2019年12月21日土曜日

"Eight Mechanisms that Drive Charitable Giving" 寄付を促進する8つのメカニズム

This week, I am going to pick up my favorite article on fundraising. Just reading the abstract of this article will be beneficial for practitioners. It covers more than 500 articles from a variety of disciplines and describes the eight mechanisms that drive charitable giving. Since it is published in 2007, you should read more recent reviews to cover new articles in last twelve years. Nonetheless, this was one of  very good starting points of fundraising research for me.

According to the article, there are eight mechanisms which drive charitable giving:
(a)awareness of need;
(b)solicitation;
(c)costs and benefits;
(d)altruism;
(e)reputation;
(f)psychological benefits;
(g)values;
(h)efficacy.

This is a review of papers that contained empirical analysis of charitable giving. Most of the studies were conducted in the United States, the United Kingdom, the Netherlands, and Canada. After reading this article, I was more interested in the charitable giving in other areas where this article did not cover. My interest is the difference of optimal strategy in potential charitable/philanthropic giving market.

For more information, please refer the website below.
https://understandingphilanthropy.wordpress.com/

The authors are Dr.René Bekkers and Dr.Pamala Wiepking. I really thank these two distinguished scholars for giving me a huge insight.

Dr. Bekkers has a twitter account. Dr. Wiepking is a co-author of "The Palgrave Handbook of Global Philanthropy". I would like to tackle this book in near future. 



本日取り上げるのはこの論文。500以上の論文を学際的にレビューした大変な労作です。

これによると、寄付を促進する8つの要素は、

(a)ニーズの認識
(b)寄付の呼びかけ
(c)費用と便益
(d)利他性
(e)評判
(f)心理的便益
(g)価値
(h)有効性

とのこと。実はこうした研究が米国のファンドレイジングにおいて十分に活かされているわけでもないようで、上記論文の中で「この本はファンドレイジングの実務についての本だが、科学的な研究を全く引用していない」などと指摘されているケースも出てきます。

掘っても掘ってもすごい学者、すごい論文が出てくる海外のフィランソロピー研究、おそるべし。

日本のファンドレイジング教育は米国のテキストをベースになされることが多いと思いますが、そのテキストが科学的な研究に立脚しているかどうか、立脚していたとしても市場環境の違い(上記論文は米国、英国、オランダ、カナダの論文を基に書かれている)を考慮しているか、というと悩ましいところ。

かくいう自分も、かつては経験論(年数だけは2000年からなのでわりと長いのですが)をマーケティングで補強した程度の知識でファンドレイジングを語ってきたわけで、反省しきりです。もっと勉強しよう、と思います。



2019年12月15日日曜日

Charitable giving: Handbook of Public Economics, Vol. 5 寄付研究についてのレビュー論文

Handbook of Public Economics, Vol. 5 contains a chapter "Charitable Giving" by Prof. James Andreoni and Prof. A. Abigail Payne. According to this chapter, the importance and popularity of research on charitable giving is evidenced by a number of recent review articles. This article itself is also a review published in 2013, which focuses on important contributions since 2006. There are four approaches in charitable giving research during this time period. Since there are little number of review articles in this theme in Japan, I could not restrain my excitement and felt great appreciation to the authors.



The first approach of charitable giving research is to look at giving as a simple individual economic decision. This seemed to be a natural starting point.

The second approach is to think of giving as a strategic interaction with many actors, such as donors, charity organizations, government and foundations, involved. This should be a familiar view for marketers, for it sees charitable sector as a market.

The third approach is to understand giving as social exchange. In this section, "The power of the Ask" is pointed out. The Ask for gift is an important role for fundraisers.

The last and newest approach is to recognize giving as a response to empathic, moral, or cultural urges. Maybe a section named "Is fundraising Bad for Society?" is shocking for fundraisers in Japan.

Personally I am interested in the difference between Charity and Philanthropy in each approaches. Because, as a marketer, I recognize that these two concepts require totally different communication strategy for prospect donors. This review seemed an essential literature for fundraisers and marketers like me, who wants to understand giving more deeply.

