2022年6月11日土曜日

全国レガシーギフト協会「第14回遺贈寄付サロン」に登壇します

遺言書(ゆいごんしょ)による寄付を,遺贈(いぞう)と言います.

この遺贈について普及啓発を行っている全国レガシーギフト協会の「遺贈寄付サロン」という場に登壇することになりましたので,お知らせいたします.

演題:iPS財団のファンドレイジング~効果的な寄付募集、スムーズな遺贈寄付の受け入れのために~

講師:iPS財団 社会連携室の山本・渡邉が登壇します.

日時:2022年6月17日(金)※申し込み締切:6/16の12時だそうです.

場所:zoomでのオンライン開催

参加費・詳細:下記ページをご覧ください.

https://izoukifusalon14.peatix.com/view?fbclid=IwAR0a6tnt8rUS3_h8QQplOBLUc4tExdDPFkr-e7eJKm8HXxfFkdtMEo_zF4A


当日,私の方からは寄付募集・遺贈仲介に役立つ論文の解説も行います.

そのうちの1つは,下記論文を予定しています.

Cui, J., Pan, Q., Qian, Q., He, M., & Sun, Q. (2013). A multi-agent dynamic model based on different kinds of bequests. Physica A: Statistical Mechanics and Its Applications, 392(6), 1393–1397. https://doi.org/10.1016/j.physa.2012.11.021

「相続人1人への相続」と「全額をNPOへ遺贈」という2つの選択肢を用意し,前者を取る遺贈者の割合を変化させていくというシミュレーションによる研究です.

遺贈が社会に与える影響,特にその平等さに与えるインパクトを理解するのに有益だと考えます.相続人1人への相続が,社会における財産の格差を助長していくことがわかります.

統計力学という聞きなれない分野の雑誌に載っていた論文ですが,こういうシミュレーションに基づく研究もたいへん有益だなと思った次第です.


では,皆様にお会いできるのを楽しみにしております.


博士課程最終年度、指導教官や査読者の先生に揉まれながら過ごしています。


2022年4月5日火曜日

寄付と税制についての専門書がいまKindleで0円/ウクライナ関連の寄付によって他団体への寄付は減るのか

寄付と税制について専門的に勉強したい方へに最高に参考になるこちらの最新の洋書、Kindle版がなぜかいま(2022年4月5日現在)0円です。

キャンペーンなのでしょうか・・?

ともあれ、寄付・非営利組織・税制といったテーマに関心のある方には本当におすすめなのでブログでも掲載しました。

The Routledge Handbook of Taxation and Philanthropy


3月は実務も研究も大変忙しく、ブログを更新する時間が取れませんでしたので、4月でなんとか2本アップして、月に1本ペースを取り返したいところです。


ウクライナ関連のニュースがここ1か月くらいメディアを席巻しており、驚きと悲しみを抱きながら日々を送っている方も多いと思います。

私も現地の様子を注視しつつ、しかし自分の仕事をコツコツすることを目指そうと思っています。


非営利組織の方々はウクライナに関して緊急的な寄付募集キャンペーンを開始していたりして、本当に頭が下がります。

一方で、こんなつぶやきもTwitter上で見かけたりしました。

非営利組織が寄付をめぐって繰り広げる競争は、とてもおもしろいテーマだと思っていまして、上記の書籍のChapter18がそのテーマを扱っています。

例えば、

必ずしもパフォーマンスの高い寄付先団体に寄付が流れていくとは限らない

とか、

民間企業の市場と違って価格競争が起きない

とか、

税制による後押しによってより効率的な選択を促せるのかどうか

といった、非常に重要な議論が展開されています。

寄付募集をめぐる「競争」を考える

競争戦略で有名なポーター先生は、最近の書籍で、フィランソロピーと競争について取り上げています。


寄付募集に携わっている友人知人を思い浮かべると、あまり競争を好まない人が多いのかも・・・と思ったりするのですが、この本の中では競争というものは非常にポジティブにとらえられており、競争があることで質の良い活動が世の中に提供されていく、ということが指摘されています。

(個人的にも、小さい頃から自分は「競争」と呼ばれるものであまり勝った記憶がなく、競争と言えば負けるもの、できれば避けたいもの、というイメージがあります…)

