2020年4月26日日曜日

大学・専門学校・病院等が寄付の募集をスタートする際の段取りとチェックリスト

COVID-19の影響で寄付募集に取り組むことになる人のために、本記事を執筆することにしました。
(最終更新:2022年10月20日)


私は大学に入った2000年からボランティアベースであしなが学生募金等の寄付募集キャンペーンに携わり、その後企業のマーケティング担当として勤務しながら、プロボノ(専門性を活かしたボランティア)などとしてNPOの寄付募集に従事し、その後国立大学での部局基金の募集に6年半ほど携わりました。現在は、大学院博士後期課程(経営科学専攻)で寄付募集について研究しています。

「寄付募集をスタートしたい」という他大学からの講演・研修を依頼されることも多く、短期兼業として対応させて頂いていました。

そのたびに、ゼロから寄付募集の体制を作ることの大変さを実感してきました。

しかし、ポイントを押さえて準備を行い、適切な募集活動を行うことで、多くの方々からあたたかい支援が得られ、集まった資金によって非常に大きな貢献が果たされることもあります。


COVID-19の影響を受けた非営利組織にとって寄付は重要な財源になりえる


現在、COVID-19の影響でアルバイト先がなくなる等の理由で、大学生が困窮しています。

複数の大学が、大学生の困窮に対応するため、またオンライン授業環境を整えるために学生に対して資金援助を行うとともに、寄付を募っています。

また、病院でも、多数の患者を受け入れて資金的に厳しい運営を強いられる場合、逆に患者数が減少したことで資金難に陥る場合が想定され、寄付募集を開始することも想定されます。

(寄付募集は、団体側が「始めよう!」と思ってスタートする場合もあれば、「寄付をしたい」というお申し出を頂くことでスタートする場合もあります。当然ながら後者の方が準備はバタバタしやすく、オペレーションの負荷がかかりやすいです)

民間の非営利組織(NPO法人など)ではもっとスピーディに、見切り発車ができることもあるかと思いますが、大学・専門学校・病院・福祉施設・美術館・博物館・図書館等では公的な組織としての説明責任を果たす必要があったり、リスク管理に対する配慮が必要であったりと、慎重な対応をしておくに越したことはないかと思います。

寄付募集をスタートするための段取りとチェックリスト


今後、より多くの組織が寄付を募る必要が出てくる場合に備えて、段取りとチェックリストを提供しようと思います。

日本では、まだ寄付募集の専門職である「ファンドレイザー」は少ないのが現状です。

総務や広報の部門の方が、ある日突然、寄付の担当もしなければならなくなるかもしれません。

そんな方のお役に立てば幸いです。

自分の経験とこれまでに学んだ書籍などから記憶に頼る形で記載していますので、順次思い出したことを追記していきたいと思います。

1)団体として、寄付を募集しはじめるという意思決定を行うための準備

寄付募集のスタートにあたっては、下記のような内容が網羅された企画書を理事会などに提出して寄付募集の開始可否を意思決定することになると思います。

これらはすべて1回の会議で決まることではなく、まず実施の方針が決まり、その後詳しい内容を付議するということもあり得ます。

寄付者のニーズと組織のニーズ(生徒の退学を予防したい、等)がマッチするよう、非営利組織マーケティングやファンドレイジングの書籍を読んで参考にしながら企画を立てられると良いと思います(が、そのような余裕がないことも多いと思います)。

決して、下記をすべて網羅するべき、というわけではありませんし、漏れている点もあるかもしれません。


<寄付募集そのものの企画>
・類似団体の事例、これまでにあった寄付や、寄付に関する問合せの情報
 (社会のニーズや、他の組織の状況を把握)

・寄付の使い道についての案と目標寄付額
 (団体内のニーズ。公的な資金ではできない○○に活用する、COVID-19の影響で必要になった○○に使うなど)

・寄付の受け入れ方法
 (寄付申込書提出後の銀行振込、オンライン決済、専用振込用紙など。
  クラウドファンディングも良いが経費がかかること、寄付者の個人情報が入らない場合があること等に留意)

・一口を何円以上にするか
 (オンライン決済フォームの仕様によって決まっていることもある)