寄付について深く知りたい、というファンドレイザーやマーケターに強くおすすめできる総合的なレビュー論文がこの本の「Charitable giving」という章です。50ページで、2006年からの寄付研究がレビューされています。

これまでの研究について4つのアプローチに分けて論じています。

2019年12月7日土曜日

The Bright and Dark Sides of Altruism 利他性の光と闇

Today I read this article by Avner Ben-Ner and Fangtingyu Hu in the book "The Economics of Philanthropy". As they pointed out in the article, the bright side of Altruism is more familiar than the dark side. I, as a fundraiser, feel uneasy when looking at the dark side of altruism directly. However, it is necessary for we fundraisers to recognize negative effect of charitable giving and volunteer if we consider ethics and sustainability of our profession.

Apart from uneasyness as a fundraiser, I really enjoyed reading this article. It is clear that self-serving altruism or "warm glow" may cause oversupply of donation. Moral licensing theory is another thing I got interested in this article. Regading particularistic, parochial, and discriminatory altruism, there seemed to be an important implication for fundraisers whose strategy and activity may ignore the negative effect of charitable and philanthropic giving.

When I found this book at the Kyoto university library, I was so excited. I hope to be a scholar who is able to contribute to this research field someday.

ファンドレイザーは自分の仕事を「利他性を喚起する仕事」とみなして誇りを持っていることも多いと思いますが、当然ながら利他性にはネガティブな面もあります。"The Economics of Philanthropy"に収録されている"The Bright and Dark Sides of Altruism "というこの記事は、これまでの研究を踏まえて利他性のポジティブな面とネガティブな面をコンパクトにレビューしているものです。研究者だけでなく、ファンドレイジングの実務者にもぜひ読んでもらいたい内容でした。

このテーマで、日本語で無料で読める飯田高先生の記事も、下記にご紹介しておきます。私はこの記事で興味を持ち、英語文献の方に当たりました。
https://jww.iss.u-tokyo.ac.jp/jss/pdf/jss6702_023048.pdf






2019年6月16日日曜日

寄付者満足度とは?その定義と、あまりに少ない検索結果について

寄付者満足度について記事を書こうと思った時に、非常に驚いたことがあります。

それは、日本語で検索したときに、なんと「寄付者満足度」を含む記事が8件程度しかなかったことです。



ちなみに、「ファンドレイジング」という単語で検索した結果の件数は、200万件以上あります。



これは健全な寄付文化が日本で育っていく上で本当に良くないことだと考えており、この記事を書いています。

「寄付者満足度」の定義は日本語でも英語(donor satisfaction)でもインターネット上に発見できなかったので、Cambridge dictionaryのcustomer satisfactionという項目を参考に、本ブログにおける寄付者満足度の定義を考えてみました。

a measure of how happy donors feel when they give charitable contributions to a nonprofit organization:

「非営利組織に寄付者が寄付を行った際にどの程度満足したかの尺度」


ここをスタートとして、寄付者の満足について考えていきたいと思います。

誰かのために、世の中のためにと思って寄付をした人には、満足していただきたい、幸福になっていただきたいものです。



2019年5月3日金曜日

寄付の類型

寄付は、様々な視点で類型化することができます。

ⅰ)寄付者の種別による分類

寄付者は、個人か法人かによって分類することが可能であり、この分類を細かく分けていくこともできます。
米国のファンドレイジングに関する資料では、個人、企業、財団、信託など寄付者を分類し、それぞれについて獲得戦略を立てる考え方が一般的となっています。

ⅱ)寄付される資産の種類による分類

寄付という言葉に伴って一番よく想起されるのは金銭の寄付でしょう。
しかし、物品の寄付、有価証券の寄付、不動産の寄付など、寄付される資産の種類によって寄付を分類することも可能です。

特に、評価性資産と呼ばれる有価証券や不動産などの寄付は、米国において高等教育への寄付増大に寄与したとみなされており、日本の寄付拡大においても重要であるという指摘がなされています。
(福井文威著『米国高等教育の拡大する個人寄付』)

また、日本赤十字では、暗号通貨の1つであるビットコインの寄付を受け付けています。

労力の寄付は、通常「ボランティア」と呼ばれます。

また、弁護士などの専門家がサービスを寄付する場合、「プロボノ」と呼ばれることも増えています。

医療の文脈では、英語で移植用臓器の提供は”donation”、献血は”blood donation”と呼ばれていますが、日本ではこうした行為が「寄付」という言葉で語られることはほぼありません。(なぜなのでしょう・・・)

