2020年5月24日日曜日

高額寄付を阻む(少なくとも)10の要因

先日、著名YoutuberのHikakinさんがコロナウイルス感染症に対応する医療従事者のために自ら1億円を寄付して「コロナ医療支援基金」を設置、加えて寄付を呼び掛けはじめました。


まだ数日しか経っていませんが、大変な額の寄付が集まっています。



私は、ちょうど「高額寄付を阻む要因」について文献調査をしていたということもあって、今回の寄付にたいへん感銘を受けました。

個人による高額寄付を阻む要因は、後述のように非常にたくさんあります。それを乗り越えてこの寄付をされたHikakinさんに敬意を表したいと思います。

せっかくなので、今回のCOVID-19に対する寄付に限らず、高額寄付を阻む様々な要因について調べたことを記載しておこうと思います。

ざっと文献を読んだだけで少なくとも10個は挙げることができて、これは先が長いな・・・と思いつつあります。

********************

Major gift(高額寄付)を阻む要因


寄付はマーケティング上、「顧客」が価格を決める珍しい「商品」である。したがって、高額寄付(本稿では仮に100万円以上と考える)をしうる人々を同定(Prospect researchという)した上で関係を構築し、適切な金額の寄付を依頼することが寄付額を向上させる上で重要である旨が、米国の実務者向けのテキストでも強調されている。

一方で、高額寄付の検討者はいくつかの意思決定上の困難に直面していることが先行研究から見て取れる。本稿では、既存の寄付研究(主にマーケティング・行動経済学)から、高額寄付を阻む要因について概観する。

1.寄付の分類

本稿では、寄付募集についての実務者向けの米国のテキストを参考に、下記2つの分類を採用する。これは、下記がマーケティング上、異なる戦略を要すると思われることによる。

Charity
 困窮者への支援。現在の受益者のニーズに対する感情的・衝動的な寄付。震災の被災者支援など

Philanthropy
 より広い概念で、良い社会に向けた支援一般を指す。社会課題の原因を緩和・解決する、相対的に高額の、合理的検討を要する寄付を含む。


2.先行研究からみる高額寄付の阻害要因と対応の例


1)取引費用

 個人が高額寄付を行う際には、法人が寄付を行う場合と比べて相手方の非営利組織について情報を得る手段が限られており、ふさわしい寄付先を探索するコストがかかる。また、高額寄付には有価証券や不動産を含むことがあるが、こうした資産を現物で受け入れられる非営利組織が少なく、その換価処分にかかる手間が障害になることも想定される。遺贈寄付においても、遺贈寄付を行うためにかかる諸費用(弁護士・信託銀行等に支払う手数料)が心理的なネックになるだろう。また、遠隔地にある寄付先に高額寄付を行う際には、やはり現地を見たいと思うかもしれないが、交通費や時間などのコストが事前にかかってくる。こうした費用は取引費用(Transaction cost)としてとらえることができ、それを嫌って寄付検討者が高額寄付を決めきれない可能性がある。家族間の合意形成などにも相応のコミュニケーションコストがかかるが、これも取引費用ととらえることができる。

 これに対しては、高額寄付検討者に対して非営利組織が情報を積極的に開示すること、遺贈の諸費用の一部を非営利組織が負担できるスキームを構築すること、寄付検討者が周囲に説明・説得するための材料を提供することなどが対応策として考えられる。

2)「有効性感覚」の欠如

 政治的有効性感覚(Sense of political efficacy)とは「自らが行動することで政治に一定の影響を与えることができる」という信念を指す。『寄付白書2017』における分析によれば、この有無は、寄付・ボランティア行動率との間に強い関連性がある。日本では社会貢献意識を持つ者の割合がこの40年で大きく増加しているが、寄付・ボランティア参加率は同様の増加を見せておらず、政治的有効性感覚を高める教育が重要であるという。
 また、最近の研究[1]では、寄付の有効性に関する知覚(Perceived donation efficacy:PDE)が寄付に影響するとの報告がある。逆に言えば、寄付が有効に活用されて社会的な課題を解決するだろうという予測が立たなければ、高額寄付は発生しにくいことが想定される。