逆に言うと、寄付をめぐっての健全な競争が起きる環境をどうつくるか、が重要ということになるわけですが、これが非常に難しく、またホットなテーマだと思います。

「ウクライナへの寄付との競争が生まれることによって、他団体への寄付は減るのでしょうか?」

という点が気になるわけですが、先行研究では矛盾した結果が報告されており、実はこれはまだ答えがよくわかっていない問いのようです。

このテーマは、「Altruism Budget(利他的予算)は固定的なのか、可変的なのか?」という問いとして議論されています。

[1] L. K. Gee and J. Meer, “The Altruism Budget: Measuring and Encouraging Charitable Giving,” Natl. Bur. Econ. Res. Work. Pap. Ser., vol. No. 25938, 2019, doi: 10.3386/w25938. https://www.nber.org/papers/w25938


私はどちらかというとマーケティング・経営学の研究に携わっている上に、上記のとおり競争をうまく避けることの方に(性格的に)関心があるので、競争が質の向上を生み出すということを意識しつつではあるものの、

「緊急的な寄付と、長期的な寄付の両方に対して人々が関心を持ってくれるようにするにはどうしたらいいのだろうか」

「ある団体の寄付募集が、他の団体と競合する度合いを下げるためには、どうすればよいのか」

ということを、この機会に考えています。

いつもと同じように、仕事や研究ができることのありがたみを感じるこのごろです。

そして、戦争を防ぐための平時からの努力として、人文科学や教育がいかに大切かを痛感しています。

それぞれの場所で、コツコツがんばりましょう。

2022年2月20日日曜日

FRJ2022「数字で見る日本寄付市場の過去・現在・未来」の概要と,文献リスト

(2022年2月21日追記:当日のお話の概要を記載し,タイトルを少し変更しました)

FRJ2022(ファンドレイジング・ジャパン2022)でのセッション「数字で見る 日本寄付市場の過去・現在・未来~事例紹介:iPS財団のファンドレイジングを支える3つの考え方~」(2022年2月19日)にご参加くださった皆様,本当にありがとうございました.

当日は,前半がエニシフルコンサルティングさんのGOEN寄付データからの様々な情報,後半が事例としての私の勤務先のファンドレイジング活動の話でした.

このブログ記事では,私のお話(後半部分)の概要をご説明します.

私からは,これまでのファンドレイジング活動で自分が考えていた3つのポイントとして,

・先行研究を読む

・市場志向で考える

・制約を観察する

といった,少し抽象度の高い(その代わりおそらくは様々な組織に当てはまるであろう)話をさせていただきました.まとめとしては,
・事例(質的データ)
・寄付白書等の量的データ
・先行研究からの理論
・現場の状態の観察

を組み合わせて仮説(こういう行動をしたらこういう結果が出る)をつくり,
その行動をしてみて効果をみる

というような話をさせていただきました.

今こうして振り返ると,「そりゃ当たり前だろう・・・」「口で言うのは簡単だけど・・・」というような内容になっていてちょっと反省するのですが,2000年から寄付募集活動に携わっていて,毎年前進したいと思ってもがいていると,やはり凡事徹底に落ち着いてしまうのかなとも思います.


当日は,200人以上の方々にご参加いただき,大変ありがたく思いました.お声がけくださったエニシフルコンサルティングさんにも深く感謝申し上げます.

下記が,当日ご紹介していた論文や書籍のリストです.基本的には,研究を行うなかで出会った文献ですが,いずれも実務にとって非常に大きな示唆がありました.

これらの文献との出会いが,ファンドレイジングの研究や実務に取り組む方にとって,何かのヒントになれば幸いです.

各文献の詳細情報は末尾に記載するとして,さらっと紹介しようと思います.


1)Market orientation in the top 200 British charity organizations and its impact on their performance

イギリスの非営利組織が,どれくらい「市場志向」なのかを測定した研究です.直近5年くらいで,市場志向の団体が増えてきたとのこと.市場志向は分野によって強い弱いということはなかったそうですが,大きくて部門が多い団体よりは,小規模な団体が寄付市場志向であるということが観察されました.寄付市場志向は,実際の効果が出るまで時間がかかるようです.


