2022年1月3日月曜日

『ポストコロナのマーケティング・ケーススタディ』で考えるファンドレイジング教育

 2022年の年始の休みは、論文執筆の合間に、こちらの書籍を読みました。


昨年、この書籍を出版されている碩学舎のケーススタディ教育方法に関する研修も受けさせていただいたのですが、マーケティング教育において、ケーススタディはやはり有効なのだと実感した次第です。

ポストコロナの時代におけるマーケティングはかなりの変化を求められており、それを考える上で非常に貴重な書籍だと思います。

マーケティングを教える立場の人が主な読者かもしれませんが、実務者が読んでもとても面白いのではと思いました。

ファンドレイジング教育を考える


さて、日本のファンドレイジング(寄付募集)においては、多くの団体で担当者の教育・研修に割くような予算・時間的余裕がないという現状があるはずです。

そのような中、中間支援組織が提供するセミナーや研修は非常に大きな役割を果たしていると思います。

他の団体の事例を聞くセミナーも良いのですが、そこから一歩進んで、「あなたがこの立場だったらどうするか?」というケースメソッドの要素を取り入れると、さらに教育効果が上がるのではないかと思ったところでした。

なぜケースメソッド的な教育が有効そうなのか


なぜかというと、ファンドレイジング活動は(マーケティングと同様に)十分な情報がない中で判断を行っていくことの連続だからです。

ファンドレイジングは投資活動という側面があり、希少なリソースである時間やお金、人員を、どの活動に振り向けるのか?という判断を非営利組織のマネージャーは日々していかなければなりません。

その判断力を磨くためには、

「実際に判断してみる」
「その結果を実感する」
「なぜそうなったか、もっと良い方法はなかったか振り返る」
「学びを活かして次の打ち手をどれにするか判断する」

というサイクルが必要なのだと思います。

しかし、これは言うは易しで、そんなサイクルを意識して回す余裕がある団体はほとんどないのでは、というのも、実務者としての偽らざる実感です。

実務から強制的に離れて行う研修やセミナー等によって時間を確保し、インプットをするというのは、非常によい方法だと思います。

日本で代表的な場としてはFRJ(ファンドレイジング・ジャパン)などで、日本のファンドレイジング教育に大きく貢献していると思います。


実務と事例セミナーの良いとこどりを


私は、寄付募集という活動に、

1)ボランティアとして
2)プロボノとして
3)有償のコンサルタント(あるいは兼業者)として
4)有給スタッフ、マネジメント職のスタッフとして

という4つの立場で関わってきたのですが、それぞれで多くの学びがある反面、

1)ではファンドレイジングの方向性の決定に関与するようなチャンスはほぼない

2)や3)では複数の団体を見ることができる一方、実施した結果を実感する機会が少ない

4)では1つの団体の事例にしか習熟できない

などの短所もあります。そして致命的なのは、上記の実務経験は、積んでいくのに大変な時間がかかり、習熟できる事例の数が少ないことです。

加えて、重要な判断の頻度が(その人の職位によりますが)低いということも言えます。

一方、日本のファンドレイジング教育では事例ベースのセミナーが多く行われている印象があり、これは短時間で多くの団体についての情報を収集できるメリットがあります。

事例ベースのセミナーは多くの団体に触れられるという意味で非常に効率的である反面、受講する側からすると

・自分の団体に適用できるのかどうかがよく分からない

・「判断」の練習にはならない

という短所があると考えています。

そこで、事例ベースのセミナーにおいては、受講者にまず背景情報を提供してから、

「これまでの情報を基にすると、X団体のファンドレイジングの強みと弱みはどこだと思いますか?」

「この状況で、あなたはAとBのいずれの打ち手を実施しますか?」

などと問いかけるのが良いのではないかと思うところです。

つまり、

・判断の経験は積めるが習熟できる事例数が少なく判断の頻度が低い「実務」


・多数の事例に触れることができるが判断経験にはならない「事例セミナー」

の良いとこどりを、ケースメソッド的な要素を取り入れたセミナーで実現しようというアイデアです。

ここ2年くらい、セミナー等に登壇する際には、「事例だけでなくその背後にある理論を説明する」ということを心掛けてきたのですが、それに加えて、2022年はケースメソッド的な要素も取り入れてみたいと考えています。

このブログの読者の方の中には、ファンドレイジング教育に携わっている方も多いと思うので、既にこのような方法を取り入れている方がおられたら、facebookページやTwitterで教えていただきたいと思います。