・寄付者が受けられる税控除の情報

・寄付募集期間の案

・寄付を募る際の周知広報活動や告知先の案
 (メディアへの発表方法、同窓会への依頼など。概算費用もわかるとよい)

・寄付募集の趣意書の案
 (誰の名前で、どのような説明で社会に呼びかけるのか)

・組織内における寄付金の取扱規程の確認
 (もし存在しない場合は規程の整備)

<寄付を受けた後の対応>
・寄付の受け入れ決定の責任者または会議体、使い道の変更等の際の会議体はどれか

・寄付者への御礼の案
 (返礼品ありの場合、法的・倫理的に問題ない範囲になっているか等)

・寄付の活用状況の報告と寄付額の公表方法の案
 (ホームページで公表する、ニュースレターに掲載する、寄付者に郵送する等)


<組織体制>
・寄付者対応にあたる人員の確保見込みに関する情報
 (最低2名、専従が望ましいが兼務でスタートすることも多いのが現状)

・寄付の会計上の処理方法と経理部門の体制

・寄付に関する規程との整合性、必要な規程の整備状況
 (知らずに規程違反をしたり、恣意的な運営になることを避ける。プライバシーポリシーや文書管理規程も確認)

・非常に大きな額の寄付があった際に理事長や副理事長などがどのように御礼を行うかの案
 (電話で御礼する、感謝状に直筆でサインをする等)


<リスク管理>
・(特殊なケースや前例のないケースのみ)関連する通知や適法性に関するチェック状況

・物品寄付、有価証券や不動産の寄付を受け入れるかどうかのポリシー
 (物品寄付は検品や保管場所の確保などに手間がかかり、多く寄せられると対応に苦慮することもある)

・返金ポリシー
 (過誤入金の時は返金する、「気が変わった」では返金しない等を規程等に照らして決めておく)

・受け入れ辞退になるケース、トラブル時の相談先(顧問弁護士等)
 (利害関係者からの寄付、反社会的勢力と疑われるケースの対応などを予め決めておく)


2)実際に寄付を受け入れ始めることになった際の準備

組織としての決裁が下りた後も、実際に寄付を受け入れ始めるまでには、多くの準備を要します。

寄付検討者に対して良い対応ができず、「せっかく寄付しようと思ったのに、残念だ」と言われてしまうことのないようにしたいものです。

・寄付の申込書、感謝状、受領証などのテンプレート準備
 (他の部門で受け入れをしている場合は参考にさせてもらう)

・寄付の窓口部署(広報・総務などになることが多い)と経理部署での打ち合わせ
 -入金確認の方法と頻度
 -受領証の写しはどこの部署がどう保管するか
 -受領証はどこの部署からどう送るか、同封する書類は 等

・寄付呼びかけ文の作成

・寄付受け入れに必要なチャネルの確認、追加
 (寄付受け入れ用の銀行口座の確認、オンライン決済システムの契約など)

・寄付者の情報を保管するデータベースの検討、確保

・寄付募集ページの原稿準備、寄付募集開始のお知らせ文案の作成

・寄付募集に使うチラシの作成、印刷

・よくある質問集(FAQ)の準備、担当職員と共有
 (寄付をしたいと電話があったらどう回答するか、税控除について聞かれたら、等を整理)

・寄付に関するお問い合わせに対応する職員との打ち合わせ・研修
 (すでに寄付を募っている他の部局や組織から人を招いて打ち合わせや質問をする等)

・トラブル時に相談する顧問弁護士等へのあいさつ(電話やメール等でも)

3)寄付募集活動を充実させるための取り組み

・寄付者や寄付検討者の問い合わせに確実・迅速に対応できるよう、担当者を増員する

・NPOなどで寄付募集の経験のある人を採用する、寄付募集のコンサルタントに支援を依頼する

・日本ファンドレイジング協会などの研修を受けて自分たちの戦略を見直す

・マーケティング戦略を再度検討してみる

・遺贈寄付、相続財産の寄付について学習し、パンフレット等で受け入れを拡大する

・寄付の周知広報から受け入れ、寄付への御礼までのプロセスでボトルネックになっている箇所がどこかを検討して見直す

・寄付者にとっての利便性を高めるために、寄付受け入れチャネルを追加する(Amazon Pay等)