 これに対応するためには、高額寄付検討者に対して、その支援によって何が具体的に実行できるかを体験的に伝えること、寄付によって大きな望ましい影響が発生したという寄付者の体験を事例としてコンテンツ化することなどが対応として考えられる。

3)時間割引

 人間は、時間的にすぐに与えられる報酬ほどその価値を大きく感じ、逆に報酬の与えられる時点が遅くなると感じる価値が減少していくという性質を持っており、これを「時間割引(Time discounting)」という。Charityに比べてPhilanthropyは成果が出るまでに時間がかかる寄付であり、高額寄付の阻害要因になると考えられる。

 対応としては、寄付を活用した事業の成果が出るまでのプロセスの発信や、寄付直後に寄付者銘板を設置することで寄付者を顕彰することなどが考えられる。

4)限界効用の逓減

 寄付によって得られる満足度は金額とともに直線的には上昇せず、単位費用あたりの効用は逓減していく。したがって、100万円の寄付の2倍の満足を200万円の寄付で得られると感じない人が多いと思われる。

 対応としては、一定の金額を超えた寄付に対して心理的な特典(称号等)を付与することが考えられる。

5)情報の非対称性

 寄付先の事業が寄付者にとってなじみのないものである場合、寄付者と非営利組織の間の情報の非対称性が高くなる。その結果、質の高い事業を行う非営利組織もそれを反映した寄付額を受け取れなくなる。また、寄付者をプリンシパル、非営利組織をエージェントと考えた際には、寄付者が寄付の活用状況を監視するコストが高すぎるために、非営利組織が自己の利益を優先した行動をとる(寄付の使途を勝手に変更する、効率的な組織運営を怠る等。agency slackという)可能性を恐れて寄付に踏み切ることができない場合もあると想定される。

 対応としては、試しに一度寄付していただく(test givingという)ことを促進したり、ボランティア活動(委員への就任等)への参加によって組織の内情を理解してもらうとともに信頼を構築することで、情報の非対称性を低くすることが考えられる。Hikakin氏は今回の寄付に至るまでにすでにCOVID-19に関する対談などを複数しており、寄付先との間の情報の非対称性が低まったと思われる。

6)純粋な利他性を求める社会規範とその内面化

 日本におけるCOVID-19に対応するための寄付に関する記事で、日本人は、寄付が純粋な利他性に基づくべきだという社会規範を(他の先進国の国民よりも相対的に強く)持っているという指摘が東北学院大学の佐々木周作准教授によってなされている。
 こうした社会規範を内面化している個人は、「自分が満足するために行う寄付」を否定してしまい、これによって寄付行動が阻害されることも想定される。また、こうした社会規範が強い社会では、寄付行為を開示しても賞賛されることが少なく、寄付による名声からくる満足を寄付者が得られないことになる。

 対応としては、非営利組織の内部だけで寄付の事実を公表して構成員からの感謝の声を届けることや、ファンドレイザーが寄付検討者との対話のなかで内面化された社会規範を自覚してもらい、今回の寄付の検討においてそれを適用すべきかを考えてもらうことなどが考えられる。

7)参照点に関する情報の不足

 日本では富裕層がどれくらいの額を寄付すべきか、自己の資産のどの程度の割合を寄付するべきか、という基準になる参照点(Reference point)に触れる機会が少ないため、高額寄付の「相場」が分からない場合が多いと想定される。また、前述の6)により寄付者が自己の寄付行為を表明した場合に誹謗中傷されるならば、寄付者は自己の寄付行為を開示しないかもしれない。この場合、寄付検討者は参照点となる情報を得られないことになる。

 対応としては、寄付者特典が付与される高額寄付のラインを明示することによって参照点を提供すること、これまでの同様の属性の寄付者の平均的な寄付額などを情報として提供することなどが考えられる。

8)認知と仲介者の不足

 寄付検討者にその存在を知られていない非営利組織は、寄付先の候補になることはなく、高額寄付を受け取ることはできない。そのため、認知度の高い寄付先に高額寄付が集中する傾向がみられる。また、寄付先の比較サイト等の充実度も日本は米国に及ばない。

 これは、非営利組織側が認知度の向上に努力すること、その人に合った寄付先を紹介できる仲介者が活動を活発にすることで対応できる。COVID-19対応でいえば、三井住友信託銀行が開始した「新型コロナワクチン・治療薬開発寄付口座」は仲介者の不足を解消する試みだと位置づけることができる。