また、まだ取り入れていない方は、ぜひ一緒にやってみませんか?と呼び掛けたいところです。

今年も、月に1回は更新していきたいと思いますので、本ブログをどうぞよろしくお願いいたします。



2021年12月31日金曜日

2021年のお礼

今年もたくさんの方々にお世話になり、本当にありがとうございました。

職場、兼業先、取引先、共同研究者や研究協力者の方々、指導教員の先生、学会でフィードバックを下さった方々、寄付者の方々、友人、家族、素晴らしい本や論文や研究ツールを残してくれた先人、研究を支えてくれる事務の方々、前職の頃からの上司、先輩方など、一年を振りかえると、いろいろな人から助けてもらい、刺激をもらい、心が折れそうなときにも立ち直れたと思います。

個人の生活は本当に大変なことだらけだったのですが、研究成果を使う実務者、実務を観察する研究者としては、今年も幸いにして実り多い一年でした。

読むこと、書くこと、データを集めることの楽しさを実感しました。

何より、自分が読んだことのない新しい言説が、自分の執筆活動によって産み出されることに新鮮な興奮を覚えます。

後から読み返すとひどい文章なのですが、それでも、自分が一番知りたいことをいろいろ調べながら自分の手で解き明かしていけるというのは、何物にも代えがたい体験です。

いま、博士論文を書いていますが、誰よりも自分がそれを読みたいと強く感じており、それが執筆の強い動機になっています。

来年は博士論文を完成させたいと思います。

その論文を通じて、寄付市場、寄付文化、そしてファンドレイジングという行動をマーケティング研究の観点から理解することを目指します。

論文を通じて得たものを多くの人々と共有し、より良い実務、寄付者の幸せ、健全な寄付市場の発展に寄与できたらと思っています。

来年はファンドレイジング日本に二コマ登壇させていただく機会を得ましたので、実務者として、また研究者として学んできたことを少しでもシェアしようと思います。


人は誰でも(本当にどんな人でも)有限な人生を歩んでおり、自分に不足しているものを嘆くのは時間の無駄だと感じるようになりました。

未来のために、自分の心の向かう方向に向けて、おもしろいことを仕込んでいきたいものです。

それでは皆様、よいお年を。

写真は、年末にアートのファンドレイジングについて少しだけ関わった時の建物の写真です。「わかりにくい価値」を大事にするファンドレイザーでありたいと思います。


2021年12月4日土曜日

『寄付白書2021』の執筆に参加して考えた、寄付の配分の未来

今年、4年ぶりに『寄付白書』が発行されました。

これは、「日本の寄付市場」の全体像を明らかにするために2010年から断続的に発行されてきた資料です。

私も何度そのデータを使ったか分からないくらい、ファンドレイジングに携わる者としても、研究者としてもお世話になってきました。


今年の寄付白書には、ほんのわずかですが、執筆者のひとりとして参加させていただくことができました。

第2章「新型コロナウイルス感染症と日本の寄付」の、「コロナ禍の寄付の流れ」と「コロナ禍のファンドレイジングのオンライン対応」という記事を担当しています。

内容の一部は、下記のインフォグラフィックが公開されておりますため、ご参照いただけます。

https://jfra.jp/wp/wp-content/uploads/2021/11/GJ2021_infographic.pdf


数十年後、研究者や行政担当者が、「2020年代のコロナ禍において、当時の人々はどう反応したのだろうか?」という問いを持つこともあるでしょう。

そのようなときの基礎的資料として読まれる可能性が高い、という大変な責任があることを自覚しつつ、ベストを尽くして執筆しました。


「寄付の配分」の未来

そして、執筆のための調査で明らかになってきた現実に対し、自分の中に新しい問いがいくつも生まれました。

そのひとつは、

「今回のコロナ禍では、本当に困っている人のところに、寄付による支援が、ちゃんと届いたのか?届いているのか?」

というものです。

この問いは、資源の最適な配分を目指す経済学が抱く問いであると同時に、公共政策的な観点からも、為政者が抱いてしかるべき問いだと考えます。

また、個々の団体で支援を「届かせる」ことを使命とするファンドレイザーが自問する問いでもあるかもしれません。

寄付市場を理解し、寄付市場に影響を与えようとする非営利組織や公共的な組織のマーケターにとっても大きな問いだと思います。

もちろん、寄付者ご本人にとっても、本当にその支援が意味のあるものだった、と感じられるためには、必要な問いです。

今回の寄付白書は、それを考える上で非常に具体的なデータを提供してくれるものと思います。


自分が抱いている、上記と対照的な問いは、

「『本当に困っている人』という誰も反論できない寄付先に寄付が集中するなかで、置き去りにされている寄付先、寄付の使い道があるとしたら、それは何だろうか。」

「なぜ、それは置き去りにされるのか。これからその傾向は加速するのか、しないのか」

「そのような置き去りにされがちな寄付先に、寄付を募るにはどうすべきか」

といったものです。

これらの問いの一部に対しては、自分の博士研究を通じてあと1年と少しの間に(暫定的なものであっても)ひとつの答えを出すことを目指します。


これまでの研究で言えるのは、寄付はやはり能動的な働きかけによって生じる、ということです。

それは必ずしも、個々人に「寄付をしてください」と声をかける、ということとは限りません。


『寄付白書2021』では、パートナーシップによって寄付の受け皿が立ち上がり、そこに多くの寄付が集まったことが描かれています。

多くの人が「どこに寄付をしたらいいんだろう・・・」と考えていた状況の中で、迅速に今はまだない受け皿を構想し、能動的に働きかけてそれをつくった人々がいたということは間違いないと考えており、それに呼応した多くの人々がいたということも事実です。