よくある失敗や苦境

・十分な人員が手当てされず、寄付検討者に適切な対応ができずクレームになる

・大きな額の寄付を振り込んだにも関わらず、入金確認連絡がないため寄付者が不安になる

・反社会的勢力や、見返りを求めての利害関係者からの寄付など、適切でない寄付を受け入れてしまう

・寄付の活用に関する意思決定フローが整備されておらず、寄付が適切に利用されない

・十分な寄付額が集まったにも関わらず寄付募集が継続され、寄付金が余ってしまう

・寄付募集の専門性を持つ人材を雇用せず、寄付が十分に集まらない


これらは、発生しないに越したことはない失敗や苦境です。

ぜひ、寄付募集に早くから取り組んでいる他の組織を参考に、先人と同じ轍を踏まないようにしていただきたいものです。

取り急ぎ、思いついたことを書き連ねてみました。

皆様の寄付募集活動が多くの善意を集め、大変な思いをしている人々の力になることを心から祈っております!

(寄付研究ノートも、3冊目になりました!)




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2020年4月19日日曜日

ハーバード大学の博士学生向けキャリア支援資料(200ページ!)が無料ですごい

博士後期課程に進むということで、世の中にはどのような博士学生向け資料があるのか、を調べてみました。

その中で見つけた、ハーバード大学の博士学生向けのキャリア支援資料がすさまじく充実していたので、共有します。

・アカデミックな職業の概要
・採択されたフェローシップ提案書とフェローシップ経歴書の見本
・学生と教員のアドバイス関係を最大限に活用する方法
・博士論文のテーマ決定から締め切りに間に合わせるためのポイント
・博士論文を書籍として出版のための方法
・大学等での仕事を獲得するための面接のポイント
・モデルとなる履歴書、履歴書、カバーレターの例

などが惜しげもなく、200ページ以上にわたって公開されています。


この資料はざっと読んでみたのですが、日本で博士課程を過ごす上でも非常に役立つと思いました。英語の勉強にもなります。



また、Natureが世界の5700人もの(理系の)博士課程学生に対して行った調査では、博士課程学生が直面する課題などが列挙されており、これも参考になります。


『好きすぎてつらい博士課程』


研究や博士課程について学べる有償の書籍では、下記のようなものがあります。
両方読んだのですが、本当に役立ちました。



 


  


・研究はそもそも「不確実なもの」ではあるけれど、そのマネジメントを放棄してしまうのは誰のためにもならない

・研究を「勉強」と峻別し、仕事として捉えて、戦略をもって進めていく

・研究を育てるための方法論や先人の経験を学ぶとともに、自分をコントロールする必要がある

・仕事の効率を上げるソフトウェア等も積極的に活用すべき

ということを学びました。

(ソフトウェアでいうと、学士・修士のころは知らなかったMendeleyというものがあります。
 無料の文献管理ソフトで、非常に便利です。
 東京大学が、その使い方の資料を公開しています)

こうした経験は、研究を支援する職員(研究支援者)としての仕事にも役立ちそうです。



COVID-19の影響で、今後の社会が見通しにくくなっていますが、そのような中でも(研究支援者としての道の傍らではありますが)学問の道をコツコツ進んでいきたいと思います。





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2020年4月12日日曜日

団体の目指す理想によって、寄付呼びかけにおける効果的な「感情」は異なるが・・・

かつて、私はNPOのコンサルティングに携わっていました。

そのようなとき、

「今の日本の社会情勢だと、この分野の活動には共感を得にくいな・・・」

というような団体に出会ったりして、無力感を抱いていたものでした。

そんな自分にとって、下記の論文は衝撃的なものでした。



「寄付を集めやすい団体、集めにくい団体がある」ということはよく指摘されています。
つい最近、下記のようなツイートも見かけました。




そのような中、上記論文は、

その団体がどんな道徳的価値の実現を目指しているかによって、「寄付を募る際に、どんな感情を引き起こすような訴求を行うべきか」が異なる

ということをフィールド実験と実験室実験の両面から実証したものです。

具体的には、様々な道徳的価値のうち、Care(ケア:弱い立場にある人への支援)を実現しようとする団体にはCompassion(慈善)Fairness(公平:人々が等しい権利を得られること)を実現しようとする団体にはGratitude(感謝)を引き起こすようなキャンペーンが有効であるということを実証しています。