9)非営利組織側のキャパシティ不足

 高額寄付検討者は、小口寄付の検討者よりも、寄付をする際にスタッフの人柄などを考慮することが知られている。スタッフへの教育の不足により、問い合わせの電話やメールへの対応が適切になされない場合は、高額寄付の障害になりうる。また、非営利組織側の規模が小さく、大きな額の寄付を受け入れて活動を展開できるようなキャパシティがない場合も想定される。自分たちの組織の規模にとって不釣り合いな高額寄付を受けることは、組織運営上のリスクを伴う。

 これに対応するには、スタッフの教育に力を入れること、まずは小口寄付や助成金などの他の財源を使って組織キャパシティを高める、高額寄付の一部をキャパシティビルディングにあてさせてもらう等の方法が考えられる。

10)管理費用に対する忌避

 上記の9)のような場合でも、高額の寄付を分割交付し、一部の資金を活動そのものではなく管理費用(職員の採用活動と人件費、情報システムの構築、事務所の拡張など)にあてることができれば、非営利組織のキャパシティが向上してその後に交付される寄付金を有効に活用できるだろう。しかし、寄付検討者の管理費用への忌避(overhead aversion)が強い場合は、管理費用を自前の財源から支出できる非営利組織だけしかその高額寄付を受け入れられない、ということになる。

 これに対する対応としては、管理費用の重要性を説明することや、一部を管理費用にあてることを宣言した寄付の受け皿を設定することなどが考えられる。また、管理費用を忌避しない寄付者からの寄付を予め確保して管理費用にあてておくことによって、その後の寄付募集では寄付の全額を活動そのものにあてることができるというアドバイスを行っている論文[2]もある。



[1]Carroll, R., & Kachersky, L. (2019). Service fundraising and the role of perceived donation efficacy in individual charitable giving. Journal of Business Research, 99, 254–263. 

[2]Gneezy, U., Keenan, E. A., & Gneezy, A. (2014). Avoiding overhead aversion in charity. Science, 346(6209), 632-635.


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2020年5月4日月曜日

寄付をするときは、自分の気持ちに耳を澄まして

COVID-19の影響に対応するための様々な寄付キャンペーンが立ち上がっています。

おそらく、ソーシャルメディア上で他の人が寄付をしていることを知ったり、寄付を頼まれることも多くなったりするかもしれません。

私も本職はファンドレイザーであり、教科書には「寄付は堂々と依頼するべし」と書いてあったり、「寄付を集めるにはまず仲間づくりから」等という考え方があったりするわけですが、これらについてはちょっとした疑問を持っています。

というのも、ピア・プレッシャー(仲間との相互監視で生じる同調圧力のこと)が寄付の満足度を下げる、という研究があるからです。


Reyniers, D., & Bhalla, R. (2013). Reluctant altruism and peer pressure in charitable giving. Judgment and Decision Making, 8(1), 7-15.


このような論文を読むたびに、ファンドレイザーの役割とは何だろう、と考えます。

「ピア・プレッシャーをかければ寄付が集まりやすい、だから寄付検討者にピア・プレッシャーを感じてもらえる環境をつくろう」

というファンドレイザーがいる団体に、寄付をしたいと思うか。

もし自分が寄付を考えている立場だったら、ちょっと厳しいなと思います。

もちろん、ファンドレイジングを「必要悪」とみなして、人の命を救うために何がなんでも期限までに必要な額を集めるんだ、そのためには法に反さない範囲でどんな方法でも使うんだ、というファンドレイザーもいるでしょう。

どちらかというと、ピア・プレッシャーがかかりがちな状況においては、寄付検討者には「寄付をするか決めるのは後日でも大丈夫ですよ」と声をかけてあげた方が、倫理的に妥当なのではないかと思います。

(そして、このような悩ましい戦術を使うかどうかを悩むような場面を予防するために、戦略をしっかり考えて布石を打っておくということが必要なのだろう、と思います。実務をしていると、戦略のミスは、戦術では基本的には取り返せないと日々感じます)