しかし最近では、病気等で髪の毛が抜けてしまった子ども等のためのウィッグ用の髪の毛の寄付を「ヘア・ドネーション」と呼ぶケースもあります。
 

ⅲ)寄付の方法による分類

現金の手渡しによる寄付、銀行振り込みによる寄付、クレジットカード決済による寄付といったように、寄付の入金方法による分類があり得ます。

また、寄付の募集方法による分類として、

  • 街頭募金
  • オンライン寄付(インターネット上で募集される寄付)
  • 毎月寄付(クレジットカードや自動引落による寄付)
  • 寄付つき商品(コーズリレーテッドマーケティング)
  • 遺贈寄付(遺言書による寄付)
  • ポイント寄付(クレジットカードのポイント等による寄付)
  • クリック寄付(クリック数に応じてスポンサー企業が行う寄付)
  • マッチングギフト

等があります。

米国においては、Planned Gift、Pledge、Outright Giftという分類も見られます(末尾の参考文献を参照)。

Planned GiftはPlanned Givingとも呼ばれ、遺贈、信託による寄付、契約を締結しての寄付などの、事前の交渉や協議を伴う計画的な寄付であるとされています。
通常、Planned Giftは税控除についても十分に検討されるため、寄付金控除のメリットを寄付者が享受できることが想定されています。

また、Annual Gift(毎年の寄付)、Monthly Gift(毎月の寄付)など、振込のタイミングによって分類されることもあります。こうした継続的な寄付は、非営利組織にとって将来の寄付額の予測を立てやすい利点があります。

ⅳ)寄付額による分類

米国のファンドレイジングに関する書籍では、最上位の金額の寄付をPrincipal Gift、$10,000から$100,000程度の高額寄付をMajor Giftと呼ぶこともあります。

少額の寄付は、日本では小口寄付と呼ばれています。

ただしこれは寄付を受ける側にとっての論理でしかなく、可処分所得や寄付可能な資産額が寄付者によって異なるため、$100の寄付を高額寄付と感じる人もいれば、$100,000の寄付を高額だと感じない人もいます。

ⅴ)寄付の目的からの分類

その寄付が組織全体の運営に使われる場合(Unrestricted Gift)、特定のプロジェクトやキャンペーンの支援に使われる場合(Program or Project support)、大学基金(endowment)や建物等の資産に組み入れられる場合(Capital Gift)など、寄付の目的によって分類されることがあります。

日本の大学では、大学全体への寄付ではない、特定の学部や研究所への寄付を「特定基金」で受け入れたり、「特定寄附金」として扱うことがあります。これは上記のProgram or Project supportに対応すると言えます。

ⅵ)寄付の動機による分類


寄付の動機としては、行動経済学の観点から、

  • 純粋な利他性に基づく寄付
  • 暖かな光(寄付行為から寄付者が得るポジティブな感情)に基づく寄付
  • 互恵性に基づく寄付
  • 同調性による寄付
という4つが指摘されています。
当然ながら、寄付者はこの4つの動機のうち複数に基づいて寄付を行うことがあり得るわけですが、こうした理論的な背景のある分類は、寄付をより深く理解するために非常に大きな助けになります。

参考文献
 

寄付の構造ー寄付者、寄付の受け手、寄付の受益者

ファンドレイジング活動を行う上で知っておきたいのが、「寄付の構造」です。


寄付という行為が成立するためには、寄付者と寄付の受け手が別個に存在する必要があります(つまり、自分から自分へ寄付する、という行為は成り立たない)。

一方、寄付の受け手と寄付の受益者が別個に存在するかどうかについては、法的には2つのパターンがあるとされています。つまり、寄付の受け手=寄付の受益者、というパターン(贈与型)と、寄付の受け手≠寄付の受益者(信託型)というパターンがあり得るのです。


贈与型の寄付

寄付の受け手が寄付の受益者である場合は「贈与型」ともいうべき寄付であり、寄付の目的が、寄付の受け手に利益を与える点にある場合を指します。

こちらは、贈与契約または条件付き贈与契約に近い法的性格を持つことになります。寄付の使途が指定されている場合は、負担付贈与であるという解釈も可能であるという説があります。

