Saturday 17 October 2020

研究・イノベーション学会「大学ファンドレイジングを考える」(参加無料・オンライン開催)

研究・イノベーション学会の

企画セッション「大学ファンドレイジングを考える」

に登壇させていただくことになりました。

11月1日(日)18時から、参加無料でオンライン開催です。

学会の会員でない方も参加できるセッションになっています。

お申込みフォームは下記URLです。

https://ws.formzu.net/fgen/S82282970/


セッションのページは「大学を取り巻く環境は厳しい。」という言葉から始まっていますが、私はこの7年くらい、大学(いまは関連法人)で勤務してきて、寄付者の方々に、大いに励まされてきました。

寄付者の方々のご厚意には、どれだけ感謝してもし足りないくらいです。そして、多くの大学・研究機関でも、同じように寄付者の方々と組織をつなぐ役割を果たすファンドレイザーが活躍していくべきだと考えております。


日本の大学や研究機関が、寄付者の方の励ましやご支援をお借りして今の厳しい状況を変えていくには、どんな打ち手が必要なのだろうか?

その先に、大学・研究機関だからこそできる社会への貢献を実現するには、どうしたら良いのか?

支援者と大学の接点という重責をになうファンドレイザーは、何を頼りにして日々の仕事に取り組んでいけばいいのか?

これまでの寄付研究を実務に応用していくうえで、何が重要なポイントなのか?


そんなことを考えつつ、準備を進めております。

よければぜひご参加ください。

これを機に、日本の大学や研究機関におけるファンドレイジングの研究やその社会実装が進展することを祈念しております。

寄付研究に関心をもって下さった方は、ぜひ下記のような書籍も、一緒に読んでいきましょう!


「寄付を科学的に考えるための書籍リスト」

https://watanabefumitaka.blogspot.com/p/blog-page_12.html

最近行った大徳寺です。一滴が大海につながることを表現しているそうです。できることなら、自分も大海につながるような発表をしたいものです。

Sunday 11 October 2020

寄付に関する社会心理学実験の最高におもしろい!論文を、3つご紹介

 Journal of Experimental Social Psychologyにどんな寄付関連の論文が出ているかな・・・と調べていたら、あまりにもおもしろかったので、それぞれの論文の概要から一言だけでもご紹介したいと思います。

どれもこれも、タイトルからしておもしろそうな論文ばかりですよね・・・!


実務者の方や寄付者の方には念のための注意なのですが、こうした研究は決して、普遍的にそれが当てはまるということを示しているわけではなく、「ある条件のもとで実験を設計してみたときに、被験者となった人々がそのような傾向を示した」ということを示しているものです。この記事も、絶対にこうだ、と断言するための記事では全くありません。「こんなおもしろい研究があるよ」という紹介ですので、ご理解ください。



1)

Black, J. F., & Davidai, S. (2020). Do rich people “deserve” to be rich? Charitable giving, internal attributions of wealth, and judgments of economic deservingness. Journal of Experimental Social Psychology, 90, 104011. https://doi.org/https://doi.org/10.1016/j.jesp.2020.104011

「お金のある人が寄付をすればするほど、人々は『あの人はお金を持つに値する人だ』と感じる傾向がある」という研究。

人にどう思われるか、も大切でしょうけれども、資産をもっている人自身が「自分は資産を持つに値する人だ」と感じることができるとしたら、それは心の平安につながりそうな気がしますね。


2)

Greitemeyer, T., & Sagioglou, C. (2018). When positive ends tarnish the means: The morality of nonprofit more than of for-profit organizations is tainted by the use of compliance techniques. Journal of Experimental Social Psychology76, 67–75. https://doi.org/https://doi.org/10.1016/j.jesp.2017.12.007


「企業よりも非営利組織の方が、巧みな営業手法を駆使することについて責められがち」という研究です。

実は私も、某国際協力団体のface-to-faceの寄付営業を東京駅の地下でされたときに、そのやり方が巧みかつ圧迫的だったので、一気にその団体を嫌いになった、という経験があります・・・。これが企業からの同様の手法でのアプローチだったなら、そこまで嫌いにならなかったかもしれないなと思います。


3)

Lin, S. C., Schaumberg, R. L., & Reich, T. (2016). Sidestepping the rock and the hard place: The private avoidance of prosocial requests. Journal of Experimental Social Psychology, 64, 35–40. https://doi.org/https://doi.org/10.1016/j.jesp.2016.01.011

「人々は、自分の匿名性が確保されている状態であっても、(寄付依頼等の)向社会的な依頼を受けるのを避ける」という研究です。

ファンドレイジング教育の世界では「寄付を依頼することが大事。社会を変える活動に人々を巻き込んでいこう」というような形で寄付依頼への正当化がなされるケースも見られますが、寄付依頼を受けるというのは(特定の相手へのパーソナルな依頼ではない場合でも)受ける側に心理的な負担をかけることなんだな、と思います。


まだまだたくさんあるのですが、本業の仕事、すすめなければいけない研究の傍らなのでこれくらいで今日は終わりたいと思います。


冒頭で、こうした研究が絶対的にいつでも当てはまるんだ!ということではない旨を記載しました。


むしろ、私のような実務者・研究者を兼務している者の役目としては、「それぞれの研究成果がどんな条件下ならば実務で再現する可能性が高いのか」を考え、発信したり実践したりすることだと理解しています。

そのような役割を果たすまでには全然至っていませんし、世の中は暗い話題も多い中ですが、実務と研究の架け橋になるべく、コツコツがんばろうと思います。



最後に1つ宣伝です。私の勤務先のiPS財団で、寄付募集を担当する職員(正職員)を募集しています。

ご興味を持ってくださった方は、ぜひ下記ページの「社会連携室」の求人をご覧ください!


https://www.cira-foundation.or.jp/j/recruitment-ja/index.html

『日本の寄付を科学する 利他のアカデミア入門』の執筆に参加しました

坂本治也先生編著『日本の寄付を科学する 利他のアカデミア入門』のうち、2つの章を執筆しました。 2023年12月8日が出版予定日です。11月27日現在、下記のとおりAmazonから現在予約できる状態になっています。 私は、 第10章 分野によって寄付行動に違いがあるのはなぜか? ...