一方で、ピア・プレッシャーには良い面もあると考えています。

寄付によって得られる嬉しさを、寄付検討者が事前に正確に予測できるとは限りません。

ピア・プレッシャーによって背中を押されて試しに寄付してみたら、「寄付して良かった!」と思えたという場合も想定されると思います。
ただ、こうしたポジティブな状況をつくるためには、寄付を受ける側に相応の心構えと組織的な能力が必要とされるようにも思います。



寄付をするときは、自分の気持ちに耳を澄まして。

それが、きっと寄付者にとっても、長い目で見れば団体にとっても、良い結果を生み出すと信じています。


今日も走りました。健康第一。



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2020年4月26日日曜日

大学・専門学校・病院等が寄付の募集をスタートする際の段取りとチェックリスト

COVID-19の影響で寄付募集に取り組むことになる人のために、本記事を執筆することにしました。
(最終更新:2022年10月20日)


私は大学に入った2000年からボランティアベースであしなが学生募金等の寄付募集キャンペーンに携わり、その後企業のマーケティング担当として勤務しながら、プロボノ(専門性を活かしたボランティア)などとしてNPOの寄付募集に従事し、その後国立大学での部局基金の募集に6年半ほど携わりました。現在は、大学院博士後期課程(経営科学専攻)で寄付募集について研究しています。

「寄付募集をスタートしたい」という他大学からの講演・研修を依頼されることも多く、短期兼業として対応させて頂いていました。

そのたびに、ゼロから寄付募集の体制を作ることの大変さを実感してきました。

しかし、ポイントを押さえて準備を行い、適切な募集活動を行うことで、多くの方々からあたたかい支援が得られ、集まった資金によって非常に大きな貢献が果たされることもあります。


COVID-19の影響を受けた非営利組織にとって寄付は重要な財源になりえる


現在、COVID-19の影響でアルバイト先がなくなる等の理由で、大学生が困窮しています。

複数の大学が、大学生の困窮に対応するため、またオンライン授業環境を整えるために学生に対して資金援助を行うとともに、寄付を募っています。

また、病院でも、多数の患者を受け入れて資金的に厳しい運営を強いられる場合、逆に患者数が減少したことで資金難に陥る場合が想定され、寄付募集を開始することも想定されます。

(寄付募集は、団体側が「始めよう!」と思ってスタートする場合もあれば、「寄付をしたい」というお申し出を頂くことでスタートする場合もあります。当然ながら後者の方が準備はバタバタしやすく、オペレーションの負荷がかかりやすいです)

民間の非営利組織(NPO法人など)ではもっとスピーディに、見切り発車ができることもあるかと思いますが、大学・専門学校・病院・福祉施設・美術館・博物館・図書館等では公的な組織としての説明責任を果たす必要があったり、リスク管理に対する配慮が必要であったりと、慎重な対応をしておくに越したことはないかと思います。

寄付募集をスタートするための段取りとチェックリスト


今後、より多くの組織が寄付を募る必要が出てくる場合に備えて、段取りとチェックリストを提供しようと思います。

日本では、まだ寄付募集の専門職である「ファンドレイザー」は少ないのが現状です。

総務や広報の部門の方が、ある日突然、寄付の担当もしなければならなくなるかもしれません。

そんな方のお役に立てば幸いです。

自分の経験とこれまでに学んだ書籍などから記憶に頼る形で記載していますので、順次思い出したことを追記していきたいと思います。

1)団体として、寄付を募集しはじめるという意思決定を行うための準備

寄付募集のスタートにあたっては、下記のような内容が網羅された企画書を理事会などに提出して寄付募集の開始可否を意思決定することになると思います。

これらはすべて1回の会議で決まることではなく、まず実施の方針が決まり、その後詳しい内容を付議するということもあり得ます。

寄付者のニーズと組織のニーズ(生徒の退学を予防したい、等)がマッチするよう、非営利組織マーケティングやファンドレイジングの書籍を読んで参考にしながら企画を立てられると良いと思います(が、そのような余裕がないことも多いと思います)。

決して、下記をすべて網羅するべき、というわけではありませんし、漏れている点もあるかもしれません。


<寄付募集そのものの企画>
・類似団体の事例、これまでにあった寄付や、寄付に関する問合せの情報
 (社会のニーズや、他の組織の状況を把握)