Abstract(概要)だけでも、多くのファンドレイザーや、ファンドレイジングコンサルタントに読んでいただきたいと思います。

きっと、これまで「寄付が集めにくい」と思われていた分野でも、より多くの人に理解・共感してもらえるメッセージづくりに役立つだろうと想像しています。

ただ、そのうえで、このように

自団体の利益(例えば寄付の増加)になるよう、寄付検討者に、ある感情を抱いてもらうべく作為的にコミュニケーションすること

が、ファンドレイジング活動においてどれくらい正当化されうるのか?

という問題についても考え、議論していきたいと思います。

(極端な例ですが、とにかく悲惨な写真を使うことで「悲しみ」の感情を引き起こし、注目を集めてクリック率を高めるという手法は倫理的に問題があると思います)

この論文が載っている雑誌はJournal of Consumer Researchという雑誌ですが、マーケティング研究者の寄付研究への貢献も近年大きくなってきているので、研究の流れをこれからも追いかけていこうと思います。


すっかり外出自粛生活で、カフェでコーヒーを飲めたころが懐かしいですね・・・。



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2020年4月11日土曜日

Google Scholarで「書評」と検索してみよう!

このブログでは前回も、外出がままならない中で、自宅でできる勉強・研究(おもに寄付の分野)の方法を紹介しております。


今回は、
  • ある分野に興味があって調べてみたい
  • でも論文を読むほどの知識はまだない
  • 専門書は高いしどれを読めば分からない

という方は

Google Scholarで「書評 (分野名等)」と検索すると良いですよ!

というお話。

通販サイトのレビューよりも、かなり有意義な情報に触れられます。


たとえば、「行動経済学」の書評を調べると


たとえば、「書評 行動経済学」で検索するとこのような検索結果が出てきます。

書評は多くが無料で読み放題!!

検索結果の1つを見てみましょう。


ページでは、ざっとこの書籍の内容が概観できるほか、書評を書いている研究者の視点から、この書籍がどういう意味合いを持つ本であるか、が読み取れます。

この書評では、

「経済的差別」というような、現代社会を眺めるときに知っておきたいキーワードのほか、

「フィールド実験」
「マッチングギフト」
「シードマネー」
「暖かな光」

など、寄付研究にとって重要なキーワードがどのようにこの書籍で紹介されているのか、事前にわかります。

kindleでも売っているので、実物を読みたい方は下記からどうぞ・・・!




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2020年4月4日土曜日

外出せずに今読める!研究者を目指そうか迷っている人(とファンドレイザー)のための無料資料・書籍など

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が猛威を振るっている今ですので、できるだけ出歩かずに、自宅で過ごしている方も多いと思います。(今こそそうするべき時だと思います)

COVID-19の対応で様々な分野の研究者の方々が奮闘されている姿を見て、科学的にデータから言えることを見出していく「研究者」という仕事にあこがれを抱く学生さんがいてほしい・・・!と願いながら、テレビやインターネットを眺めております。

さて、今回はそのような「研究者を目指そうか迷っている人」にとってぴったりの、無料で公開されている資料や、有償だけれど外出せず今すぐ買えるKindle本を紹介しようと思います。

ちなみに、産学連携が進むにつれて、研究者と企業人が仕事をすることが増えていると思いますが、これらの資料は「研究者がどんな責任を負っているのか」「なぜこの人たちは研究者をしているのか」を知りたい共同研究相手先の企業人や、研究者を顧客として仕事をする企業人、大学の新人職員や専門職員(私のように、ファンドレイジングの専門性はあるが大学や研究についての知識はなかった人など)にもおすすめです。

