Monday, 24 February 2020

問え。発見せよ。(論文検索に使っているサイトのリスト)


カリフォルニア大学サンフランシスコ校に、”Question. discover.”というフラッグがかかっていました。

問え。

発見せよ。

問いを持って仕事をしたり生きていくのは、「発見」のある人生にとって必要な条件なのだろうと思います。

さて3連休、コロナウイルスの影響であまり外出もしていないので、今日もブログを更新しようと思います。


論文を読んでみよう

このブログを読んでいる方には、

「経営学やマーケティング、寄付募集(ファンドレイジング)に関する論文を読みたいけれど、どうやって調べればよいかわからない」

「社会人大学院に進むために勉強しているが、参考文献が一般書ばかりになってしまう」

という方もおられると思います。

オープンアクセスの論文ならば無料で読めたりするわけですから、使わない手はありません。
この記事では、(大学の図書館以外に)私がよく使っているサイトをすこしご紹介します。

Google Scholar    http://scholar.google.co.jp/

Google scholarはおそらく一番有名な論文検索サイトですよね。

しかし、個別の出版社などのウェブサイトも対象にすると、より広く文献が探せます。

Wiley                 
https://onlinelibrary.wiley.com/

Taylor & Francis 
https://www.tandfonline.com/

SAGE
https://journals.sagepub.com/search/advanced

Science Direct
https://www.sciencedirect.com/

Proquest
https://search.proquest.com/

Springer
https://www.springeropen.com/
https://link.springer.com/

Emerald
https://www.emerald.com/insight/

Directory of Open Access Journals 
https://www.doaj.org/

Semantic Scholar
https://www.semanticscholar.org/

Scopus 

Web of Science 


また、イギリスの博士論文が検索できるサイトもあります。


Ethos
https://ethos.bl.uk/SearchResults.do

このページの内容は、順次追加していこうと思います。

ちなみに書籍で寄付研究をざっと把握するには、こちらのページをご覧ください。
https://watanabefumitaka.blogspot.com/p/blog-page_12.html?m=1

どんな検索キーワードを使うか?


検索するときには、自分の関心あるキーワードに加えて"review"や”overview”といったキーワードで探すと、広く分野をカバーした論文が見つけやすいです。

「マーケティングに行動経済学がどう使われているのだろう?」といった問いならば、"marketing behavioral economics"というように[実務分野 学術分野]で検索するのもおすすめです。

このパターンでは、

"Fundraising  game theory"
(ファンドレイジング ゲーム理論)

なども考えられますね。

ぜひこれを利用して、

Question. discover.

をお楽しみください!

Saturday, 22 February 2020

大学院博士後期課程に合格しました。Twitter更新をやめ→られませんでした

大変なニュース、情けないニュース、恥ずかしいニュースが多い昨今ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

昨日、受験していた京都大学 経営管理大学院 博士後期課程の二次試験の結果発表があり、(絶対無理だと思っていたのですが)なんと合格しておりました。

これまで個人的に研究していたことを、大学院で研究させてもらえる。

本当に嬉しくてたまりません。

個別にお礼のご連絡をしていましたが、多くの方々に多くを教わり、刺激を受け、背中を押され、助けていただいて受験できました。その方々のご厚意を無にすることがなかったのも大変嬉しいです。


博士後期課程は3年という制限があります。また、子育て中かつフルタイムで管理職をしながらの社会人大学院生なので、すきま時間はすべて研究やそれに必要な勉強にあてます。


「やめること」を検討し、まず、すきま時間を奪ってしまいがちなTwitterの更新をやめることにしました。(2020年3月16日追記:やめられませんでした)

Twitterから偶然に得るものも多いので悩ましいですが、この3年は、決まっているコースワークと論文に集中します。

酒も去年からほぼやめています。

このブログも止めるか一瞬迷いましたが、そもそも自分の研究は、学術研究コミュニティへの貢献だけでなく、一般の寄付者の方々やファンドレイザーの方々への貢献も目指すものなので、続けることにします


これからも、本ブログをどうぞよろしくお願いします!