・寄付の使い道についての案と目標寄付額
 (団体内のニーズ。公的な資金ではできない○○に活用する、COVID-19の影響で必要になった○○に使うなど)

・寄付の受け入れ方法
 (寄付申込書提出後の銀行振込、オンライン決済、専用振込用紙など。
  クラウドファンディングも良いが経費がかかること、寄付者の個人情報が入らない場合があること等に留意)

・一口を何円以上にするか
 (オンライン決済フォームの仕様によって決まっていることもある)

・寄付者が受けられる税控除の情報

・寄付募集期間の案

・寄付を募る際の周知広報活動や告知先の案
 (メディアへの発表方法、同窓会への依頼など。概算費用もわかるとよい)

・寄付募集の趣意書の案
 (誰の名前で、どのような説明で社会に呼びかけるのか)

・組織内における寄付金の取扱規程の確認
 (もし存在しない場合は規程の整備)

<寄付を受けた後の対応>
・寄付の受け入れ決定の責任者または会議体、使い道の変更等の際の会議体はどれか

・寄付者への御礼の案
 (返礼品ありの場合、法的・倫理的に問題ない範囲になっているか等)

・寄付の活用状況の報告と寄付額の公表方法の案
 (ホームページで公表する、ニュースレターに掲載する、寄付者に郵送する等)


<組織体制>
・寄付者対応にあたる人員の確保見込みに関する情報
 (最低2名、専従が望ましいが兼務でスタートすることも多いのが現状)

・寄付の会計上の処理方法と経理部門の体制

・寄付に関する規程との整合性、必要な規程の整備状況
 (知らずに規程違反をしたり、恣意的な運営になることを避ける。プライバシーポリシーや文書管理規程も確認)

・非常に大きな額の寄付があった際に理事長や副理事長などがどのように御礼を行うかの案
 (電話で御礼する、感謝状に直筆でサインをする等)


<リスク管理>
・(特殊なケースや前例のないケースのみ)関連する通知や適法性に関するチェック状況

・物品寄付、有価証券や不動産の寄付を受け入れるかどうかのポリシー
 (物品寄付は検品や保管場所の確保などに手間がかかり、多く寄せられると対応に苦慮することもある)

・返金ポリシー
 (過誤入金の時は返金する、「気が変わった」では返金しない等を規程等に照らして決めておく)

・受け入れ辞退になるケース、トラブル時の相談先(顧問弁護士等)
 (利害関係者からの寄付、反社会的勢力と疑われるケースの対応などを予め決めておく)


2)実際に寄付を受け入れ始めることになった際の準備

組織としての決裁が下りた後も、実際に寄付を受け入れ始めるまでには、多くの準備を要します。

寄付検討者に対して良い対応ができず、「せっかく寄付しようと思ったのに、残念だ」と言われてしまうことのないようにしたいものです。

・寄付の申込書、感謝状、受領証などのテンプレート準備
 (他の部門で受け入れをしている場合は参考にさせてもらう)

・寄付の窓口部署(広報・総務などになることが多い)と経理部署での打ち合わせ
 -入金確認の方法と頻度
 -受領証の写しはどこの部署がどう保管するか
 -受領証はどこの部署からどう送るか、同封する書類は 等

・寄付呼びかけ文の作成

・寄付受け入れに必要なチャネルの確認、追加
 (寄付受け入れ用の銀行口座の確認、オンライン決済システムの契約など)

・寄付者の情報を保管するデータベースの検討、確保

・寄付募集ページの原稿準備、寄付募集開始のお知らせ文案の作成

・寄付募集に使うチラシの作成、印刷

・よくある質問集(FAQ)の準備、担当職員と共有
 (寄付をしたいと電話があったらどう回答するか、税控除について聞かれたら、等を整理)

・寄付に関するお問い合わせに対応する職員との打ち合わせ・研修
 (すでに寄付を募っている他の部局や組織から人を招いて打ち合わせや質問をする等)

・トラブル時に相談する顧問弁護士等へのあいさつ(電話やメール等でも)