信託型の寄付

寄付の受け手と別個に受益者が存在する場合は「信託型」ともいうべき寄付であり、寄付の目的が、第三者(受益者)に利益を与えることである場合を指します。

この「信託型」に該当する寄付は、信託に近い法的性格を持つことになります。

Cambridge Dictionaryによれば、Donationは”money or goods that are given to help a person or organization, or the act of giving them”と定義されており、贈与型が人への寄付、信託型が組織への寄付、と整理できるかもしれません。


贈与とも信託とも言い難い寄付

日本における寄付の統計資料である『寄付白書』などでは寄付の一部に含まれている「賽銭」は、寄付の受け手である宗教法人に利益を与えるための贈与とも、第三者のための信託とも解釈しがたいように思われます。

強いて言うならば自己の利益を願っての寄付のように思われるので、自己目的型寄付とでも言うべきなのでしょうか。

一般に、「寄付」と呼ばれる行為すべてを法的観点から厳密に定義できるとは限らないという側面もあります。

この意味で、法的な意味での寄付は必ずしも厳密に定義されておらず、自主的公益信託ともいうべきであるという金井憲一郎先生の主張(下記論文を参照)は、寄付に関する法整備が必要であるという指摘と相まって説得力があります。
http://ir.c.chuo-u.ac.jp/repository/search/item/md/rsc/p/7165/


このページでは、寄付の構造として、寄付者、寄付の受け手、寄付の受益者という3つの主体があり得ることを確認しました。

そもそも、というところから寄付を考えるにあたって、この3つの主体がどんなかかわり方をするのかは大切な切り口だと思っています。


2019年4月14日日曜日

寄付

そもそも、寄付とは何なのでしょうか。

寄付の定義を辞書で引くと、

「金品を贈ること。特に、公共の団体や社寺などに金品などを贈ること。」
(三省堂大辞林)

とあります。

法的には、来栖三郎先生による

「贈与が社会公共のために為されるときは寄附と呼ばれる」

との見方もあります。

税務上でも定義がなされており、国税庁HPには交際費等と寄附金との区別として、

「寄附金とは、金銭、物品その他経済的利益の贈与又は無償の供与をいいます。一般的に寄附金、拠出金、見舞金などと呼ばれるものは寄附金に含まれます。ただし、これらの名義の支出であっても交際費等、広告宣伝費、福利厚生費などとされるものは寄附金から除かれます。」

という記述がみられます。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5262.htm


また、寄付金控除の適用される認定NPOになるための指南を行う民間非営利団体のウェブサイトでは、

「任意性があること」(強制されたものでないこと)
「対価性のないこと」

を条件として挙げています。
http://www.npoweb.jp/2013/04/%E3%80%90%EF%BC%91%EF%BC%91%E3%80%91%E3%80%8C%E5%AF%84%E4%BB%98%E3%80%8D%E3%81%AE%E6%9D%A1%E4%BB%B6%E3%82%92%E6%AD%A3%E3%81%97%E3%81%8F%E7%90%86%E8%A7%A3%E3%81%99%E3%82%8B%E3%80%82/

おおまかに言えば、

1)社会公共のためであること
2)任意の行為であること
3)対価がないこと

の3要件が寄付が成立する要件とされているようです。

逆に言うと、これらの要件を満たさないような状況が発生したときに、その寄付の正当性が崩れるということになります。

社会公共のためと思って多くの人が寄付した団体が、実は反社会的な行為を行っていた場合には、大きなスキャンダルになるでしょう。

任意の行為であるはずが、実際は慣習的にほぼ強制的な支出である場合も法的な問題になります。

また、「ふるさと納税」の高額返礼品問題(下記リンク)は、「3割」を超える対価が提供されていることが問題視されている、ととらえることができます。
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/file/report20180706.pdf


ファンドレイジングの「そもそも」を考える上で、寄付とは何か、という視点は持ち続けたいと思っています。

なお、「寄付」という表記と「寄附」という表記の両方を見かけることがありますが、後者が公文書や法令などで用いられる表記であるというだけで、意味上の違いはないと考えています。


ファンドレイジング・アクションリサーチ研究会のオリエンテーションについて

 非営利組織における、ファンドレイジング(寄付募集)の研究をしております渡邉文隆と申します。 このたび、日本パブリックリレーションズ学会の研究会のひとつとして、ファンドレイジング・アクションリサーチ研究会というものを開催します。 これは、ファンドレイジング活動の改善と、論文執筆に...