Saturday, 15 February 2020

新型コロナウイルスとマスクの例から、消費者の意思決定プロセスを考える

新型コロナウイルスが猛威を振るっているなかではありますが、今週も寄付研究のためのブログ更新です。

今回は新型コロナウイルスによる肺炎をテーマに、寄付研究のためのアプローチとして私がいま勉強している意思決定論の話を書こうと思います。


今回の新型コロナウイルスによる肺炎の流行によって、マスクが大変な品薄になりました。

専門家のなかには、一般に売られているマスクは、「マスクをする人にとっての予防」よりも、むしろ「感染を拡大しないため」のものである、と指摘した方もおられました。

つまり、マスクが品薄になるのは、合理的な消費活動によるものではない、という指摘だとも言えます。

この話を、意思決定の理論から考えるとどうなるか。

精緻化見込みモデル

ペティとカシオッポによる「精緻化見込みモデル」という意思決定モデルがあります。

消費者は、消費に関する態度の形成を、

論理的に決める中心的ルート
と、

感情的に決める周辺的ルート

に分けるものだ、というものです。

前者では論理的に商品を評価し、後者ではイメージなどの感情的な要因で商品を評価し、態度を決める。

どちらのルートで態度が決まるかは、その消費者の動機付けの程度と、商品評価能力で決まる

・・・というモデルです。


具体的には、精緻に考える動機が強い場合(たとえば、商品が高額である等)では、消費者の態度形成は、図の下方向、中心的ルートに向かいます。

しかし、精緻に考えるための能力がない場合(たとえば、商品についての知識があまりない等)は、右方向、周辺的ルートでの感情的な意思決定が大きなウエイトを占めてしまいます。

新型コロナウイルスによる肺炎の例では、ほとんどの消費者の方々は、

1)マスクは安価なので精緻に考える動機があまりない

2)マスクの性能についてよく知らないので精緻に考える能力がない

ということで、感情的意思決定のウエイトが高くなってしまったのだろうと考えています。



このモデルは、下記の書籍で平易に解説されており、大変勉強になります。



この書籍で精緻化見込みモデルについて「注目すべき点」として描かれているのは、

・中心的ルートによる意思決定のウエイトが高い場合には、構築された態度は強く選択に結び付きやすい

・周辺的ルートでの態度は相対的に弱い態度であり、他の情報が加わると変化しやすい
(たとえば、「マスクが高値になっているらしい」と聞いたことで、買おうという態度がなえてしまう等)

というポイントです。

もちろん、消費者はどちらかのルートだけで態度を決めることは少なく、両方を考え合わせて態度を決めることが圧倒的に多いわけですが、どちらのウエイトが大きいのか、を検討することで、選択行動を予測しやすくなります。


寄付に応用するとどうなるか

寄付にこの理論を応用するとどうなるか?というのが、現在私が取り組んでいる論文のなかで出てくる課題です。

寄付は一般的に感情的な意思決定だと思われていますが、精緻な意思決定をするべき(精緻化の動機が高まる)場面としてはどんなものがあるのでしょうか。

ファンドレイジングに携わる方ならば、少し考えただけでも、遺贈や相続財産の寄付など、精緻に決めなければならなさそうなシーンが思い付きますよね。

また、精緻化の能力を高めるためには、ファンドレイザーはどういう情報を提供すれば良いのでしょうか。

つまり、どうすれば、寄付者にとって納得できるような意思決定ができるのでしょうか?

日々、こんなことを考えています。


Monday, 10 February 2020

大学生だった自分の人生を変えた一冊の本

先日、下記のような記事を書きました。

「成功事例」でなく、「理論」から寄付募集を考える
https://watanabefumitaka.blogspot.com/2020/02/blog-post.html


実はこちら、私自身が、かなり「事例」にのめり込んだ研究を学士・修士時代に行ってきたことに対する反省が多分に含まれています。




私は、基本的に、自分を「実務の人」だととらえています。

空想することよりも、現実を少しずつでも変えていくことを志向しています。



実務は実験ではないので、まったく同じシーンは二度と訪れません。

その二度とない実務のなかに潜り込んで、周囲の人と一緒に仕事をしつつ、「もう一人の自分」が現場を観察し、何かを学んでいく、ということがとてもおもしろいと思っていました。