「寄付の受け皿」を運営することには平時でも一定のコストがかかりますが、それを負担できる企業や団体があった、そのような組織の内外に心ある人々がいた、ということは、日本社会にとって幸運だったと私は思います。


一方で、そのような受け皿を使いこなせる寄付先団体と、そうでない寄付先団体は、寄付の配分を受けられるかどうか、について相当に大きな違いが出てきたのではないかと想像します。

(使いこなす以前に、そもそも、資格として排除されるということもあり得ます)

そして、今はまだ一般的ではないかもしれませんが、「たくさんの寄付を集めた団体ほど、それをファンドレイジングに再投資することによってさらにたくさんの寄付を集めることができる」という状態も想定されます。


この「想像します」「あり得ます」「想定されます」という弱い文末は、さらなる調査研究が必要であることを示しているとお考えください。

寄付の配分の未来について、解くべき問いはまだ膨大に残されています。

知識・経験・年齢・立場などに関係なく、こうした問いに挑戦するために、研究という道を一緒に歩んでくれる人が増えてほしいと願う次第です。




研究ノート、5冊目が終了。1冊ずつ使い終わっていくのが楽しいです。

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2021年11月3日水曜日

自治体の方々向けのマーケティング勉強会の資料をアップしました

先日、信州大学社会基盤研究所の特任教員仲間からお声がけいただいて、下記の勉強会に登壇させていただきました。(大月さん、ありがとうございました!)


ふるさと納税担当者のためのオンライン勉強会

https://miyota-town.note.jp/n/n17414efca6b6


ふるさと納税に対しての批判的な論文を紹介したり、返礼品が寄付を減らすのではないかというような研究を紹介したりしつつ、寄付としてふるさと納税を考えたとき、先行研究からは効果的な寄付募集のために何が言えるのか、ということをお話しました。


株式会社NAVICUS 代表取締役の武内一矢さんのご講演、御代田町長の小園 拓志さんのご講演が本当におもしろく、ふるさと納税募集の現場ではどんな状況があるのか、何がポイントなのか、自治体ならではの課題は何か、などなど非常に勉強になりました。


私はiPS財団での仕事で下記のふるさと納税型クラウドファンディングに関わっているので、自分にとっても良い機会でした。(12月末まで募集中ですので、ご支援をお考えくださる方はぜひ下記ページもご覧ください...!)

https://www.cira-foundation.or.jp/2021/10/07-232950.html


勉強会で使ったスライドを改訂した資料を下記にアップしています。よければご参考ください。



また、参考文献はいつものとおり下記に記載しております。


Fuchs, C., de Jong, M. G., & Schreier, M. (2019). Earmarking Donations to Charity: Cross-cultural Evidence on Its Appeal to Donors Across 25 Countries. Management Science. https://doi.org/10.1287/mnsc.2019.3397


Kaplan, A. M., & Haenlein, M. (2009). The increasing importance of public marketing: Explanations, applications and limits of marketing within public administration. European Management Journal, 27(3), 197–212. https://doi.org/https://doi.org/10.1016/j.emj.2008.10.003


Kessler, J. B., Milkman, K. L., & Yiwei Zhang, C. (2019). Getting the rich and powerful to give. Management Science, 65(9), 4049–4062. https://doi.org/10.1287/mnsc.2018.3142


Khodakarami, F., Petersen, J. A., & Venkatesan, R. (2015). Developing Donor Relationships: The Role of the Breadth of Giving. Journal of Marketing, 79(4), 77–93. https://doi.org/10.1509/jm.14.0351


Knowles, P., & Gomes, R. (2009). Building Relationships with Major-Gift Donors: A Major-Gift Decision-Making, Relationship-Building Model. Journal of Nonprofit & Public Sector Marketing, 21(4), 384–406. http://10.0.4.56/10495140802662580


Kohli, A. K., & Jaworski, B. J. (1990). Market orientation: the construct, research propositions, and managerial implications. Journal of Marketing, 54(2), 1–18.