3)寄付募集活動を充実させるための取り組み

・寄付者や寄付検討者の問い合わせに確実・迅速に対応できるよう、担当者を増員する

・NPOなどで寄付募集の経験のある人を採用する、寄付募集のコンサルタントに支援を依頼する

・日本ファンドレイジング協会などの研修を受けて自分たちの戦略を見直す

・マーケティング戦略を再度検討してみる

・遺贈寄付、相続財産の寄付について学習し、パンフレット等で受け入れを拡大する

・寄付の周知広報から受け入れ、寄付への御礼までのプロセスでボトルネックになっている箇所がどこかを検討して見直す

・寄付者にとっての利便性を高めるために、寄付受け入れチャネルを追加する(Amazon Pay等)


よくある失敗や苦境

・十分な人員が手当てされず、寄付検討者に適切な対応ができずクレームになる

・大きな額の寄付を振り込んだにも関わらず、入金確認連絡がないため寄付者が不安になる

・反社会的勢力や、見返りを求めての利害関係者からの寄付など、適切でない寄付を受け入れてしまう

・寄付の活用に関する意思決定フローが整備されておらず、寄付が適切に利用されない

・十分な寄付額が集まったにも関わらず寄付募集が継続され、寄付金が余ってしまう

・寄付募集の専門性を持つ人材を雇用せず、寄付が十分に集まらない


これらは、発生しないに越したことはない失敗や苦境です。

ぜひ、寄付募集に早くから取り組んでいる他の組織を参考に、先人と同じ轍を踏まないようにしていただきたいものです。

取り急ぎ、思いついたことを書き連ねてみました。

皆様の寄付募集活動が多くの善意を集め、大変な思いをしている人々の力になることを心から祈っております!

(寄付研究ノートも、3冊目になりました!)




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2020年4月19日日曜日

ハーバード大学の博士学生向けキャリア支援資料(200ページ!)が無料ですごい

博士後期課程に進むということで、世の中にはどのような博士学生向け資料があるのか、を調べてみました。

その中で見つけた、ハーバード大学の博士学生向けのキャリア支援資料がすさまじく充実していたので、共有します。

・アカデミックな職業の概要
・採択されたフェローシップ提案書とフェローシップ経歴書の見本
・学生と教員のアドバイス関係を最大限に活用する方法
・博士論文のテーマ決定から締め切りに間に合わせるためのポイント
・博士論文を書籍として出版のための方法
・大学等での仕事を獲得するための面接のポイント
・モデルとなる履歴書、履歴書、カバーレターの例

などが惜しげもなく、200ページ以上にわたって公開されています。


この資料はざっと読んでみたのですが、日本で博士課程を過ごす上でも非常に役立つと思いました。英語の勉強にもなります。



また、Natureが世界の5700人もの(理系の)博士課程学生に対して行った調査では、博士課程学生が直面する課題などが列挙されており、これも参考になります。


『好きすぎてつらい博士課程』


研究や博士課程について学べる有償の書籍では、下記のようなものがあります。
両方読んだのですが、本当に役立ちました。



 


  


・研究はそもそも「不確実なもの」ではあるけれど、そのマネジメントを放棄してしまうのは誰のためにもならない

・研究を「勉強」と峻別し、仕事として捉えて、戦略をもって進めていく

・研究を育てるための方法論や先人の経験を学ぶとともに、自分をコントロールする必要がある

・仕事の効率を上げるソフトウェア等も積極的に活用すべき

ということを学びました。

(ソフトウェアでいうと、学士・修士のころは知らなかったMendeleyというものがあります。
 無料の文献管理ソフトで、非常に便利です。
 東京大学が、その使い方の資料を公開しています)

こうした経験は、研究を支援する職員(研究支援者)としての仕事にも役立ちそうです。



COVID-19の影響で、今後の社会が見通しにくくなっていますが、そのような中でも(研究支援者としての道の傍らではありますが)学問の道をコツコツ進んでいきたいと思います。