巣ごもり生活のおともに、どうぞ。
後半部分が、ファンドレイザーに役立つ、寄付研究の無料資料です。

『科学の健全な発展のためにー誠実な科学者の心得ー』

研究者を目指す人向けのテキストです。なんと無料公開。
「研究で絶対やってはいけないこと」が良くわかります。
また、博士・修士まで進むか迷っている学部生の方には、「研究の仕事」がイメージできて良いと思います。

内容の一部を、ご紹介します。

・研究の価値と責任
・研究の自由と守るべきもの
・利益相反
・インフォームドコンセント
・個人情報の保護
・優れたラボノートとは
・研究不正行為の定義
・(チームで研究を行う際などの)中心となる科学者の責任
・マスメディアを通じた研究成果の発信
・誰を著者とすべきか
・「サラミ出版」とは
・共同研究をどう進めるか
・研究費を適切に使用する
・査読者の役割と責任
・後進の指導
・科学者と社会の対話

「ああ、なるほど研究者はこういう責任を負って仕事をしているのか・・・」と、研究者の気持ちが少しわかるようになる、そんな資料です。
無料なので、ぜひ多くの方にご覧いただきたい。


次に紹介するのはこちら。


Kindle版なので、本屋さんに行かずに買えます。
こちらは、明るいトーンで、研究のおもしろさ、大変さ、ロマンを教えてくれる本です。

著者の先生の「臨床医をしながら研究もする」という生活のなかで、いかに研究時間をひねり出すか?という部分は、私のように実務者と研究者の二足の草鞋を目指す人間にとっては非常に勉強になります。


「寄付研究」を目指す学生さんやファンドレイザーの方へ


さて、寄付研究者を目指す方への資料は、下記にまとめてありますが、無料でもなくKindleで今読めるわけではありませんし、そもそも「目指す」という段階で読むと心が折れること間違いなしです・・・。


なので、「寄付研究っておもしろい!」と思ってもらえそうで、無料公開のものをチョイスしました。

1つはこちら。
行動経済学の観点から、マッチングギフトと寄付控除、どっちが寄付行動を促進する効果が高いのか?を検証した研究のプログレスレポートです。日本を代表する行動経済学者の方々によるもので、私もこの先生方の著書や論文、人となりに引き付けられて行動経済学に関心を持ちました。

佐々木周作, 黒川博文, & 大竹文雄. (2019). 寄付金控除 vs マッチング寄付: 日本の寄付税制の行動経済学的実験研究 (プログレス・レポート). 行動経済学, 12(Special_issue), S18-S21.



もう1つは、こちら。
ファンドレイジングに役立つ論文を探していた過去の自分に読ませたいくらい、ファンドレイジングに携わっている人にとっては本当に価値ある、かなり幅広く寄付について論じている研究です。

石田祐・奥山尚子(2012)『地域福祉を支える寄付の仕組みに関する研究』全労済協会, 公募研究シリーズ, no.21, 83p.

上記2つは、寄付研究に関心のある学生さんとファンドレイザーの方は、だまされたと思って、ぜひ読んでいただきたい!!!


では、本日はこのあたりで。

これから博士後期課程のコースワークが始まるので、こんなにブログなど書いていられなくなりそうですが、がんばります。



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2020年3月29日日曜日

卓越したNPOになるために:サービスマーケティングとは?

前回の記事では、寄付者は「寄付の効果」で寄付先を選ぶべきか、「自分の好み」で選ぶべきか?というような議論について紹介しました。

一方で、寄付先を「誰かからのおすすめ・紹介」で選ぶことも想定されます。

自分だったら、と考えると、やはり寄付先として人に勧めやすいのは、

・きちんとした寄付者対応ができること

・卓越した活動を行っていること

だろうな、と思います。
ところが現実的には、

・寄付募集や寄付者対応は非常に力を入れており巧みである

・卓越した活動をしているかどうかはよくわからない

という団体もあります。

(これはNPOの世界だけに見られる現象ではなく、製品やサービスの質はともかく、営業やマーケティングが非常に巧みである民間企業が存在することからも、ごく普通のことだと思われます。特に、顧客の多くが一度きりしかその企業から購買しないような状況下では、顧客にリピート購買をしてもらうための製品・サービス品質向上努力が二の次になってしまうことが考えられます)