2)Identity motives in charitable giving: Explanations for charity preferences from a global donor survey

117か国の1,849人が,どのように寄付先を選んでおり,そこにアイデンティティがどう関わっているかを調べた研究です.アイデンティティが寄付行動に影響するという研究は非常に多いのですが,日本でもそうなのか?というのはちょっと疑問でした.その点,このような国際的な調査は説得力があります.


3)Strategic Giving: The Art and Science of Philanthropy

この本は,主に米国の財団や篤志家など,寄付を行う側も意識して書かれた書籍で,寄付をするにあたって,より良い意思決定をするための手がかりが豊富に含まれています.CharityとPhilanthropyを分けて考える考え方があるというのもこの書籍に書かれていますが,本当はもっと紹介したい有意義な内容があります.

(Kindleで電子書籍版が出ていましたのでリンクを載せておきます)

https://amzn.to/3sY07j0


4)Theory of constraints

製造業の生産性改善に使われてきたTOC(制約理論)を紹介する論文です.TOCについては『ザ・ゴール』のマンガ版(下記)などがわかりやすいのでおすすめです.

https://amzn.to/3h3TmXq


5)Emerging philanthropy markets

マクロ経済やインフラの指標に基づいて,どの国に寄付市場の拡大余力があるかを調べるとともに,世界価値観調査の結果から,寄付に関する文化を予測しています.資本主義とプロテスタントの国は民間フィランソロピーが盛んであり,その次の候補は(日本を含む)儒教文化圏と資本主義経済だとしています.


6)Competitive Strategy: Techniques for Analyzing Industries and Competitors

マイケル・ポーターの古典的著作ですが,断片化市場について非常に切れ味の鋭い議論をしていて,ご紹介したいと考えました.


7)Look to Others Before You Leap: A Systematic Literature Review of Social Information Effects on Donation Amounts

寄付の金額に対するSocial information effect(他の人の行動についての情報に影響を受けること)についてのシステマティック・レビュー論文です.ポジティブな効果,ネガティブな効果の両方について,媒介要因を挙げて「なぜそうなるのか?」を説明してくれており,大変参考になりました.


Balabanis, G., Stables, R. E., & Phillips, H. C. (1997). Market orientation in the top 200 British charity organizations and its impact on their performance. European Journal of Marketing, 31(8), 583–603. https://doi.org/10.1108/03090569710176592

Chapman, C. M., Masser, B. M., & Louis, W. R. (2020). Identity motives in charitable giving: Explanations for charity preferences from a global donor survey. Psychology & Marketing, 1(15). https://doi.org/10.1002/mar.21362

Frumkin, P. (2008). Strategic Giving: The Art and Science of Philanthropy. University of Chicago Press. https://books.google.co.jp/books?id=Gv9ejrvJf7AC

Goldratt, E. M. (1990). Theory of constraints. North River Croton-on-Hudson.

Michon, R., & Tandon, A. (2012). Emerging philanthropy markets. International Journal of Nonprofit and Voluntary Sector Marketing, 17(September), 352–362. https://doi.org/10.1002/nvsm

Porter, M. E. (1980). Competitive Strategy: Techniques for Analyzing Industries and Competitors. Free Press. https://www.hbs.edu/faculty/Pages/item.aspx?num=195

van Teunenbroek, C., Bekkers, R., & Beersma, B. (2020). Look to Others Before You Leap: A Systematic Literature Review of Social Information Effects on Donation Amounts. Nonprofit and Voluntary Sector Quarterly, 49(1), 53–73. https://doi.org/10.1177/0899764019869537


<おしらせ>

おもしろいと思った論文はTwitterでも紹介しておりますので,ご参考ください.

https://twitter.com/fwatanabe


全然関係がないのですが、けん玉っていろんな遊び方があるんですね。子どもがハマっていて、最近よく遊んでいます。




2022年1月3日月曜日

『ポストコロナのマーケティング・ケーススタディ』で考えるファンドレイジング教育

 2022年の年始の休みは、論文執筆の合間に、こちらの書籍を読みました。


昨年、この書籍を出版されている碩学舎のケーススタディ教育方法に関する研修も受けさせていただいたのですが、マーケティング教育において、ケーススタディはやはり有効なのだと実感した次第です。