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2020年4月12日日曜日

団体の目指す理想によって、寄付呼びかけにおける効果的な「感情」は異なるが・・・

かつて、私はNPOのコンサルティングに携わっていました。

そのようなとき、

「今の日本の社会情勢だと、この分野の活動には共感を得にくいな・・・」

というような団体に出会ったりして、無力感を抱いていたものでした。

そんな自分にとって、下記の論文は衝撃的なものでした。



「寄付を集めやすい団体、集めにくい団体がある」ということはよく指摘されています。
つい最近、下記のようなツイートも見かけました。




そのような中、上記論文は、

その団体がどんな道徳的価値の実現を目指しているかによって、「寄付を募る際に、どんな感情を引き起こすような訴求を行うべきか」が異なる

ということをフィールド実験と実験室実験の両面から実証したものです。

具体的には、様々な道徳的価値のうち、Care(ケア:弱い立場にある人への支援)を実現しようとする団体にはCompassion(慈善)、Fairness(公平:人々が等しい権利を得られること)を実現しようとする団体にはGratitude(感謝)を引き起こすようなキャンペーンが有効であるということを実証しています。

Abstract(概要)だけでも、多くのファンドレイザーや、ファンドレイジングコンサルタントに読んでいただきたいと思います。

きっと、これまで「寄付が集めにくい」と思われていた分野でも、より多くの人に理解・共感してもらえるメッセージづくりに役立つだろうと想像しています。

ただ、そのうえで、このように

自団体の利益(例えば寄付の増加)になるよう、寄付検討者に、ある感情を抱いてもらうべく作為的にコミュニケーションすること

が、ファンドレイジング活動においてどれくらい正当化されうるのか?

という問題についても考え、議論していきたいと思います。

(極端な例ですが、とにかく悲惨な写真を使うことで「悲しみ」の感情を引き起こし、注目を集めてクリック率を高めるという手法は倫理的に問題があると思います)

この論文が載っている雑誌はJournal of Consumer Researchという雑誌ですが、マーケティング研究者の寄付研究への貢献も近年大きくなってきているので、研究の流れをこれからも追いかけていこうと思います。


すっかり外出自粛生活で、カフェでコーヒーを飲めたころが懐かしいですね・・・。



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2020年4月11日土曜日

Google Scholarで「書評」と検索してみよう!

このブログでは前回も、外出がままならない中で、自宅でできる勉強・研究(おもに寄付の分野)の方法を紹介しております。


今回は、
  • ある分野に興味があって調べてみたい
  • でも論文を読むほどの知識はまだない
  • 専門書は高いしどれを読めば分からない

という方は

Google Scholarで「書評 (分野名等)」と検索すると良いですよ!

というお話。

通販サイトのレビューよりも、かなり有意義な情報に触れられます。


たとえば、「行動経済学」の書評を調べると


たとえば、「書評 行動経済学」で検索するとこのような検索結果が出てきます。

書評は多くが無料で読み放題!!

検索結果の1つを見てみましょう。


ページでは、ざっとこの書籍の内容が概観できるほか、書評を書いている研究者の視点から、この書籍がどういう意味合いを持つ本であるか、が読み取れます。

この書評では、

「経済的差別」というような、現代社会を眺めるときに知っておきたいキーワードのほか、

「フィールド実験」
「マッチングギフト」
「シードマネー」
「暖かな光」

など、寄付研究にとって重要なキーワードがどのようにこの書籍で紹介されているのか、事前にわかります。

kindleでも売っているので、実物を読みたい方は下記からどうぞ・・・!




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また、Twitterでも情報を発信しています。

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2020年4月4日土曜日

外出せずに今読める!研究者を目指そうか迷っている人(とファンドレイザー)のための無料資料・書籍など

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が猛威を振るっている今ですので、できるだけ出歩かずに、自宅で過ごしている方も多いと思います。(今こそそうするべき時だと思います)

COVID-19の対応で様々な分野の研究者の方々が奮闘されている姿を見て、科学的にデータから言えることを見出していく「研究者」という仕事にあこがれを抱く学生さんがいてほしい・・・!と願いながら、テレビやインターネットを眺めております。

さて、今回はそのような「研究者を目指そうか迷っている人」にとってぴったりの、無料で公開されている資料や、有償だけれど外出せず今すぐ買えるKindle本を紹介しようと思います。

ちなみに、産学連携が進むにつれて、研究者と企業人が仕事をすることが増えていると思いますが、これらの資料は「研究者がどんな責任を負っているのか」「なぜこの人たちは研究者をしているのか」を知りたい共同研究相手先の企業人や、研究者を顧客として仕事をする企業人、大学の新人職員や専門職員(私のように、ファンドレイジングの専門性はあるが大学や研究についての知識はなかった人など)にもおすすめです。