マーケティングをNPOが使う、3つ目の方向性


私は10年くらい前から、マーケティングという方法論をNPOで働く方々に研修やセミナー、コンサルティングのような形で提供してきたのですが、これまでは、主に下記の2つの方向性があると理解してきました。

1)NPOが、寄付者に向けてマーケティングを行う

NPOへの寄付者向けのマーケティングは、「ファンドレイジング」という言葉と重なる部分があります。このファンドレイジングという言葉は、日本ファンドレイジング協会の方々の活躍もあってこの10年でかなり知られるようになってきたと思います。

マーケティングの視点で自分たちや寄付者、その間の関係を見つめることで、多くのNPOが寄付体験をより良いものにしてきたと思います。また、ファンドレイジングという言葉の普及も、寄付を募ることの重要性や効果、その社会的責任をNPOが理解し、実践する上
で非常に重要だったと考えています。

2)NPOが、受益者に向けてマーケティングを行う


一方、NPOの受益者向けには、「ソーシャル・マーケティング」という分野があり、私は大学の頃はエイズ予防などを題材にこちらについても学んでいました。

これは受益者の「行動変容」を目的としており、NPOにとって、受益者の行動変容をどうやって促すか、という視点で役立ってきたと思います。残念ながら、日本ではソーシャルメディアによるマーケティングと混同されるなど、必ずしも認知度が高くないかもしれません。

近年は、行動経済学のNudge(ナッジ)という概念が注目されていますが、今後のソーシャルマーケティングは行動経済学の知見も取り込んで、より効果的なものになっていくことが期待されます。
(まさに今、コロナウイルス感染症への対策で求められているのも、このソーシャルマーケティングです)

3)NPOが、自らの事業を「サービス」ととらえてマーケティングを行う

そのような中で、これから自分が学び、NPOに対して提供していきたいのが、サービス・マーケティングという分野です。

私はこれまで、上記の1)と2)のマーケティングには携わっていたのですが、どうもNPOの活動そのものを、わかりやすく世間に理解してもらうことが十分にできてこなかった気がします。また、冒頭で挙げたような、「卓越したサービスを行うNPO」をマーケティングの力でつくりだしてこれたかというと、非常に反省しているところです。

そこで今後、大学院では、この「サービス・マーケティング」という視点も交えて、非営利組織を見つめてみたいと考えています。

サービス・マーケティングとは

製品の販売と、サービスの販売は様々な面で異なります。
サービスは、GDPのうちますます大きな割合を占めるようになってきています。

いわゆる「サービス業」だけがサービスマーケティングの対象であるわけではなく、様々な企業が「顧客接点」をサービスとしてとらえています。(たとえば、医療の世界においても、患者さんとの接点は「サービス」ととらえることができます)

サービスの特徴として、

1)無形性 サービスには形がない
2)同時性 サービスは、その生産と消費が同時に行われる
3)異質性 サービスはその提供者によって品質が大きく異なる
 (また、受ける側によっても受け取り方が大きく異なる)
4)貯蔵不可能性 サービスは貯蔵しておくことができない

などが指摘されています。

また、コトラーはサービスマーケティングミックスとして、4P(商品、価格、流通、販促)に加えて、3Pの重要性を指摘しました。

Personnel(人・要員)

顧客に接する人・要員は、仮にそれが業務委託先や取引先であっても、顧客からみると関係がないことも多く、それを踏まえて手を打つ必要があります。NPOにおいては、ボランティアマネジメントや職員への教育がこれに含まれます。

Process(プロセス)

上記で触れた「サービスの異質性」を踏まえ、より効果的な顧客対応を行うための業務プロセス・販売プロセスの検討が必要となります。業務プロセスを分析してより良い対応を行っているNPOは、この点を踏まえていると言えます。

Physical Evidence(物的な証拠)

サービスの無形性を踏まえ、期待を形成することや品質を可視化することを目的に物的な要素を用いること(ユニフォームや品質保証書など)を指します。NPOでは、お揃いのTシャツ等で活動への参加意識を持ってもらったり、といったことが行われていることもありますが、この部分はまだまだ活用のしがいがありそうです。