これは、2000年に、あしなが学生募金という募金活動のボランティアスタッフになったときに最初に感じたことでした。


募金活動の成功に全力を尽くしつつも、何が一番重要な成功要因だったのか、誰のどんな言葉がその場の空気を良くしたのか、なぜみんながこのボランティアを続けるのか、といったことを考えてきました。

「善意」が人を動かし、お金儲けでない活動(ボランティア・向社会的行動)に駆り立てるのが非常に不思議で、これは相当な時間をかけて追いかけたいテーマだなと思ったものでした。


それがあまりにおもしろくて、大学2年を終えてブラジルに行き、サンパウロのHIV陽性者の方々の団体でボランティアを始めたり、帰国して1年大学生をやったあとにウガンダに渡って、NGO活動をしながらエイズ予防について研究をしていました。

エイズというのは恐ろしい病気と言われていた一方で、「コミュニケーションの病」とも言われ、偏見にどう対応するのか、予防にマーケティングを使うとどうなるか等、興味は湧き出るばかりでした。
(学士の論文は、ブラジルとウガンダにおけるエイズ予防戦略についてのものになりました)

そうした実務をしながらの思考を支えていたのは、下記の書籍でした。




フィールドワークの技法―問いを育てる、仮説をきたえる

この書籍によって自分は、「ただ実務をしながら考える人」から「参与観察者」になったと思います。

ふわふわしていた「現場で観察する」という活動を、明確な「フィールドワーク」にするための方法論を教えてくれた本です。

手に取ったとき「これは、自分のための本だ!」と興奮したのを覚えています。
まったく、何度読み返したかわかりません。



企業に入ってマーケティングを担当するようになった時にも、環境・CSR担当者というコミュニティに入り込んで、その方々の価値基準、おかれた環境、個人として優先したいこと、会社から優先しなさいと言われていること、などなどを仕事をしながら観察し、理解しようと努めていました。

2010年前後くらいでしょうか、エスノグラフィーがマーケティングや商品開発の手法として注目されるようになり、にわかに自分の勉強してきた分野がマーケティングに役立つよ!と言われるようになって、驚いた記憶があります。



フィールドワークによって得られた生の情報は、非常に貴重な「事例」になることがあります。

しかしその「事例」は、簡単にそのなりゆきを再現・再生産できるものではなく、あくまで仮説を提示するために機能するものだと考えています。

再現性を高めるためには、「こういう条件下でこういう行動をすれば、これが起こるはずだ」という仮説を基に行動して、予想通りにならなかったらまた考えて、を繰り返すことになります。



まだ20代だった自分は、現場のおもしろさに熱中し、自分で仮説をつくることに夢中になるあまり、「すでに分かっていること(先行研究)」や「ある程度検証がなされている理論」を調べ尽くして仕事にあたることができていませんでした。

(その面では、上記の本にのめり込みすぎた、とも言えるかもしれません)


30代になって、今の職場に着任し、論文を調べたり本を読んだりして、先行研究や理論を手にしたうえで実務にあたれたのは幸運だったと思います。



日本の寄付研究には、研究者という視点のものからがほとんどで(当然ですが)、経営学者の視点からのものが少なく、ファンドレイザーの視点のものがさらに少なく、最も少ないのが寄付者としての視点からのものだと認識しております。

寄付者のコミュニティに参与観察者として入り込み、その内側からファンドレイザーとのやり取りを分析できたりしたら、きっとユニークな研究になるのでは・・・・!と思ったりしています(が、まずは先行研究のチェックをひたすら行っています)。



事例の力と、理論の力。両方カバーした上で、より深く寄付について理解し、より良い寄付体験を寄付者にお届けしたり、困っている非営利組織を助けたりできるようになっていきたいです。

Sunday, 9 February 2020

大学におけるファンドレイジング:マレーシアとオーストラリアの視点からの論文

日本の大学経営、大学基金ファンドレイジングにとって参考になる論文があったので、これは紹介しなければと思いブログを更新しております。

4年前の論文ですが、マレーシアとオーストラリアの大学におけるファンドレイジングについての論文です。


Philanthropic Fundraising of Higher Education Institutions: A Review of the Malaysian and Australian Perspectives

https://www.semanticscholar.org/paper/Philanthropic-Fundraising-of-Higher-Education-A-of-Rohayati-Najdi/d1d4b2605e5943cd598fe0ddc092b054573e8b55


