『13歳からの経営の教科書』という本を読みました。
大変久しぶりなのですが、これは多くの人に読んでほしい、と思う本でしたので紹介したいと思います。
本の中身を書いてはいけない気がするので自制しておきますが、このブログを読んでおられるような、非営利組織に関わる方々にとっても、読んで全く損はない内容になっています。
今、本書の一部が試し読みできるので、ぜひご覧いただければと思います。
また、「あとがき」も公開されているので、ご一読ください。
著者のお父様は経営者であられたとのことですが、これ以上の親孝行はないだろう、と思うような名文です。
自分自身も田舎の母子家庭出身なのでまあまあ大変な人生前半を過ごしてきたと思うのですが、私が2000年代に約1年ずつ住んでいたブラジルやウガンダでは、小さい子どもや若者たちが何とか(親の力を借りずに、あるいは時には弟や妹を養いながら)サバイバルしなければならない、という状況をよく目にしました。
日本国内においても、こんな年齢の子どもがこんな苦境に陥るというのはどう考えてもおかしい、というシーンに何度も遭遇しました。主に、あしなが育英会での様々な活動での体験です。
そのような時、こんなテキストがあったならどれだけ良かっただろうか、と思います。
「食べ物にも困るような状況のなかで、経営についての教科書があっても仕方ないだろう」
そんなことを仰る方もいると思います。
たしかに、衣食住にも事欠くような状況にあっては、無償で提供されるランチや医薬品などは、極めて重要です。
学校での授業に加えて様々な労働をしながら、その日その日を何とか暮らしている子どもに「これからは誰もが経営ができるようになる必要があるのだから、経営を勉強しよう!」と言ってもかなり無理があります。
自学自習できない子ども・若者にこそ
ですから、約20年前にブラジルやウガンダにいた頃、こんなテキストがあったとして、それを直接彼ら彼女らに見せてあげたかった、とは思いません。
もしあの頃の自分がこのテキストをしっかり読んでいて、それを実践できていたら、きっと「経営」とはどういうことかを少しでも伝えられたのではないだろうか、と思うのです。
『13歳からの経営の教科書』を読んで、すくすくと経営を自学自習して実践していけるような子ども・若者は、おそらく相当に恵まれた環境の人だと思います。
ほとんどの人はそうではありません。
家庭環境が厳しい子ども・若者ほど、そんなアクロバティックな自学自習はできません。
だからこそ、回りの大人が自分の人生や活動や会社を「経営」し、子ども・若者に見せてあげたり、話してあげる必要があると思います。
私自身が高校を卒業するまで地元で暮らしていたとき、そもそも周りで知り合う大人のうち、「経営」の話をしてくれるような人はほとんどいませんでした。
そもそも、ビジネスをしている人が少なかったのです。
学校の教師か、市役所勤務か、農協勤務か、「子どもには継がせたくない」と言いながら農家をしている、という大人が多かったように記憶しています。
人口は減る一方、新たな雇用も生まれない。そんな閉塞した感覚に耐え切れずに、高校を卒業して都市に出たのでした。
ですから、私はこのテキストを多くの人に読んでほしいと思います。
特に、厳しい環境にいる子どもや若者と接する人々に読んでほしいです。
公立学校の先生。
通信制高校の先生。
児童養護施設の先生。
国際協力NGOの職員。
障がい児の療育施設の先生。
不登校の子供を支援するNPOの職員。
自治体のヤングケアラー担当の職員。
自分も時折、厳しい環境にいる子どもや若者と接しますので、経営を教えるための教科書として、この本を大切に活用させていただこうと思います。
加えて、日本の社長さんのうち女性はわずか14%あまりです。
ですから、
女の子を持つお父さん・お母さん
女子中学校・女子高校などの先生方
にも、読んでいただきたい本です。
非営利組織の「経営」を考える
こうして挙げていくと、「厳しい環境にいる子どもや若者と接する人々」は、だいたい非営利組織に所属していることがわかります。
非営利組織には、「経営」は不要でしょうか?
まさかそんなことはありません。
非営利組織やソーシャルビジネスに携わる人も、この本から学ぶことは多いと思います。
加えて、子どもたちの多くはやがて(非営利組織ではなく)民間企業で働くようになるわけですから、そのような子どもに接する人々が(民間企業を含む)経営について知っておき、それを子どもに伝えられることはとても重要だと思います。
とはいえ、多くの非営利組織の職員の方々、たとえば公立学校の先生にとっては、
「そんな時間がどこにあるのか?」
という話だと思います。
いまの仕事だけで手一杯で、そんな余裕は微塵もないという団体が多いと思います。
そのような組織にこそ、寄付の募集の方法論であるファンドレイジング(特に、経験やカンに依存したものではなく科学的なファンドレイジング)を習得をいただいて、「ゆとり」をつくりだしてほしいと思います。
(現実には、ファンドレイジングに時間や労力を投資しない、という組織も多くあります。
そのような組織は、行動に移すだけの危機感を抱いていないのか、リスクを恐れているか、その両方か、あるいは他の理由があるのか、それは私自身が研究で少しずつ明らかにしていきたいところです)
ファンドレイジングには、非営利組織の「経営」の自由度を大きく高める効果があります。
願わくば、
このブログ記事が1人でも多くの大人に届き、
『13歳からの経営の教科書』が1冊でも多く売れて、
その人が「経営」を実践する姿や話が
厳しい環境にある若者や子どもにチャンスを与える、
という状況が生まれてほしいと、強く思います。
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