巣ごもり生活のおともに、どうぞ。
後半部分が、ファンドレイザーに役立つ、寄付研究の無料資料です。

『科学の健全な発展のためにー誠実な科学者の心得ー』

研究者を目指す人向けのテキストです。なんと無料公開。
「研究で絶対やってはいけないこと」が良くわかります。
また、博士・修士まで進むか迷っている学部生の方には、「研究の仕事」がイメージできて良いと思います。

内容の一部を、ご紹介します。

・研究の価値と責任
・研究の自由と守るべきもの
・利益相反
・インフォームドコンセント
・個人情報の保護
・優れたラボノートとは
・研究不正行為の定義
・(チームで研究を行う際などの)中心となる科学者の責任
・マスメディアを通じた研究成果の発信
・誰を著者とすべきか
・「サラミ出版」とは
・共同研究をどう進めるか
・研究費を適切に使用する
・査読者の役割と責任
・後進の指導
・科学者と社会の対話

「ああ、なるほど研究者はこういう責任を負って仕事をしているのか・・・」と、研究者の気持ちが少しわかるようになる、そんな資料です。
無料なので、ぜひ多くの方にご覧いただきたい。


次に紹介するのはこちら。


Kindle版なので、本屋さんに行かずに買えます。
こちらは、明るいトーンで、研究のおもしろさ、大変さ、ロマンを教えてくれる本です。

著者の先生の「臨床医をしながら研究もする」という生活のなかで、いかに研究時間をひねり出すか?という部分は、私のように実務者と研究者の二足の草鞋を目指す人間にとっては非常に勉強になります。


「寄付研究」を目指す学生さんやファンドレイザーの方へ


さて、寄付研究者を目指す方への資料は、下記にまとめてありますが、無料でもなくKindleで今読めるわけではありませんし、そもそも「目指す」という段階で読むと心が折れること間違いなしです・・・。


なので、「寄付研究っておもしろい!」と思ってもらえそうで、無料公開のものをチョイスしました。

1つはこちら。
行動経済学の観点から、マッチングギフトと寄付控除、どっちが寄付行動を促進する効果が高いのか?を検証した研究のプログレスレポートです。日本を代表する行動経済学者の方々によるもので、私もこの先生方の著書や論文、人となりに引き付けられて行動経済学に関心を持ちました。

佐々木周作, 黒川博文, & 大竹文雄. (2019). 寄付金控除 vs マッチング寄付: 日本の寄付税制の行動経済学的実験研究 (プログレス・レポート). 行動経済学, 12(Special_issue), S18-S21.



もう1つは、こちら。
ファンドレイジングに役立つ論文を探していた過去の自分に読ませたいくらい、ファンドレイジングに携わっている人にとっては本当に価値ある、かなり幅広く寄付について論じている研究です。

石田祐・奥山尚子(2012)『地域福祉を支える寄付の仕組みに関する研究』全労済協会, 公募研究シリーズ, no.21, 83p.

上記2つは、寄付研究に関心のある学生さんとファンドレイザーの方は、だまされたと思って、ぜひ読んでいただきたい!!!


では、本日はこのあたりで。

これから博士後期課程のコースワークが始まるので、こんなにブログなど書いていられなくなりそうですが、がんばります。



<おしらせ>
このブログでは下記のとおり、Facebookページも作っています。
また、Twitterでも情報を発信しています。

何かの方法でつながっていただき、本ブログの読者の方々と一緒に学んでいけることを楽しみにしております・・・!



ファンドレイザーの方のためのおすすめ書籍です

寄付を科学的に考えるための書籍リストです

社会人で博士を目指す方へのおすすめ書籍です



ファンドレイジング・アクションリサーチ研究会のオリエンテーションについて

 非営利組織における、ファンドレイジング(寄付募集)の研究をしております渡邉文隆と申します。 このたび、日本パブリックリレーションズ学会の研究会のひとつとして、ファンドレイジング・アクションリサーチ研究会というものを開催します。 これは、ファンドレイジング活動の改善と、論文執筆に...