日本も、大学が公的な資金の不足からどんどんファンドレイジングに参入しているように見えますが、マレーシアやオーストラリアでも同様の資金不足に直面しているというのは驚きでした。

・組織的なファンドレイジングの成功に影響を与える要因

・マレーシアとオーストラリアの大学のフィランソロピーにおける相違点と類似点

・寄付者による寄付を阻害する要因

・寄付者の内的、外的な動機要因

などがまとまっている、レビュー論文です。

参考論文数は135。この量の論文をレビューする著者の先生方に、大変感謝です。

ちなみに、寄付全般についてのレビュー論文などがまとまった参考図書は下記にまとめています。こちらもご参照ください。

https://watanabefumitaka.blogspot.com/p/blog-page_12.html


日本の大学ファンドレイジング

日本においても、大学ファンドレイジングはどんどん重要度が増していることを肌で感じています。

日本ファンドレイジング協会には大学チャプターがあり、下記ページやFacebook,勉強会などで情報発信しています。

https://jfraac.jimdofree.com/

私もメンバーに加えて頂いています。

大学所属でなくても、教育や研究へのファンドレイジングに興味がある方なら誰でも参加無料ですので、よければぜひ。

https://jfraac.jimdofree.com/%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%90%E3%83%BC%E5%8B%9F%E9%9B%86/


Saturday, 8 February 2020

ゲーム理論で「寄付」を分析した論文のこと

寄付研究の世界には、Andreoni先生という偉大な研究者がおられまして、warm-glow(直訳すると「あたたかい光」。寄付そのものから寄付者が受ける効用のこと)という概念を提唱したことでよく知られています。

Andreoni先生のすごい論文は他にもたくさんありますが、その中でも(前回の記事でも触れたのですが)一生懸命自分が読んでいるのが下記の論文です。

https://econweb.ucsd.edu/~jandreoni/Publications/JPE98.pdf
Journal of Political Economy, 1998, vol. 106, no. 6

20年以上前の論文ですが、ファンドレイジングに関わる人には非常に役立つ考え方だと思います。

ゲーム理論で寄付を考えるという部分も非常におもしろいのですが、この論文では、「ある一定額の寄付が集まらないと社会に対する効果が出ないような活動」を設定しています!

たとえば、公共の施設を寄付で建てようとしたとき、建設に必要な額が集まらないと、その施設を使ってもらうことはできませんよね。

そのようなキャンペーンは、「X円で途上国の子どものための薬がY人分買えて、命が救えます!」といったキャンペーンと比べるとファンドレイジングの難易度が高いと思われます。

寄付を検討する方の立場からすると、「自分が多少寄付しても、建設に必要な額が集まるかわからないしな・・・」「建設に必要な額が集まらなければ、寄付が無駄になるかもしれないぞ・・・」といった懸念が出てきます。

こうした難しさが、なぜ発生してくるのか?を、ナッシュ均衡(Nash equilibrium)を使って鮮やかに描いています。

そして、その「均衡」を破って寄付を募るためのリーダーシップギフト(Leadership gift:キャンペーン正式開始前の大型の寄付)の効果などを理論的に説明しています。

こうした理論は、他の理論(例えば行動経済学など)とともに、クラウドファンディングにも応用されています。

(寄付を募る側だけでなく)寄付をする側の立場の方々にも、より良い意思決定のために、このようなモデルの話を紹介していきたいと思っています。


意思決定といえば、こちらの本も大変おもしろかったのでご紹介。様々な学術研究から、よりよい人生を送るための意思決定方法について(そして人が陥りがちな思考のクセなどについて)平易に書かれています。

Think clearly 最新の学術研究から導いた、よりよい人生を送るための思考法



日本語で読んだ紙の本があまりにおもしろかったので、英語の勉強がてらKindleで英語版を買いました。
研究に必要な英語力もがんばって高めたいと思います。