlying the inclination to donate to particular types of charity. International Journal of Nonprofit and Voluntary Sector Marketing, 8(1), 12–29. https://doi.org/10.1002/nvsm.198

Chapman, C. M., Masser, B. M., & Louis, W. R. (2020). Identity motives in charitable giving: Explanations for charity preferences from a global donor survey. Psychology & Marketing, 1(15). https://doi.org/10.1002/mar.21362

Ein-Gar, D., & Levontin, L. (2013). Giving from a distance: Putting the charitable organization at the center of the donation appeal. Journal of Consumer Psychology, 23(2), 197–211. https://doi.org/10.1016/j.jcps.2012.09.002

Fiennes, C. (2017). We need a science of philanthropy. Nature, 546(7657), 187.

Hager, M. A., & Hedberg, E. C. (2016). Institutional Trust, Sector Confidence, and Charitable Giving. Journal of Nonprofit & Public Sector Marketing, 28(2), 164–184. https://doi.org/10.1080/10495142.2015.1011508

Khodakarami, F., Petersen, J. A., & Venkatesan, R. (2015). Developing Donor Relationships: The Role of the Breadth of Giving. Journal of Marketing, 79(4), 77–93. https://doi.org/10.1509/jm.14.0351

Michon, R., & Tandon, A. (2012). Emerging philanthropy markets. International Journal of Nonprofit and Voluntary Sector Marketing, 17(September), 352–362. https://doi.org/10.1002/nvsm

Petrova, M., Perez-Truglia, R., Simonov, A., & Yildirim, P. (2020). Are Political and Charitable Giving Substitutes? Evidence from the United States. National Bureau of Economic Research.

Reyniers, D., & Bhalla, R. (2013). Reluctant altruism and peer pressure in charitable giving. Judgment and Decision Making, 8(1), 7–15.

Taniguchi, H., & Marshall, G. (2014). The Effects of Social Trust and Institutional Trust on Formal Volunteering and Charitable Giving in Japan. Voluntas: International Journal of Voluntary & Nonprofit Organizations, 25(1), 150–175. http://10.0.3.239/s11266-012-9328-3

Yörük, B. K. (2013). The impact of charitable subsidies on religious giving and attendance: Evidence from panel data. Review of Economics and Statistics, 95(5), 1708–1721. https://doi.org/10.1162/REST_a_00341


<日本語論文>

岩田憲治. (2011). 補助金支給は寄付金を増やすか ―NPO のクラウディング・インと国際比較―.
Japan NPO Research Association Discussion Papers.


<日本語書籍>

吉川徹(2018)『日本の分断 切り離される非大卒若者(レッグス)たち』光文社


<インターネット上の資料>

外務省平成27年度NGO研究会(2015) 『「遺贈寄付市場におけるNGOの優位性に関する調査」報告書』https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/files/000169041.pdf 2020年10月31日アクセス

寄付白書発行研究会・日本ファンドレイジング協会(2017)『寄付白書2017インフォグラフィック』
https://jfra.jp/wp/wp-content/uploads/2017/12/2017kifuhakusho-infographic.pdf 
2020年10月31日アクセス

Goldratt Japan & TOC CLUB Japan(2019)『iPS細胞研究所のボトルネックは何か?』https://www.tocclub.net/20190704_ips.html 2020年10月25日アクセス

内閣府(2019)『特定非営利活動法人における世代交代とサービスの継続性への影響に関する調査
https://www.npo-homepage.go.jp/uploads/2019research-impact-on-generational-change-outline-explanation.pdf 2020年10月31日アクセス

文部科学省(2015)「大学における専門的職員の活用の実態把握に関する調査研究」https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/itaku/1371456.htm 
2020年9月5日アクセス

文部科学省(2020) 「我が国の大学における寄附金獲得に向けた課題に係る調査研究」https://www.mext.go.jp/content/20200721-mxt_gaigakuc3-000008906_1.pdf 
2020年10月25日アクセス



関係ないのですが最近の鴨川です。

Saturday, 17 October 2020

研究・イノベーション学会「大学ファンドレイジングを考える」(参加無料・オンライン開催)

研究・イノベーション学会の

企画セッション「大学ファンドレイジングを考える」

に登壇させていただくことになりました。

11月1日(日)18時から、参加無料でオンライン開催です。

学会の会員でない方も参加できるセッションになっています。

お申込みフォームは下記URLです。

https://ws.formzu.net/fgen/S82282970/


セッションのページは「大学を取り巻く環境は厳しい。」という言葉から始まっていますが、私はこの7年くらい、大学(いまは関連法人)で勤務してきて、寄付者の方々に、大いに励まされてきました。

寄付者の方々のご厚意には、どれだけ感謝してもし足りないくらいです。そして、多くの大学・研究機関でも、同じように寄付者の方々と組織をつなぐ役割を果たすファンドレイザーが活躍していくべきだと考えております。


日本の大学や研究機関が、寄付者の方の励ましやご支援をお借りして今の厳しい状況を変えていくには、どんな打ち手が必要なのだろうか?

その先に、大学・研究機関だからこそできる社会への貢献を実現するには、どうしたら良いのか?

支援者と大学の接点という重責をになうファンドレイザーは、何を頼りにして日々の仕事に取り組んでいけばいいのか?

これまでの寄付研究を実務に応用していくうえで、何が重要なポイントなのか?


そんなことを考えつつ、準備を進めております。

よければぜひご参加ください。

これを機に、日本の大学や研究機関におけるファンドレイジングの研究やその社会実装が進展することを祈念しております。

寄付研究に関心をもって下さった方は、ぜひ下記のような書籍も、一緒に読んでいきましょう!


「寄付を科学的に考えるための書籍リスト」

https://watanabefumitaka.blogspot.com/p/blog-page_12.html

最近行った大徳寺です。一滴が大海につながることを表現しているそうです。できることなら、自分も大海につながるような発表をしたいものです。

勉強会の内容と、寄付市場の効率性について

来週の日曜に開催する、個人的なオンライン勉強会の準備をしています。 (本日まで申し込みを受け付けております。ご希望の方は下記からご覧ください) 「寄付の『そもそも』勉強会ーチャリティって何?フィランソロピーって何?」 https://watanabefumitaka.blogsp...