academist Prizeでの発信をスタートしてからはブログ更新をacademistの方に移行していましたが、今回は重要な資料が発行されたので、研究ブログの方でアップします。
『拡張する研究開発エコシステム 研究資金・人材・インフラ・情報循環の変革に乗り出すアントレプレナーたち』
https://www.jst.go.jp/crds/pdf/2022/RR/CRDS-FY2022-RR-03.pdf
これは、国立研究開発法人科学技術振興機構 研究開発戦略センターによる約60ページにわたるレポートで、日本の研究開発の未来にとって重要な示唆を与えてくれるものだと考えます。
本レポートに対しては、自分も寄付募集の研究者としてヒアリング協力をさせていただいたという経緯もあり、ご紹介したいと思いました。
「フィランソロピーは、その科学への投資額を増やしているだけでなく、研究開発エコシステムの拡張・変革の先導役も果たしてきた」(p43)
という表現のとおり、寄付が研究開発において果たす役割は大きいものです。
一方で、こうした寄付は、必ずしも優れた研究開発を行っている機関や研究者に対して自然と寄せられる、というわけではありません。
寄付は、情報発信や寄付の依頼によって生じる面も強く、私が追求したいと考えている寄付募集の科学(Science of Fundraising)はその面で研究開発エコシステムの発展に貢献できると考えています。
寄付は言うまでもなく、寄付をする側が大きなパワーを持っている社会的な営為であると考えられます。
一方で、小さな額の寄付であっても、それが集まることで大きな力になる、ということもあります。ごく少数の個別具体的なmajor giftを予測することは難しくとも、そうでない、一般の方々から寄せられるご寄付については、その金額や件数の確率論的な予測も可能になるでしょう。
ある活動から得られる成果の予測可能性が高まることは、その活動に対する先行投資を容易にします。
研究開発エコシステムを発展させるための先行投資をしやすくする、というのが、「寄付募集の科学」が果たすことのできる役割のひとつであると考えます。
上記のレポートでは、様々なプレイヤーが研究開発エコシステムの中で果たしている、果たそうとしている役割について豊富な情報が掲載されています。
そして、その中での「寄付募集の科学」の役割も見て取れるかと思います。
ぜひ、ご覧いただければ幸いです。