Kotler, P., & Levy, S. J. (1969). Broadening the concept of marketing. Journal of Marketing, 33(1), 10–15. https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/002224296903300103?casa_token=HqfNOqwfyiAAAAAA%3AC7Ic2a-AzRno01wixCHZQQST8qURSudw22vaT152UtoMPLNI-1DGp6wYh5F5L5poebmzwduUX0XTsiw


Kotler, P., & Zaltman, G. (1971). Social marketing: an approach to planned social change. Journal of Marketing, 35(3), 3–12.


Lamb, C. W. (1987). Public sector marketing is different. Business Horizons, 30(4), 56–60. https://doi.org/https://doi.org/10.1016/0007-6813(87)90066-8


Lin, C., Xie, Y., & Xu, R. (2019). Experience and enlightenment: “Customer-oriented” nine-stage major gifts management model of world-class U.S. universities. Tuning Journal for Higher Education, 7(1), 33–65. http://www.tuningjournal.org/article/view/1596


Michon, R., & Tandon, A. (2012). Emerging philanthropy markets. International Journal of Nonprofit and Voluntary Sector Marketing, 17(September), 352–362. https://doi.org/10.1002/nvsm


Moon, S., & Azizi, K. (2013). Finding Donors by Relationship Fundraising. Journal of Interactive Marketing (Elsevier), 27(2), 112–129. http://10.0.3.248/j.intmar.2012.10.002


Narver, J. C., & Slater, S. F. (1990). The effect of a market orientation on business profitability. Journal of Marketing, 54(4), 20–35.


Newman, G. E., & Jeremy Shen, Y. (2012). The counterintuitive effects of thank-you gifts on charitable giving. Journal of Economic Psychology, 33(5), 973–983. https://doi.org/https://doi.org/10.1016/j.joep.2012.05.002


Rodrigues, A. P., & Carlos M., J. (2010). Market orientation, job satisfaction, commitment and organisational performance. Transforming Government: People, Process and Policy, 4(2), 172–192. https://doi.org/10.1108/17506161011047398


Sargeant, A. (2001). Relationship Fundraising: How to Keep Donors Loyal. Nonprofit Management & Leadership, 12(2), 177. http://10.0.3.234/nml.12204


嶋田暁文. (2019). 「ふるさと納税」再考―その問題点と制度見直しを踏まえて―. 地方自治ふくおか, 69, 95–111. https://doi.org/10.32232/chihoujichifukuoka.69.0_95




コロナも小康状態なので、こないだ家族で琵琶湖に行きました。ひたすら研究と仕事の日々ですが、コツコツがんばります。

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2021年10月30日土曜日

社会的健康と寄付・ボランティア

 原稿をひとつご依頼いただき、社会的健康と向社会的行動(寄付やボランティアなど)の関係について調べています。


「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること」


これは、日本WHO協会が翻訳した、1947年のWHO憲章による健康の定義です(太字・傍線は自分がつけたものです)。「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」によると、社会的健康は

「他人や社会と建設的でよい関係を築けること」

だそうです。

へえ、と思って社会的健康と寄付・ボランティアについてちょっと調べてみました。

「社会との結びつき」は健康や長寿に強い因果関係があるようで、そのメカニズムについても研究されていました(Yang et al., 2016)。

ボランティア活動は、139か国を対象とした研究でも、主観的な健康度と有意に関連していたそうです(Kumar et al., 2012)。

ボランティアのみならず、寄付が後年の精神的健康に資するという研究結果もあり(Choi & Kim, 2011)、特に地元の団体への寄付がウェルビーイングと関連するそうです(Appau & Awaworyi Churchill, 2019)。

寄付やボランティアで健康になったり幸せになるなら嬉しいことですが、社会的行動で幸福度が上がる効果は短期的なものでは?と疑問を投げかける研究もありました(Falk & Graeber, 2020)。