ポストコロナの時代におけるマーケティングはかなりの変化を求められており、それを考える上で非常に貴重な書籍だと思います。

マーケティングを教える立場の人が主な読者かもしれませんが、実務者が読んでもとても面白いのではと思いました。

ファンドレイジング教育を考える


さて、日本のファンドレイジング(寄付募集)においては、多くの団体で担当者の教育・研修に割くような予算・時間的余裕がないという現状があるはずです。

そのような中、中間支援組織が提供するセミナーや研修は非常に大きな役割を果たしていると思います。

他の団体の事例を聞くセミナーも良いのですが、そこから一歩進んで、「あなたがこの立場だったらどうするか?」というケースメソッドの要素を取り入れると、さらに教育効果が上がるのではないかと思ったところでした。

なぜケースメソッド的な教育が有効そうなのか


なぜかというと、ファンドレイジング活動は(マーケティングと同様に)十分な情報がない中で判断を行っていくことの連続だからです。

ファンドレイジングは投資活動という側面があり、希少なリソースである時間やお金、人員を、どの活動に振り向けるのか?という判断を非営利組織のマネージャーは日々していかなければなりません。

その判断力を磨くためには、

「実際に判断してみる」
「その結果を実感する」
「なぜそうなったか、もっと良い方法はなかったか振り返る」
「学びを活かして次の打ち手をどれにするか判断する」

というサイクルが必要なのだと思います。

しかし、これは言うは易しで、そんなサイクルを意識して回す余裕がある団体はほとんどないのでは、というのも、実務者としての偽らざる実感です。

実務から強制的に離れて行う研修やセミナー等によって時間を確保し、インプットをするというのは、非常によい方法だと思います。

日本で代表的な場としてはFRJ(ファンドレイジング・ジャパン)などで、日本のファンドレイジング教育に大きく貢献していると思います。


実務と事例セミナーの良いとこどりを


私は、寄付募集という活動に、

1)ボランティアとして
2)プロボノとして
3)有償のコンサルタント(あるいは兼業者)として
4)有給スタッフ、マネジメント職のスタッフとして

という4つの立場で関わってきたのですが、それぞれで多くの学びがある反面、

1)ではファンドレイジングの方向性の決定に関与するようなチャンスはほぼない

2)や3)では複数の団体を見ることができる一方、実施した結果を実感する機会が少ない

4)では1つの団体の事例にしか習熟できない

などの短所もあります。そして致命的なのは、上記の実務経験は、積んでいくのに大変な時間がかかり、習熟できる事例の数が少ないことです。

加えて、重要な判断の頻度が(その人の職位によりますが)低いということも言えます。

一方、日本のファンドレイジング教育では事例ベースのセミナーが多く行われている印象があり、これは短時間で多くの団体についての情報を収集できるメリットがあります。

事例ベースのセミナーは多くの団体に触れられるという意味で非常に効率的である反面、受講する側からすると

・自分の団体に適用できるのかどうかがよく分からない

・「判断」の練習にはならない

という短所があると考えています。

そこで、事例ベースのセミナーにおいては、受講者にまず背景情報を提供してから、

「これまでの情報を基にすると、X団体のファンドレイジングの強みと弱みはどこだと思いますか?」

「この状況で、あなたはAとBのいずれの打ち手を実施しますか?」

などと問いかけるのが良いのではないかと思うところです。

つまり、

・判断の経験は積めるが習熟できる事例数が少なく判断の頻度が低い「実務」

と

・多数の事例に触れることができるが判断経験にはならない「事例セミナー」

の良いとこどりを、ケースメソッド的な要素を取り入れたセミナーで実現しようというアイデアです。

ここ2年くらい、セミナー等に登壇する際には、「事例だけでなくその背後にある理論を説明する」ということを心掛けてきたのですが、それに加えて、2022年はケースメソッド的な要素も取り入れてみたいと考えています。

このブログの読者の方の中には、ファンドレイジング教育に携わっている方も多いと思うので、既にこのような方法を取り入れている方がおられたら、facebookページやTwitterで教えていただきたいと思います。