こうしたサービスマーケティングについては、下記の書籍が入門としておすすめです。



『サービス・マーケティング入門』


サービスマーケティング、一緒に学びましょう

私はこれまでのキャリアで、ソーシャルマーケティング(エイズ予防、環境対策)、法人向けマーケティング、ウェブマーケティング、ファンドレイジング等に携わってきたのですが、サービスマーケティングは全くの素人です。ましてや、NPOにそれをどうやって活用するのか、については完全にこれからです。

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2020年3月20日金曜日

寄付者にとって、「寄付の効果」と「自分の好み」のどちらが大切?

先日、近しい人が亡くなりました。がんでした。

新しい医学を目指す研究を支援する仕事についていながら、何もできなかったな、という思いを噛み締めています。

大学のファンドレイジング(寄付募集)担当者という仕事柄、高齢の寄付者の方の、訃報を受けることもあります。

医学研究の成果に期待されている闘病中の寄付者から、「何でもっと早くできないんだ!」と叱責を受けることもあります。


自分達のチームが寄付者の方々からお預かりした寄付を、研究者にどう使ってもらえば最も研究が進むのか?

もっと良い活用方法がなかったか?


当然ながら、寄付をどう活用するか考え抜いた上で「使途(使い道)」が設定されているわけですが、それでも、もっと研究に貢献する画期的な使い道はないのか?と考えてしまいます。

寄付の「効果的な使い道」についての研究がもっと必要


私がざっと検索・調査した範囲では、これまでの寄付研究は「人はぜ寄付をするのか」や「寄付を増やすにはどうするべきか」という問題意識のものが多く、「寄付をどう活用するか」というものはあまり多く見つかりませんでした。

著名な科学誌である『Nature』では、下記のように「寄付の有効な使い方についてのエビデンスがもっと必要だ」という記事が載ったこともあります。

https://www.nature.com/news/we-need-a-science-of-philanthropy-1.22100

近年、Effective philanthropy(効果的な慈善活動), effective altruism(効果的な利他主義)という主張が哲学や倫理学の分野から生まれてきています。

また、2019年のノーベル経済学賞は、(財源は寄付とは限りませんが)貧困の削減に対して実証的に取り組む研究が脚光を浴びており、こうした手法の応用も期待されるところです。

https://www.newsweekjapan.jp/amp/stories/world/2019/10/post-13229.php?page=1


寄付者にとっては、「寄付の効果」よりも「自分の好み」?

しかし、こうした研究の成果がファンドレイジングの実務に活かされているかというと、(ごく限られたケースを除くと)そうでもない、というのが日本の寄付募集の現状だと認識しています。

現に、寄付は(その寄付先や使い道が効果的であるかどうかよりも)個人的な好みで意思決定される傾向があるという研究もあります。

https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/0956797617747648

つまり、

・どうやって寄付の効果的な使い道をつくりだすことができるか
・それを寄付者の方々が好むかどうか
・それを好んでもらえるようにファンドレイザーはどうコミュニケーションすべきか

という3点が、重要な課題であると考えています。

私が博士後期課程で経営学(マーケティング)を選んだのは、科学的な研究をしたいということに加え、様々な研究成果を現場に活かす力をつけたいという考えがあってのことでした。

マーケティングは、顧客中心の考え方です。どんなに効果的な寄付の使い道であっても、それを(顧客である)寄付者が好まなければ、広がっていくことはないだろうと思います。

今回のコロナウイルス感染症のパンデミックにおいても、集められた寄付がどう使われるべきか、どうすればもっと多くの人の命を救えるのか、といった課題の検討は急務だと思います。


この分野に少しでも多くの人が関心を持ってくださり、議論が進むことを願っています。


それではまたー。










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ファンドレイジング・アクションリサーチ研究会のオリエンテーションについて

 非営利組織における、ファンドレイジング(寄付募集)の研究をしております渡邉文隆と申します。 このたび、日本パブリックリレーションズ学会の研究会のひとつとして、ファンドレイジング・アクションリサーチ研究会というものを開催します。 これは、ファンドレイジング活動の改善と、論文執筆に...