Monday, 4 May 2020

寄付をするときは、自分の気持ちに耳を澄まして

COVID-19の影響に対応するための様々な寄付キャンペーンが立ち上がっています。

おそらく、ソーシャルメディア上で他の人が寄付をしていることを知ったり、寄付を頼まれることも多くなったりするかもしれません。

私も本職はファンドレイザーであり、教科書には「寄付は堂々と依頼するべし」と書いてあったり、「寄付を集めるにはまず仲間づくりから」等という考え方があったりするわけですが、これらについてはちょっとした疑問を持っています。

というのも、ピア・プレッシャー(仲間との相互監視で生じる同調圧力のこと)が寄付の満足度を下げる、という研究があるからです。


Reyniers, D., & Bhalla, R. (2013). Reluctant altruism and peer pressure in charitable giving. Judgment and Decision Making, 8(1), 7-15.


このような論文を読むたびに、ファンドレイザーの役割とは何だろう、と考えます。

「ピア・プレッシャーをかければ寄付が集まりやすい、だから寄付検討者にピア・プレッシャーを感じてもらえる環境をつくろう」

というファンドレイザーがいる団体に、寄付をしたいと思うか。

もし自分が寄付を考えている立場だったら、ちょっと厳しいなと思います。

もちろん、ファンドレイジングを「必要悪」とみなして、人の命を救うために何がなんでも期限までに必要な額を集めるんだ、そのためには法に反さない範囲でどんな方法でも使うんだ、というファンドレイザーもいるでしょう。

どちらかというと、ピア・プレッシャーがかかりがちな状況においては、寄付検討者には「寄付をするか決めるのは後日でも大丈夫ですよ」と声をかけてあげた方が、倫理的に妥当なのではないかと思います。

(そして、このような悩ましい戦術を使うかどうかを悩むような場面を予防するために、戦略をしっかり考えて布石を打っておくということが必要なのだろう、と思います。実務をしていると、戦略のミスは、戦術では基本的には取り返せないと日々感じます)


一方で、ピア・プレッシャーには良い面もあると考えています。

寄付によって得られる嬉しさを、寄付検討者が事前に正確に予測できるとは限りません。

ピア・プレッシャーによって背中を押されて試しに寄付してみたら、「寄付して良かった!」と思えたという場合も想定されると思います。
ただ、こうしたポジティブな状況をつくるためには、寄付を受ける側に相応の心構えと組織的な能力が必要とされるようにも思います。



寄付をするときは、自分の気持ちに耳を澄まして。

それが、きっと寄付者にとっても、長い目で見れば団体にとっても、良い結果を生み出すと信じています。


今日も走りました。健康第一。



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