Friday 17 January 2020

働きながら38歳で経営科学の博士号を目指すことになった流れ

今回の記事では、働きながら経営科学の博士号を目指すことになった流れを記録しておこうと思います。

1.モヤモヤ期(5年くらい)

数年前から、自分はこれからどうしたらよいのか、とあれこれ悩んでいました。

実務者として働きながらも、もっと勉強したいという思いを抱えつつ、いろんな本を読んだり、MOOCでいくつかの授業を受けてみたりしていました。

『計量社会科学』という本がとても面白くて、この本をしっかり読めるようになりたい、書かれていることを実務に活かしていきたい、といったことを考えていました。

マーケティングに関わる人ならおそらく多くの方が読んでいるであろう『確率思考の戦略論』という本にも、非常に熱中しました。こうした読書の中から、もっと勉強したい・・・!という熱が高まっていました。

そんな中、2015年にkindleで手に入れたのがこちらの本でした。



『働きながらでも博士号はとれる』 というストレートなタイトル。その名前のとおり、著者の方が働きながら博士号を取得したプロセスをたどりながら、どのような準備・心がけ・作戦が必要なのかを書いた本でした。

「そうか、ただ実務者として仕事をしながら勉強するのではなく、博士課程に入るという手があるのか・・・」と思った記憶があります。

博士課程であれば、

・指導者に相談しながら
・ただ勉強するのではなく、新しい学問的貢献を目指して
・明確な年限と目標を持って

学ぶことができる、と考えました。しかし、それにかかる費用や時間、様々な困難を考えるとまだモヤモヤしていました。
モヤモヤしながらも、あれこれ論文を読んだり、何とかブログで自分の研究した内容をまとめて発信してみようと試みたりしていました。

2.博士課程を真剣に考え、準備して出願(2.5か月)

2019年秋にある人が亡くなり、そのお別れの会に参加しました。その帰り道、一緒にいた人に背中を押してもらって、出願を決心しました。

自分のテーマは非営利組織の寄付マーケティングなのですが、それにアプローチするための分野としては、政策科学と経営学で迷ったあげく、経営学を選びました。

やはり自分は、学術コミュニティへの貢献だけでなく、得られた学問的知見を(それは必ずしも自分が生み出した学問的知見でなくて良いのですが)非営利組織における実務者として社会に実装して、現実を変えていくことに関心がある、と思ったからです。
学部時代は総合学部で学んでいたので、経営学の持つ学際性も自分に合うのではと思いました。

政策科学的なアプローチで学んだとしても、いま既に30代後半である自分が政策立案側になることはないだろう、ということも決定に影響しました。逆に、年齢が上がるにつれて組織経営に近い立場で仕事をすることが多くなる中、体系的に経営を学んで自分を叩き直さなければ、という意識もありました。

指導教官候補の先生にコンタクトさせて頂き、研究計画にゴーサインを頂いて出願したのは京都大学の経営管理大学院でした。
http://www.gsm.kyoto-u.ac.jp/ja/education/management-science/277-japanese-category/educational-activities/eductional-structure/doctor-of-philosophy.html

お忙しいところお時間を割いていただいた指導教官候補の先生や、研究計画に個人的にアドバイスを頂いた方々には、本当に感謝しています。


3.出願後、経営学全般と研究について学ぶ(1カ月)

出願後、「自分の専門分野(非営利組織の寄付マーケティング)についての論文は読み続けるとして、そもそも経営学についてもっと知っておいた方が良いのではないか・・・」とあらためて読んだのは下記の本でした。

『ハンドブック経営学』 



これがまた本当におもしろかったです。組織で働く人が行き当たるであろう様々な課題に、科学的なアプローチで迫る、大変刺激的な読書体験でした。

早稲田大学の入山先生 が書かれた下記の書籍も、最近の経営学研究の動向を学ぶのにとても役立ちました。



『ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学』

自分の専門分野は英語の論文を直接読めても、少し分野が外れると「ざっと分野全体を把握するのに適切な書籍」を探すのに苦慮します。そのようなときに、一般向けに書かれたこのような書籍は非常に重宝します。興味があれば、参考文献で挙げてくださっている原著にあたれば良いわけで、このような経営学の書籍があるのは本当にありがたい。

また、研究とは何か、博士課程とはどういうプログラムなのか、ということについても本を読みました。前回の記事で紹介した『研究の育て方』もたいへんな名著でして、大学院入試に向けて、この本を使って自分の研究計画の客観的な位置づけを見直したりしています。

それに加えて、下記の書籍も本当に読んでおいて良かった本です。
『博士号のとり方[第6版]―学生と指導教員のための実践ハンドブック―』

 
指導教員とどうコミュニケーションをとるべきか、博士課程の特徴とは何か、想定されるトラブルにどう対処するのか、自分が博士課程を目指す者としてどの程度の準備ができているのか(チェックリストで自己診断できる)など、さすが世界的なベストセラーと思える本でした。

本職は研究者を支援する職種なのですが、「研究とは何か」を知ることで、自分の「研究支援者」という仕事についてもより深く理解できたという収穫がありました。

4.モヤモヤ期ふたたびか?それとも・・・

改めて振り返ると、モヤモヤ期の長いこと・・・。しかし、この時期に悩むだけでなく本や論文を読み、MOOCを受け、あれこれとアイデアをノートに書いてみたりブログに書いたりしていたことがなかったら、この短期間で研究計画をまとめることはできなかったと思います。

そして、入試に落ちればまたモヤモヤ期に後戻りかと思うと、正直なところげっそりするのですが、とにかく入試準備をがんばりたいと思います。




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坂本治也先生編著『日本の寄付を科学する 利他のアカデミア入門』のうち、2つの章を執筆しました。 2023年12月8日が出版予定日です。11月27日現在、下記のとおりAmazonから現在予約できる状態になっています。 私は、 第10章 分野によって寄付行動に違いがあるのはなぜか? ...