また、まだ取り入れていない方は、ぜひ一緒にやってみませんか?と呼び掛けたいところです。

今年も、月に1回は更新していきたいと思いますので、本ブログをどうぞよろしくお願いいたします。



2021年12月31日金曜日

2021年のお礼

今年もたくさんの方々にお世話になり、本当にありがとうございました。

職場、兼業先、取引先、共同研究者や研究協力者の方々、指導教員の先生、学会でフィードバックを下さった方々、寄付者の方々、友人、家族、素晴らしい本や論文や研究ツールを残してくれた先人、研究を支えてくれる事務の方々、前職の頃からの上司、先輩方など、一年を振りかえると、いろいろな人から助けてもらい、刺激をもらい、心が折れそうなときにも立ち直れたと思います。

個人の生活は本当に大変なことだらけだったのですが、研究成果を使う実務者、実務を観察する研究者としては、今年も幸いにして実り多い一年でした。

読むこと、書くこと、データを集めることの楽しさを実感しました。

何より、自分が読んだことのない新しい言説が、自分の執筆活動によって産み出されることに新鮮な興奮を覚えます。

後から読み返すとひどい文章なのですが、それでも、自分が一番知りたいことをいろいろ調べながら自分の手で解き明かしていけるというのは、何物にも代えがたい体験です。

いま、博士論文を書いていますが、誰よりも自分がそれを読みたいと強く感じており、それが執筆の強い動機になっています。

来年は博士論文を完成させたいと思います。

その論文を通じて、寄付市場、寄付文化、そしてファンドレイジングという行動をマーケティング研究の観点から理解することを目指します。

論文を通じて得たものを多くの人々と共有し、より良い実務、寄付者の幸せ、健全な寄付市場の発展に寄与できたらと思っています。

来年はファンドレイジング日本に二コマ登壇させていただく機会を得ましたので、実務者として、また研究者として学んできたことを少しでもシェアしようと思います。


人は誰でも(本当にどんな人でも)有限な人生を歩んでおり、自分に不足しているものを嘆くのは時間の無駄だと感じるようになりました。

未来のために、自分の心の向かう方向に向けて、おもしろいことを仕込んでいきたいものです。

それでは皆様、よいお年を。

写真は、年末にアートのファンドレイジングについて少しだけ関わった時の建物の写真です。「わかりにくい価値」を大事にするファンドレイザーでありたいと思います。


2021年12月4日土曜日

『寄付白書2021』の執筆に参加して考えた、寄付の配分の未来

今年、4年ぶりに『寄付白書』が発行されました。

これは、「日本の寄付市場」の全体像を明らかにするために2010年から断続的に発行されてきた資料です。

私も何度そのデータを使ったか分からないくらい、ファンドレイジングに携わる者としても、研究者としてもお世話になってきました。


今年の寄付白書には、ほんのわずかですが、執筆者のひとりとして参加させていただくことができました。

第2章「新型コロナウイルス感染症と日本の寄付」の、「コロナ禍の寄付の流れ」と「コロナ禍のファンドレイジングのオンライン対応」という記事を担当しています。

内容の一部は、下記のインフォグラフィックが公開されておりますため、ご参照いただけます。

https://jfra.jp/wp/wp-content/uploads/2021/11/GJ2021_infographic.pdf


数十年後、研究者や行政担当者が、「2020年代のコロナ禍において、当時の人々はどう反応したのだろうか?」という問いを持つこともあるでしょう。

そのようなときの基礎的資料として読まれる可能性が高い、という大変な責任があることを自覚しつつ、ベストを尽くして執筆しました。


「寄付の配分」の未来

そして、執筆のための調査で明らかになってきた現実に対し、自分の中に新しい問いがいくつも生まれました。

そのひとつは、

「今回のコロナ禍では、本当に困っている人のところに、寄付による支援が、ちゃんと届いたのか?届いているのか?」

というものです。

この問いは、資源の最適な配分を目指す経済学が抱く問いであると同時に、公共政策的な観点からも、為政者が抱いてしかるべき問いだと考えます。

また、個々の団体で支援を「届かせる」ことを使命とするファンドレイザーが自問する問いでもあるかもしれません。

寄付市場を理解し、寄付市場に影響を与えようとする非営利組織や公共的な組織のマーケターにとっても大きな問いだと思います。

もちろん、寄付者ご本人にとっても、本当にその支援が意味のあるものだった、と感じられるためには、必要な問いです。

今回の寄付白書は、それを考える上で非常に具体的なデータを提供してくれるものと思います。


自分が抱いている、上記と対照的な問いは、

「『本当に困っている人』という誰も反論できない寄付先に寄付が集中するなかで、置き去りにされている寄付先、寄付の使い道があるとしたら、それは何だろうか。」