それに加えて「自分が幸せになるために寄付をしましょう」というメッセージは寄付を促進するどころか逆効果であることも示唆されています(Anik et al., 2009)。

人を助けることが幸せにつながるメカニズムが一体どうなっているのか?という問いについては多数の研究をもとに議論されてきており(Aknin & Whillans V, 2021)、興味は尽きません。


全然関係ないのですが、銀閣寺近くのこちらのコーヒー屋さん、とても美味しかったのでオススメです。


Aknin, L. B., & Whillans V, A. (2021). Helping and Happiness: A Review and Guide for Public Policy. Social Issues and Policy Review, 15(1), 3–34. https://doi.org/10.1111/sipr.12069

Anik, L., Aknin, L. B., Norton, M. I., & Dunn, E. W. (2009). Feeling good about giving: The benefits (and costs) of self-interested charitable behavior. Harvard Business School Marketing Unit Working Paper, 10012.

Appau, S., & Awaworyi Churchill, S. (2019). Charity, Volunteering Type and Subjective Wellbeing. VOLUNTAS: International Journal of Voluntary and Nonprofit Organizations, 30(5), 1118–1132. https://doi.org/10.1007/s11266-018-0009-8

Choi, N. G., & Kim, J. (2011). The effect of time volunteering and charitable donations in later life on psychological wellbeing. Ageing and Society, 31(4), 590–610. https://doi.org/DOI: 10.1017/S0144686X10001224

Falk, A., & Graeber, T. (2020). Delayed negative effects of prosocial spending on happiness. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 117(12), 6463–6468. http://10.0.4.49/pnas.1914324117

Kumar, S., Calvo, R., Avendano, M., Sivaramakrishnan, K., & Berkman, L. F. (2012). Social support, volunteering and health around the world: Cross-national evidence from 139 countries. Social Science & Medicine, 74(5), 696–706.

Yang, Y. C., Boen, C., Gerken, K., Li, T., Schorpp, K., & Harris, K. M. (2016). Social relationships and physiological determinants of longevity across the human life span. Proceedings of the National Academy of Sciences, 113(3), 578–583.

2021年9月21日火曜日

大学ファンドレイジングと、「チャラ男」と「根回しオヤジ」のお話

先日、雑誌『月刊 先端教育』に、2019年度末まで担当しておりましたiPS細胞研究基金のファンドレイジング活動のことを取り上げていただきましたので、ご報告です。

「大学マネジメント最前線 寄附拡大を目指すために必要なこと」

https://www.fujisan.co.jp/product/1281702004/new/

https://www.sentankyo.jp/articles/0490e5b1-06ae-4624-8c8f-57706b91a354

今回は、上記の雑誌で「大学マネジメント最前線」の連載をされている、内閣府上席科学技術政策フェロー・東京工業大学教授の江端新吾先生にお声がけいただき、取材をしていただきました。(江端先生・植草先生、ありがとうございました!)

iPS基金での取り組みを聞かせてほしい、というお話を頂戴したのですが、私が2020年3月末で離任していましたので、現基金室長の小山さん(私が転籍した後の基金室長を引き受けてくださった方。所長補佐でもあります)とともに前任者として取材をお受けしました。


小山さんは大学職員としてのキャリアが長く、外から大学に入ってきた私が(ファンドレイジングやマーケティングには詳しいものの)大学職員として組織のことがわからない、人脈もない、という状況のなかで本当に多くの手助け・ご指導をくださいました。

iPS基金のファンドレイジングという重責を担うことになった私がなんとか生き残れたのは、小山さんのおかげと言うほかありません。本当に感謝しています。


今回の記事を読み返しながら、ふと

「自分は『チャラ男』だったのか」

と思いました。
(まったく意味不明だと思いますが、それは後段をご覧ください)


私は様々な場所で、「ファンドレイジングにとって組織内の協力がいかに大切か」を伝えているつもりなのですが、なかなかそこまで踏み込んで記事になることが少ないのが現状でした。

今回のメディア掲載は、その意味で画期的だと思いますので、あえてブログでも紹介させていただこうと思いました。


「チャラ男」と「根回しオヤジ」の組み合わせは強い

詳細は下記の書籍の第7章に詳しいのですが、組織の中で新しいアイデアを実現させていくためには、非常にざっくりと言うと、2つの条件が必要とされるといいます。


それは、

1)社外にもつながりを持ち、新しいアイデアを出せること
2)そのアイデアを、社内での強い人脈をテコにして実現すること

という2点です。

問題は、1)と2)を一人で兼ね備えるのは至難の業、ということです。

上記の書籍の中では、キャッチーに、1)を担う人を「チャラ男」、2)を担う人を「根回しオヤジ」と表現していて、思わず笑ってしまいました。

この二人が組むと、新しいアイデアを組織内で実装していけるので、強いぞというお話です。

私は外から大学に転職した人間でしたので、上記の1)を担う「チャラ男」としてがんばるしかなかったのだなあ、と思い出していました。

そのような中、2)を担ってくださる方が、大学職員として長いキャリアを持つ小山さんだったと思います。

それによって、iPS基金にご支援を考えてくださる方々に対し、様々な受け入れ方法を整備していくことができ、多くの方々の善意が基金に寄せられたという面もあるかなと思っています。
(iPS基金への寄付の状況は下記ページに公開されています)


人と人がより良く協力して働くために


経営学のひとつの側面は、「組織の中で人と人がより良く協力するための手がかり」を与えてくれるというものです。

人と協力して仕事をして、世の中に貢献できるとしたら、それはとてもありがたい、幸せなことだと思います。

今回の『月刊 先端教育』の記事や、上記の書籍をきっかけに、

・大学ファンドレイジングの可能性
・その実践を助ける経営学という学問の魅力

に対して、一人でも多くの方がご注目いただければ嬉しいです。


ちなみに、ファンドレイジングという分野は、

・非営利組織の人が、組織外の人と(寄付をしていただく、という行為を通じて)より良く協力するため

の分野だとも言えます。
ほんとうにおもしろい分野なので、もしちょっとでも働いてみたいと思った方は、下記の募集要項をご覧ください!私が転籍した先の公益財団での人材募集です。


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2021年8月14日土曜日

勉強会「非営利組織のマーケティングを考える:ファンドレイジング研究の観点から」

マーケティングを、世のため人のために使えたらいいなあ・・・


と思ったこと、ありませんでしょうか。


よく考えたら、民間企業だけでなく、非営利組織(省庁・自治体・大学・病院・美術館・図書館・NPO等)にも、「マーケティング」が必要な気がする・・・。


と感じたこと、ありませんか?


実は、そんなことを専門的に考えている学問分野があります。

ソーシャルマーケティングとか、非営利組織マーケティングといった分野です。


私が取り組んでいるファンドレイジング(寄付募集)研究も、その一部が上記分野に含まれています。


ソーシャルマーケティングは、商業マーケティングという大きな分野の中の「特殊なケース」と見られてきましたが、これをマーケティングの主流にすべき、という意見もあります。

https://www.emerald.com/insight/content/doi/10.1108/EJM-05-2013-0248/full/html


とはいえ、社会のためにマーケティングを使う、という理想に対して、現実には様々な課題があります

(もし、ソーシャルマーケティングがもっと普及していたら、新型コロナウイルス感染症対策は違った展開になっていたはずです・・・)


非営利組織のマーケティング活用のひとつとしてのファンドレイジングという分野でも、これまでの研究と、実務者の期待するものの間には、ギャップがあるように思われます

私自身が、ファンドレイジングの実務者として、「もっとこういう研究があったらいいのに」と思って過ごしてきました。


今回は、「この分野について、専門家でない人に説明して、ディスカッションする」ということを目的にした勉強会です。


内容は、非営利組織マーケティング、ソーシャルマーケティング研究や、その一分野としてのファンドレイジング(寄付募集)研究とその実務への応用についてです。

30-40分くらいでご説明し、最後に質疑応答の時間も取りたいと思います。

よろしければご参加ください。


日時  2021年8月20日(金)21:00-22:00


開催方法 zoomを予定しています。


参加費 無料


お申込み このGoogle formからお願いします。


発表者 渡邉文隆(京都大学経営管理大学院博士後期課程)

 どんな活動をしてきたかは、本ブログの他、こちらのインタビューnoteをご覧ください。


皆様のご参加をお待ちしております!


(京都御苑です。こういう場も、非営利組織が管理してますよね)


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寄付を科学的に考えるための書籍リストです

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ファンドレイジング・アクションリサーチ研究会のオリエンテーションについて

 非営利組織における、ファンドレイジング(寄付募集)の研究をしております渡邉文隆と申します。 このたび、日本パブリックリレーションズ学会の研究会のひとつとして、ファンドレイジング・アクションリサーチ研究会というものを開催します。 これは、ファンドレイジング活動の改善と、論文執筆に...