「なぜ、それは置き去りにされるのか。これからその傾向は加速するのか、しないのか」

「そのような置き去りにされがちな寄付先に、寄付を募るにはどうすべきか」

といったものです。

これらの問いの一部に対しては、自分の博士研究を通じてあと1年と少しの間に(暫定的なものであっても)ひとつの答えを出すことを目指します。


これまでの研究で言えるのは、寄付はやはり能動的な働きかけによって生じる、ということです。

それは必ずしも、個々人に「寄付をしてください」と声をかける、ということとは限りません。


『寄付白書2021』では、パートナーシップによって寄付の受け皿が立ち上がり、そこに多くの寄付が集まったことが描かれています。

多くの人が「どこに寄付をしたらいいんだろう・・・」と考えていた状況の中で、迅速に今はまだない受け皿を構想し、能動的に働きかけてそれをつくった人々がいたということは間違いないと考えており、それに呼応した多くの人々がいたということも事実です。

「寄付の受け皿」を運営することには平時でも一定のコストがかかりますが、それを負担できる企業や団体があった、そのような組織の内外に心ある人々がいた、ということは、日本社会にとって幸運だったと私は思います。


一方で、そのような受け皿を使いこなせる寄付先団体と、そうでない寄付先団体は、寄付の配分を受けられるかどうか、について相当に大きな違いが出てきたのではないかと想像します。

(使いこなす以前に、そもそも、資格として排除されるということもあり得ます)

そして、今はまだ一般的ではないかもしれませんが、「たくさんの寄付を集めた団体ほど、それをファンドレイジングに再投資することによってさらにたくさんの寄付を集めることができる」という状態も想定されます。


この「想像します」「あり得ます」「想定されます」という弱い文末は、さらなる調査研究が必要であることを示しているとお考えください。

寄付の配分の未来について、解くべき問いはまだ膨大に残されています。

知識・経験・年齢・立場などに関係なく、こうした問いに挑戦するために、研究という道を一緒に歩んでくれる人が増えてほしいと願う次第です。




研究ノート、5冊目が終了。1冊ずつ使い終わっていくのが楽しいです。

<おしらせ>

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ファンドレイザーの方のためのおすすめ書籍です

https://watanabefumitaka.blogspot.com/p/blog-page_16.html?m=1

寄付を科学的に考えるための書籍リストです

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2021年11月3日水曜日

自治体の方々向けのマーケティング勉強会の資料をアップしました

先日、信州大学社会基盤研究所の特任教員仲間からお声がけいただいて、下記の勉強会に登壇させていただきました。(大月さん、ありがとうございました!)


ふるさと納税担当者のためのオンライン勉強会

https://miyota-town.note.jp/n/n17414efca6b6


ふるさと納税に対しての批判的な論文を紹介したり、返礼品が寄付を減らすのではないかというような研究を紹介したりしつつ、寄付としてふるさと納税を考えたとき、先行研究からは効果的な寄付募集のために何が言えるのか、ということをお話しました。


株式会社NAVICUS 代表取締役の武内一矢さんのご講演、御代田町長の小園 拓志さんのご講演が本当におもしろく、ふるさと納税募集の現場ではどんな状況があるのか、何がポイントなのか、自治体ならではの課題は何か、などなど非常に勉強になりました。


私はiPS財団での仕事で下記のふるさと納税型クラウドファンディングに関わっているので、自分にとっても良い機会でした。(12月末まで募集中ですので、ご支援をお考えくださる方はぜひ下記ページもご覧ください...!)

https://www.cira-foundation.or.jp/2021/10/07-232950.html


勉強会で使ったスライドを改訂した資料を下記にアップしています。よければご参考ください。



また、参考文献はいつものとおり下記に記載しております。


Fuchs, C., de Jong, M. G., & Schreier, M. (2019). Earmarking Donations to Charity: Cross-cultural Evidence on Its Appeal to Donors Across 25 Countries. Management Science. https://doi.org/10.1287/mnsc.2019.3397


Kaplan, A. M., & Haenlein, M. (2009). The increasing importance of public marketing: Explanations, applications and limits of marketing within public administration. European Management Journal, 27(3), 197–212. https://doi.org/https://doi.org/10.1016/j.emj.2008.10.003


Kessler, J. B., Milkman, K. L., & Yiwei Zhang, C. (2019). Getting the rich and powerful to give. Management Science, 65(9), 4049–4062. https://doi.org/10.1287/mnsc.2018.3142


Khodakarami, F., Petersen, J. A., & Venkatesan, R. (2015). Developing Donor Relationships: The Role of the Breadth of Giving. Journal of Marketing, 79(4), 77–93. https://doi.org/10.1509/jm.14.0351


Knowles, P., & Gomes, R. (2009). Building Relationships with Major-Gift Donors: A Major-Gift Decision-Making, Relationship-Building Model. Journal of Nonprofit & Public Sector Marketing, 21(4), 384–406. http://10.0.4.56/10495140802662580


Kohli, A. K., & Jaworski, B. J. (1990). Market orientation: the construct, research propositions, and managerial implications. Journal of Marketing, 54(2), 1–18.


Kotler, P., & Levy, S. J. (1969). Broadening the concept of marketing. Journal of Marketing, 33(1), 10–15. https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/002224296903300103?casa_token=HqfNOqwfyiAAAAAA%3AC7Ic2a-AzRno01wixCHZQQST8qURSudw22vaT152UtoMPLNI-1DGp6wYh5F5L5poebmzwduUX0XTsiw


Kotler, P., & Zaltman, G. (1971). Social marketing: an approach to planned social change. Journal of Marketing, 35(3), 3–12.


Lamb, C. W. (1987). Public sector marketing is different. Business Horizons, 30(4), 56–60. https://doi.org/https://doi.org/10.1016/0007-6813(87)90066-8


Lin, C., Xie, Y., & Xu, R. (2019). Experience and enlightenment: “Customer-oriented” nine-stage major gifts management model of world-class U.S. universities. Tuning Journal for Higher Education, 7(1), 33–65. http://www.tuningjournal.org/article/view/1596


Michon, R., & Tandon, A. (2012). Emerging philanthropy markets. International Journal of Nonprofit and Voluntary Sector Marketing, 17(September), 352–362. https://doi.org/10.1002/nvsm


Moon, S., & Azizi, K. (2013). Finding Donors by Relationship Fundraising. Journal of Interactive Marketing (Elsevier), 27(2), 112–129. http://10.0.3.248/j.intmar.2012.10.002


Narver, J. C., & Slater, S. F. (1990). The effect of a market orientation on business profitability. Journal of Marketing, 54(4), 20–35.


Newman, G. E., & Jeremy Shen, Y. (2012). The counterintuitive effects of thank-you gifts on charitable giving. Journal of Economic Psychology, 33(5), 973–983. https://doi.org/https://doi.org/10.1016/j.joep.2012.05.002


Rodrigues, A. P., & Carlos M., J. (2010). Market orientation, job satisfaction, commitment and organisational performance. Transforming Government: People, Process and Policy, 4(2), 172–192. https://doi.org/10.1108/17506161011047398


Sargeant, A. (2001). Relationship Fundraising: How to Keep Donors Loyal. Nonprofit Management & Leadership, 12(2), 177. http://10.0.3.234/nml.12204


嶋田暁文. (2019). 「ふるさと納税」再考―その問題点と制度見直しを踏まえて―. 地方自治ふくおか, 69, 95–111. https://doi.org/10.32232/chihoujichifukuoka.69.0_95




コロナも小康状態なので、こないだ家族で琵琶湖に行きました。ひたすら研究と仕事の日々ですが、コツコツがんばります。

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ファンドレイザーの方のためのおすすめ書籍です

寄付を科学的に考えるための書籍リストです

社会人で博士を目指す方へのおすすめ書籍です


ファンドレイジング・アクションリサーチ研究会のオリエンテーションについて

 非営利組織における、ファンドレイジング(寄付募集)の研究をしております渡邉文隆と申します。 このたび、日本パブリックリレーションズ学会の研究会のひとつとして、ファンドレイジング・アクションリサーチ研究会というものを開催します。 これは、ファンドレイジング活動の改善と、論文執筆に...